会報 ほたるび(抜粋)
愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第14号    2014年3月発行
山や川に教えられての48年
  愛知ホタルの会顧問  古田忠久

  日課である「カワニナボカシ飼料の散布」を終えて帰宅、次は自宅周辺のキセルガイ飼料の散布等が最近の活動の主流である。今年 (2013)のゲンジボタル成虫は、昨年二度の大増水に見舞われ苦労したが、平年を上回る見事な飛翔を見せてくれた。この底力は、ボカ シ飼料の効果と感謝している。
  秒単位で進行する「河川の破壊・老化」は、個人の微力ではどうにもならない所に至っている。山林の管理不足は、濁流の主犯となり、 老齢化と人手不足、また、里山放棄は、流域河川の環境破壊を促進し、浅瀬の減少は、ゲンジボタルをはじめ多くの水生昆虫類、ヨシノ ボリなどの淡水魚たちの生息場所を減少させた。
  さて、「愛知ホタルの会」は、全身を重ねて19年の時間を積み上げ、前記した多くの困難を払い除けてきました。会員諸氏の協力や多く の研究が、愛知ホタルの会を守ってきたと言えるでしょう。ここに感謝とお礼を申し上げて大きな節目を付けたいと思います。
  最後になりましたが、賛助会員としてお世話になりました「料理旅館・丸嶋」さんが、2013年4月をもって閉館となりました。会報「ほたる び」の援助、カワニナ飼料用原材料提供、ホタル観察会の開催等、多くの足跡を残されました。この紙面をかりて、厚く御礼を申し上げた いと思います。

愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第12号    2009年6月発行
ゲンジボタルの人工飼育 「継続は力なり」
  愛知ホタルの会  田原市 伊藤三也
  渥美半島の真ん中、私の住む田原市では、行政と市民が一丸となって、環境保護に大きく力をいれ、昨年六月一日発行の公報「たは ら」で、市内を流れる川の水質と水生生物のゲンジボタルを取り上げ、環境月間の啓発活動の一環として発表されました。
  私が、ゲンジボタルの人工飼育に携わるようになったのは、平成元年三月三十一日、教員生活を退職してからでありますので、もう二 十年も過ぎました。
  河川の浄化活動から始まった田原市のゲンジボタルの人工飼育は、市の職員も私も、全くの素人でしたので、当会の初代会長の古田 忠久先生、現会長の三矢和夫先生には大変お世話になり、温かいご指導を賜りました。
  試行錯誤の人工飼育も、平成三年の初夏からは、人工採卵で産ませた卵を人工的にふ化させ、そのふ化したばかりの幼虫を、人工的 に三月の終齢まで陸上で飼うのではなく、七月初旬にふ化したばかりの体長二〜三ミリの幼虫(人の毛髪を切ったような大きさ)を、一匹 一匹肉眼で数え、それを親ホタルを捕った川へ戻し、自然界と同じような水中生活をさせるのであります。
  餌となるカワニナもその場所でたくさん稚貝を産み、ホタルの餌となるような工夫もします。カワニナには春先の三〜五月に十分栄養に なる餌を与え、養殖を行います。
  この方法は、平成三年から現在まで続けて行っていますが、年々、作業も定着し、行政による草刈り、清掃、ボランティアによる草刈り、 ゴミ拾い等、人工飼育を行うのに必要な条件にも恵まれ、このように長い間続けてこられたと思います。
  長い人工飼育の活動の中で、ふ化直後の幼虫放流と翌年の羽化成虫数にどのような結果がでるかを、平成十九年の羽化期に親ホタ ルを飼育する場所で調べてみました。その結果は、前年の七月初旬にふ化直後の幼虫を5000匹放流したものが、翌十九年の五月下旬 に成虫655匹(5月20日〜6月1日)捕獲できたので、羽化率は13.1%となりました。
  他に放流する場所は九ヶ所ありますが、その場所は市民の鑑賞地域となっているので、成虫の捕獲はできませんが、飛翔する成虫を 数えて、割り出した数字は、3〜5%となっています。
  市民が家族連れで鑑賞しながら歩く距離は川沿いの二キロメートルで、そこにビオトープが三ヶ所あります。一晩に数えられる成虫は、 1500〜2000匹です。
  田原市のゲンジボタルの人工飼育は、観光目的ではなく、環境保護を目的としているので、今後も河川の環境保護と生物の保護を第 一として行くつもりです。

愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第11号    2007年6月発行
ホタル生息地の環境保全と放流
  愛知ホタルの会顧問  古田忠久

  動物や植物全ての生きもの達は、その生物固有の生活環境の中で生命を維持している。現在地球上には130万種を超える生きもの 達がそれぞれの生活をしている。生活環境は多くの補助要素の組み合わせでできており、どれがかけても生活ができなくなり、死滅や移 動が必要になる。短時間に大きな変化が起こると「生活場所は墓場に」変化する。
 わがままな行動や豊かな生活を求めてきた人間の活動は、多くの生物の生活範囲を狭めたり生活場所を墓場に変えたりしてきたが、 これを理解している方は少ないようである。小さな命が寄り集まる「墓場の上で」生活しているのが現在の人間の姿である。
さて、3月から4月になると全国各地で「ゲンジボタルの幼虫が河川に放流される。」昭和45年ごろから幼虫の飼育や放流が行われてきた が、放流場所の環境や放流する時期(幼虫の令)について、木目の細かい対応が後回しされてきたのではと反省している。
  数の減少や復元に力が注がれ、手が回らなかったと考えられるが、命を扱う活動には、弁解や近道はゆるされない、と常々考えて行 動を継続してきた。手塩にかけた幼虫全てを成虫にする責任がある「管理不足で死んだ」のではなく、「管理不足で殺した」のである。
放流には多くの責任が伴う。川に流す。放任する。では無責任すぎる。生命維持の約束が見えてこない。事前の準備と事後管理をあげ てみたので参考にして戴きたい。
(合格が半分以下の放流場所は、他の場所に変更して戴きたい。)
1.餌が豊富にある。(カワニナでは、大型、中型、小型、稚貝が観察できる)
2.水質が良好である。
3.水量が豊富で安定している流れである。
4.川底に川砂、砂利が豊富に散在している。川岸に水深の浅い場所がある。
5.川岸の斜面が清潔である。肥沃な土でない。
6.幼虫が利用しやすい斜面が多くある。無菌状態の細かい砂が豊富である。
7.成虫が休息できる樹木(葉が多い)が多くある。
8.光(自動車・街路灯)や外敵(くも類)が少なく、飛翔空間を確保(枝打ち・
    草刈り)。
9.暗がり、無風、多湿の環境が出来やすい場所。
10.長い時間に耐える安定した環境(川岸環境と川底環境)である。
11.危険な場所(脱落)が少しも無い。
12.河川調査のカルテ作成。「河川ドック」の実施と分析。
13.若い方の協力が得られる環境作りと育成の場所作り。
* 6の斜面用土は、乾燥した赤土7・川砂3の割合が最適。斜面に散布する。


−ヒメボタルの光信号を調べる−
                    高津英夫(東海市)

1.はじめに

  ホタルが自ら作った光(発光)を求愛のために使っていることを疑う人は少ないと思います。しかし、日本のホタルについていえば、光 が何のために、どのように使われているかについてはほとんどわかっていません。たとえば、ヒメボタル Luciola parvula (ルキオラ・パー ブラ)のオスは何のために光って飛び回るのでしょうか?ヒメボタルのオスは止まっているメスの光と止まっているオスの光をどうやって区 別するのでしょうか?ホタルが光を使って会話しているとしたら(ホタルの光が信号だとしたら)、どんな話を、どのように伝えているのでし ょうか?それがわかれば、ホタルと話ができる(交信できる)かもしれません。たとえば交差点の信号機の光は信号です。警察は信号機 を使ってわたしたちに語りかけています。わたしたちも光の信号機を使ってホタルに話しかけることができるはずです。まず先人によるホ タルの光信号の研究について、次に私のヒメボタルの光信号の研究について書きます。
2.発光信号システムの発見
   まず、20世紀半ばまでの発光信号の研究について述べてみます。
  1885年−フランスのデュボアDuboisは、ヒカリコメッキ Pyrophorus noctilucus の光が有機基質ルシフェリンと酵素ルシフェラーゼの 化学反応によって作られることを発見。
1911年−アメリカのマックダーモットMcDermottは、ホタルの発光が結婚を目的に使われていることを確認。
1931年−アメリカのハーベイHarveyは、発光を神経がコントロールしていることを確認。
1937年−アメリカのバックBuckは、ホタルの発光信号システムを解明。
1947年−アメリカのマックルロイMcElroyは、発光の化学反応にATP(アデノシン3燐酸)が関与していることを発見。
  さて、北アメリカにはフォチナス・フィラリス Photinus pyralis というホタルがいます。このホタルはアメリカではホタルの代名詞になる ほどどこにでも見られるホタルだそうです。大きさはゲンジボタルとヘイケボタルの中間くらいです。オスは日が暮れると草の上を光りなが ら飛んでメスを探し、メスは止まってオスの光を見つけるとそれに応えて少しの時間(3−4秒)を置いて光ります。オスは沈み込むように 飛びますが、沈み込んだところから上昇するときに1秒ほど光ります。メスの光を見つけたオスはメスの光の方向に向きを変えて飛んで 近づきます。オスが光ると少し遅れてメスが光る、この繰り返しをしてオスはメスにたどり着き、交尾します。この観察はアマチュア昆虫研 究家McDemott(1911)によってなされたものです。彼は、野外観察によってホタルは光を結婚のために使っていることを確認しました。こ のことはすでに1861年にオーステン・ザッケンOsten-Sackenというロシア人によって報告されていたのですが、McDemottは、これだけで はなくオスとメスの発光のタイミングを正しく観察しました。すなわち、オスが光ってからすぐメスが光るのではなく少し時間を置いて光るこ とを発見しました。さらに、彼は、オスの発光に対しメスと同じタイミングで懐中電灯を点灯してオスを誘引することに成功しました。彼以 後のホタル研究者の多くがこのような人工光を使った実験をしました。
アメリカ、ジョンホプキンス大学の行動生理学者マストMast(1912)も同じ頃にMcDermottと同じような観察をしています。さらに彼はオス がメスの光には反応するが他のオスの光にほとんど反応しないことから、メスの光とオスの光に違いがあり、その違いに基づいてオスは メスを見つけると考え、次の6つの違いを推定しました:(1)オスは通常飛んで光っているが、メスは止まって光る、(2)発光器の形がちが う、(3)メスがオスの発光に応えて発光するまでに一定の時間がかかる、(4)光の色が違う、(5)光の強さが違う、(6)発光時間、一つの 発光が始まってから消えるまでの時間が違う。しかし、Mastは、(3)に関する実験が不適切だったため結論が出せませんでした。
 ジョンホプキンス大学でMastに学んだBuck(1937)は、次のような実験によってPhotinus pyralisのオスはメスとオスの光を、オスが光っ てからメスが光り返すまでの時間、これを応答遅れ時間とよびますが、これによって区別していることを証明しました。まず、応答遅れ時 間を正確に測りました。このときの遅れ時間は気温によって変わります。このことは大変重要です。同じ気温ではメスの応答遅れ時間は ほぼ一定の値を示しました。メスの代わりに懐中電灯を使ってメスと同じ応答遅れ時間で点灯するとオスが簡単に誘引されました。ま た、メスと異なる応答遅れ時間で点灯するとオスは誘引されませんでした。さらにメスと同じ応答遅れ時間でオスを無理に発光させてもオ スは誘引されました。Buckは、結婚を目的とするオスとメスのこのような光のやりとりのしくみを、光の信号システムと呼びました。そして、 メスの応答遅れ時間が一定の気温ではぼ一定になる。こういう信号システムを使うホタルは後に対話ボタルと呼ばれるようになりました。
 次に20世紀後半の発光信号の研究について述べてみます。
1957年− McElroyらは、ホタル・ルシフェリンの化学式を解明。
1963年− McElroy の仲間のホワイトWhiteらは、ホタル・ルシフェリンを合成。
1966年− アメリカのロイドLloydは、発光信号が種によって異なることを発見。
1969年− イタリアのパピPapiは、ヨーロッパで対話ボタルを発見。
1980年− 大場は、日本で対話ボタルを発見。
 さて、行動生態学者Lloyd(1966)は、北アメリカには先に述べた方法の発光信号システムを使うたくさんのPhotinus pyralis の仲間が いることを明らかにしました。そして、彼はホタルの光に乗せた情報のやり取りのしくみを発光コミュニケーション・システムと呼びました。 そして、応答遅れ時間が種によって異なり、その違いによって種の交雑が避けられていることを明らかにしました。
 さらにPapi(1969)はイタリアで同じ方法の発光信号システムを使うホタルを発見しました。ルキオラ・ルシタニカ Luciola lusitanica とい うヨーロッパに広く分布するホタルです。このホタルには、メスがオスに応答発光するとき、Photinus pyralis のように発光器の表面をオ スの方向に向けるという性質がありません。
Papiは、P. pyralisL. lusitanica の光のやり取りを「発光対話」と呼び、後にBuckは、この信号システムを使うホタルを「対話ボタル」と呼 びました。
 さらに大場(1980)は日本で対話ボタルを発見しました。それがヒメボタルです。ヒメボタルは幼虫が陸に住み、オスもメスもよく光ります が、メスは後翅が退化して飛べません。大場のヒメボタルの主な研究場所は、名古屋城の外堀でした。ヒメボタルは1975年に名古屋城 外堀、空堀ですが、ここで大発生して広く知られるようになりました。彼は、「雌を発見した雄は10−20cmの範囲に按近し、更に発光を繰 り返す。その後雄の発光に対して雌は一定時間後(約0.32秒後)に応答発光する。」という観察結果からヒメボタルの信号システムはア メリカで見つかった対話ボタルの信号システムと判断しました。対話ボタルはアメリカ、ヨーロッパ、そして日本で発見されました。
イタリアの対話ボタルと日本の対話ボタルは同じ仲間=Luciola属ですが、アメリカのホタルは異なる仲間=Photinus属です。ホタルは世 界に1900種以上知られていますが、Luciola属は旧世界にだけ分布し、290種の仲間を持ち、Photinus属は新世界だけに分布し、240種 の仲間を持っています。
 しかし、先に引用した大場の報告には4つの問題点があります。まず、アメリカやイタリアでの研究報告のように大場の研究には野外観 察の報告がありません。大場は書いておりませんが、彼の観察というのは、野外での自然な状態での観察ではなく、メスを透明なプラス チック容器に入れ、オスの飛ぶ野外に置いて観察した野外実験だったのです。2000年に行った私の野外観察では通常ヒメボタルのオ ス、メスは対話ボタルのような光のやりとりをしませんでした。オスがメスに接近するときに障害物があって、容易に近づけないときに限っ て、光のやり取りが認められただけです。次に、オスはメスの自発的な発光と応答発光をどうやって区別しているのか、これについて大 場は説明していません。欧米で発見された対話ボタルのメスは、光の刺激がないと光らないので、一定の遅れ時間で1回でもメスが発光 すれば、メスの応答とみなせます。しかし、ヒメボタルのメスは自発的に光るので、光のやりとりが繰り返されないと、オスは応答だとはわ かりません。3番目に、ヒメボタルのメスの応答がどんな意味をもっているのか、大場はそれが交尾を受け入れる合図だと述べています が、その理由を説明していません。私の観察によれば、メスはオスの交尾を拒むことはなく、光のやりとりとは無関係に常にうけいれま す。最後に、メスの応答発光の意味と関連しますが、大場の実験によると、メスはオスの発光に応答発光するだけではなく他のメスの発 光にも応答発光します。彼は、他のメスへの応答についてもその理由を説明していません。以上のようにヒメボタルが対話ボタルの信号 システムを使っているという大場の説には、少し無理があると思います。

3.ヒメボタルの信号システムを調べる

 ヒメボタルの発光信号システムが対話ボタルのものでないとすると、ヒメボタルはどんな発光信号システムを使っているのでしょうか?こ れが2004年から2005年にかけて私が行った研究のテーマです。その研究ための主な観察・実験の場所は、知多半島の北部、東浦町の 丘陵地の谷の部分です。かつては水田や畑でしたが現在はかなり荒れています。ここでは5月の中旬から6月上旬にかけて多くのヒメボ タルが見られます。
 まず、この研究以前の観察からわかったヒメボタルの求愛を述べます。
1.メスとオスは日没1時間後発光を始める。
 2.オスは発光しながら飛行する。
 3.オスはメスの近くに着地する。
 4.オスはメスに近づきその背に取り付く。
 5.メスとオスの発光が止まる。
 そして交尾が始まります。
今回の野外観察でわかったことは、オスはメスだけにしか近づかない(オスはメスだけに誘引される)こと、そして発光時間(図1)がオスよ りもメスのほうが長いらしいことでした。
 そこで、オスはオスとメスの光を発光時間に基づいて区別しているという仮説を立ててみました。まずこの仮説の前提になるオスとメス の発光時間の違いを調べてみることにしました。仮説が正しければ、メスの発光時間の範囲に含まれる発光時間の人工光でオスが誘引 できるはずです。そこで、次に、いろいろな発光時間の人工光でオスを誘引してみることにしました。発光時間の測定にはデジタルビデオ カメラを使いました。ビデオカメラは1秒間に60枚の静止画像を記録するので発光時間は1/60秒まで測定できます。
発光時間は気温に影響されるのでいろいろな気温で測定しました。図1はフイルムから推定される発光パターンです。人工光を発生させ るためには電子ボタルを作りました。それは発光部分に発光ダイオードを使い、その発光時間は電子回路の抵抗を変えることによって 変化させました。
   
  図2は止まっているオスとメスの発光時間を広い温度範囲で示しています。縦軸に発光時間が、横軸に気温がプロットされています。黒 丸がオスの、十字がメスのデータです。オスの発光時間はメスのよりも短く、それらの範囲はほとんど重なりがありません。したがって、オ スはメスとオスの光を、発光時間に基づいて区別することができるはずです。
図3はメスの発光時間とオスを誘引した電子ボタルの発光時間を比較したものです。十字がメスの、白丸が電子ボタルのデータです。オ スを誘引した電子ボタルの発光時間の範囲はメスの発光時間の範囲とよく一致していると言えます。 したがって、実験結果は仮説から 予想された結果(メスの発光時間の範囲に含まれる発光時間の人工光はオスを誘引できる)通りになりました。これで仮説はもっともらし いといえるでしょう。
 この研究結果を2006年の日本動物行動学会で発表しました。その後、ある大学の先生から、「オスはメスとオスの光を、発光時間に基 づいて区別している」と結論するにはまだ実験データが不足しているという指摘を受けました。私の立てた仮説はもっともらしいのですが、 その他の仮説が否定できません。たとえば、オスはメスとオスの光を発光間隔に基づいて区別しているかもしれません。飛んでいるオス は一定の気温ではかなり一定な間隔で光りますが、止まっているオスやメスは不規則に発光します。それでも止まっているオスとメスで は、オスの方が発光間隔は平均すると短いので、この仮説も無視できません。しかし、電子ボタルがオスを誘引したときと誘引しなかった ときの違いが発光時間だけであるというというデータがあれば、その他の仮説が全て否定できるはずです。さらに、本当にオスとメスの発 光時間の範囲は重ならないといっていいのか、本当にメスの発光時間の範囲とオスを誘引した電子ボタルの発光時間の範囲は一致す るといっていいのか、というやっかいな問題も解決できていません。さらに研究を続けてみたいと思っています。

4.おわりに

 私が1987年にヒメボタルに出会ってから20年が過ぎました。ホタルの季節になると地元知多半島に始まって、日本の各地のヒメボタル を追いかけてきました。そしていくつかの発見をすることができました。いずれも小さな発見ではありますがその中でも今回の発見はとて も気に入っています。それは電子ボタルを使ってホタルと話せるからです。紫式部は「声はせで、身をのみ焦がす蛍こそいふよりまさる思 ひなるらめ」と詠っておりますが、決してホタルは身だけを焦がしているのではなく、光の言葉を使って思いを遂げています。とはいって も、私たちの見ているヒメボタルの光のほとんどはオスの光です。メスの光が愛の言葉であることは疑いないのですが、華やかに明滅す るオスの光は何を物語っているのかまだよくわかりません。ヒメボタルだけでなくゲンジボタルやヘイケボタルなど、いろんなホタルと話せ るようになったらとても楽しいと思います。

愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第10号    2006年5月発行


 会のさらなる進展に向けて
                     愛知ホタルの会  会長  三 矢 和 夫

  愛知ホタルの会も創立10年の節目を過ぎ、新たな段階に入りました。そのスタートに際し、会のさらなる進展  を願って、今後の活動 の方向をまとめてみました。皆様のご理解とご協力をよろしくお願いします。
1. 団体会員相互の連携を
   会の発足当初23団体であった団体会員は年毎に増え、現在では35団体になりました。団体会員の中には   毎年の幼虫の成育 状況や幼虫の上陸・成虫の発生状況等連絡のある保存会もありますが、また一方では、  活動の様子も知られていないところも多くあ ります。それぞれの保存会発展のためには、まず各保存会の様   子を知り、お互いに情報交換をして連携していくことが必要です。
   そこで、今年は本会に加盟されている全団体会員(全保存会)の様子を冊子にまとめて発行する予定です。  それによってお互い の交流を深め、ホタル飼育技術の向上に役立てたり、新会員の勧誘や会のPRにも役立 つようにしたいと思います。冊子の編集にあた って団体会員の資料提供にご協力をお願いいたします。

2. 飼育技術の向上と普及をめざして
  全国でホタルの保護が叫ばれ、ホタルの人工飼育がはじめられてから約50年が過ぎました。しかし 人工飼育では採卵数に比べ終 令幼虫の数や成虫の発生数には未だにかなりの差があるのが現状です。 愛知県は全国的にもホタル飼育に関しては先進県です。保 存会により飼育方法に違いがありますが、 お互いの情報をもとによりよい飼育方法をさぐり、飼育技術の向上に役立てたらと思いま す。
今年から役員スタッフも増員され若返りました。これを機会に愛知ホタルの会総会のもちかたも、いままでの有名な講師の講演と総会中 心の総会から、ホタルの保護に関して県内で活躍し成果をあげておられる個人や団体を講師として、その研究を発表していただく研究発 表を中心とした研究会に変え、全員のホタル飼育技術の向上をはかっています。また、ホタルの保護や研究会への参加を学校や周辺 地域に広く呼びかけ、子供たちが自然への関心とホタルに興味をもってもらえるように、飼育装置や標本等の資料を多く展示して、子供 達の理科離れを減らすような試みもしています。またその活動を通して、若い会員の勧誘にも役立てていきたいと思っています。

3. ホタルの分布調査の継続を
 昨年は愛知ホタルの会創立10周年目で、第38回全国ホタル研究大会が西尾市で開催されました。また、第38回全国ホタル研究大会 西尾大会実行委員会や県内市町村や会員の皆様方のご協力により、愛知県では初めてのホタルの生息地を示す分布図「愛知のホタ ルマップ 2005」を発行することが出来ました。今年からそのホタルマップがホタル鑑賞等に実際に役立つことになり、大いに期待したい と思います。
 その分布図を見ると、県内北部や東部の自然が豊かな地域での生息地点が予想に反して少ないことにお気づきと思いますが、これは 今までの情報不足等によるものではないかと思われます。そこでこれからも毎年分布調査を継続し、次の分布図作成のための基礎資料 にするとともに、県内の自然環境の変化をつかむ資料としたいと思っていますので、今後も分布調査にご協力をお願いします(ホタル分 布調査報告は事務局にお送りください)。


「蒔かぬ種は生えない」
                     愛知ホタルの会  顧問  古 田 忠 久

 小さな命を守る集いが誕生して、10数年が経過した。どなたもが、ホタルの発光や成虫の乱舞を夢見ての活動である。私たちの生活が 豊かになると同時に、彼らの住居である自然環境がおかしくなった。その為、昔のような数のホタルが生活できなくなったのである。すみ にくくしたのは、全てが人間の我儘の結果である。この借りは、きちんと返済する責任がある。万物の頂点に居る人間ならば、ごまかしの 無い償いをしなければならない。
 蒔かぬ種は生えないし、蒔いても生えない木もある。理想に燃えた元気な苗木も大木になる約束は無い。我が「愛知ホタルの会」も多く の活動を集積して、驚くような大木に成長した。「好きこそ、物の上手なれ」の面々の努力の賜である。活動の前進には3種類のコースが あるような気がしている。「斜面、階段、螺旋」である。理想は螺旋型の前進だ。過去を反省しながら高度を増す。斜面や階段にはこれら が無い。無軌道で、思い上がった行動を招き、失敗するようである。大木の枝も日光の当たる向きは太いが反対側は細い。360度の方 向から光を当てたい。舞台の床下で回すのは役員さんの仕事である。黒子に日光が当たると「白子」になり、大木の根を枯らすのであ る。生き物の生息環境を守ることは大変な仕事である。壊れる速度は恐ろしいほど速い。「幼虫飼育、放流、パトロール」式の保護活動 には限界がある。
 出来るだけ速い時期に、自然界の持つ偉大な力を再確認して、バランスの取れた対応を進めたいものである。ホタル馬鹿、ホタル気違 いの肩書きをけがさない様、老体にムチ打ちながら幼虫学校の子使いと運営を進め、愛知ホタルの会の肥やしになればと考えておりま す。


愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第9号    2005年6月発行

愛知ホタルの会創立十周年記念・全国ホタル研究大会西尾大会開催記念
「愛知のホタルマップ」完成
                     


愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第8号    2004年5月発行

「ゲンジボタルの里」を愛して十五年
                     平原ゲンジボタルの里保存会  会長  鳥 居 誉一
 
 私は、この平原という山間のきれいな空気の中で生まれ、育ちました。木は生え、花は咲き、虫が飛ぶ豊かな自然がありました。あまり 物事を深く考えたことも無く、毎日楽しいことばかりでした。
 それが、町内の役員になった翌日から、人生が一変したのです。村全体を巡回することで、先輩の皆さんとの交流も多くなりました。
 そんな出会いの中、市役所の方との話の中でホタルの話が出たのです。それから一年、あっという間に、ゲンジボタル保存会の設立に まで至ってしまいました。
 それからの活動の中で、多くの方に接し、学んだことはたくさんありますが、地球の汚染が進み、あらゆる生物が、何らかの変化をしつ つあるとも聞きました。
 地元の小・中学校で、そういう学習をかねて、幼虫の飼育をしていただいています。今年は一万匹もの幼虫を放流していただきました。 本当に感謝しています。
 私たちホタル保存会も、毎日を楽しみながら、ホタルの里の整備を通じて環境の保全、ホタルの里でのイベントの開催などを行い、たく さんの方々との出会いと交流を楽しみ、ボランティア活動をおこなっていきます。
 さて、今年は、この西尾の地で開催される「愛知ホタルの会総会」を成功させ、来年開催される「第三十八回全国ホタル研究大会西尾 大会」も愛知万博とともに、大きな成功を収めたいと思います。
 全国のホタルを愛する皆さんのご協力をお願いします。


愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第7号    2003年5月発行

ふる里の自然が語れる子を願って
                  西尾市立室場小学校科学部顧問
                    高橋 行雄  (平成14年度中日教育賞受賞)

 額田の夏山川で、ゲンジボタルの乱舞を見て今年で十八年目を迎える。
 今でもあの時の美しさは鮮明に覚えている。理科が大好きで理科教員になったが、正直なところ、ホタルと関わるまでは生き物にはま ったく関心がなかったと言っても過言ではない。
  学生時代は、化学実験が大好きで研究室に閉じこもり、朝から晩まで実験に浸った。そんな私がなぜ、十八年間もゲンジボタルと関わ ってこられたのか。やはりゲンジボタルが放つ幻想的な光に魅惑されたためだと思う。その幻想的な光を一人でも多く紹介したくて家族、 職場の同僚を幾度ともなく夏山川に連れて行った。
  気がつけば、勤務校にはゲンジボタルの人工飼育施設が、地域にはホタル保存会が設立されていた。授業では、ホタルを核にした生 物単元を構想し、平成三年から実践を始めていた。今思えば総合的な学習のはしりとも言える。
  生きた理科が面白くなってきたのは、おそらくこの頃からだと思われる。科学部の生徒を校区に連れだし、地域の環境調査を日の暮 れるまで行い、ヒメタイコウチ、ミカワギセル、カワバタモロコ、ウシモツゴなどの稀少動物とも巡り会うことができた。私は、三十代にして 始めて、裏山が持つ自然の面白さに出会うことができた。
  ところで、近年、子ども達の理科離れが叫ばれている。また、子ども達を取り囲む社会環境の変化で、より一層子ども達が地域の自然 と関わりを持つ機会が減っている。そして、最近は、各方面で、地球環境との関わりについて、騒がれ始めている。
  私はここ数年、自分の研究テーマを「ふる里が語れる子」と題して進めてきた。
  自らの地域の自然に正体し、追及していく子ども達の育成が、私に課せられた仕事だと確信する。そして、その良き友がゲンジボタル だと思う。

愛 知 ホ タ ル の 会 会 報 第6号    2002年5月発行

生命の保障を 約束した放流を
  愛知ホタルの会 会長  古 田 忠 久
                                                                                                                        
 人工飼育で育てられた幼虫が、自然河川に『戻される』営みを『幼虫の放流』と呼んでから四十年が経過した。全国各地で同様な活動 が行われているが、幼虫の齢はまちまちで、成熟幼虫、若齢幼虫、中熟幼虫などである。河川の健康度が優れていれば、若齢幼虫が理 想的であるが、若齢幼虫を受入れ可能な河川は少ない。
 河川の健康回復は、山林が健康を取り戻さない限り無理であり、こうした活動も推進する必要がある。幼虫放流の準備として忘れてな らないのは、放流河川の『健康度チェック』である。現在どれほどの生物を生かす力を持っているか、それにより負担にならない幼虫数を 決めてほしい。
 自然河川を信頼するのは良い事ではあるが、各地の現状を拝見すると『無謀に等しい』状態である。飼育容器の持つ何倍かの『虐待 要素』が散在していると見て間違いがない。
 ゲンジボタルは『夜行性の生物』である。人間の都合で、昼間の行事に参加させるのは共生の意に反する。川岸環境の中で、上陸用 地の荒廃が進展しており、死亡率を高めている。これは草が利用されなくなり、速度を早めた。成虫になってからの『休息、睡眠の場所』 は、川岸の樹木類である。ホタルの幼虫には『放流』という言葉は適当ではない。飼育幼虫を自然に返す時点で、前記したような責任を 持つ必要があるなら、『戻し』とか『組み入れ』が適当ではないかと考えている。
 ホタルが『ホタルらしい』飛翔をしてくれる河川や川岸環境は、人間には大変不都合な場所である。この場所が好きになれるかが今後 の課題である。

愛知ホタルの会会報 第5号      2001年6月発行
                          
三十四年目の試練
                                    愛知ホタルの会 会長 古田 忠久
  平成7年2月に誕生した「愛知ホタルの会」も七年目を迎える事ができました。これも役員各位、会員諸氏のご理解やご協力のお陰であ り厚くお礼申し上げます。
 小さな生命を守り育てる営みは、全身を目や耳にしないと対応の不可能な分野であります。微弱な「サインやつぶやき」を増幅し、理解 し行動する事だと思います。
 本会の今後の活動として、効率の良い幼虫飼育、放流河川の安全保障、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタルの棲息分布、その他 のホタル確認などが挙げられます。河川を始め里山、水田等の「老化」は早い速度で進んでいますが、県下の知恵を集結すれば問題は 解決すると確信しております。
 さて、昨年の守山大会で「全国ホタル研究会」の会長を仰せつかった訳ですが、力不足を補う特効薬は皆無であります。あるのは愛知 ホタルの会会員皆様のご理解、ご支援を頂く以外に方法はありません。よろしくお願い申し上げます。
 全国ホタル研究会の事業には「七つの事業」が掲げてありますが、中核は幼虫の飼育にあります。南喜市郎先生の幼虫飼育をスタート といたしますと、今年は五十年目になるが、解決されていない事項が多く、「生存の保障」は驚くほど低い。
 年一回の出会いだけに、制約部分が大きく、技術の習得に多くの時間が消費され、現在に至っている。打開策として「自然河川におけ る、幼虫の生態観察」を重視する事ではないかと思います。
 河川で得た要素を飼育容器に組み込む事で、大きな成果を手にする事ができないだろうか。愛知ホタルの会の課題にと思っています。

愛知ホタルの会会報 第4号      1999年5月発行
河川浄化に始まった田原町のゲンジボタル
  愛知ホタルの会 伊藤 三也
 いまから10年前、田原町では「環境を美しく」ということから、ゲンジボタルの人工飼育が始まりました。新しく稼働した庄司川沿いの滝 頭浄化センターから排水される水が、生物にどのような影響を与えるかを調べる為に、排水される水でカワニナの飼育実験を行い、カワ ニナの繁殖可能であることを見極め、次に清流昆虫のゲンジボタルが飼育できないかということになり、自然界に生息するホタルの幼虫 探しに初年度を費やし、排水口付近で3匹の幼虫を見つけ、人工飼育してみましたが、3月に入ったある日、飼育箱から這い出して干物 になってしまいました。
 平成2年の初夏、羽化期に排水口付近で親ボタルの捕獲ができたので、そこから人工採卵、飼育、放流と作業が始まりました。環境浄 化は子供の頃から身につけようと、町内の小学校、保育園で希望する施設には幼虫配布を行い、教材として学習の中に取り入れられる ことになりました(実績: 平成9年度 人工ふ化幼虫数35,000個体、放流幼虫数2,000個体、幼虫飼育実施小学校・保育園計8校)。
 環境課はもとより、町民の環境浄化に対する意識が高まり、田原パシフィックロータリー、田原ライオンズクラブ、衣笠校区青少年健全 育成会等、大きな協力をいただいております。

愛知ホタルの会会報 第3号      1998年5月発行
ホタルにやさしい照明にして

《愛知ホタルの会から要望書》

  名古屋と豊橋を結ぶ大規模バイパス 「名豊道路」 の一環として着々と工事が進められている「岡崎バイパス」が平成十年秋開通を 目指して姿をあらわしている。
 このバイパスが建設される西尾市小島町地内は、ヒメボタルの大生息地としてよく知られている。
 愛知ホタルの会として、道路の照明がヒメボタルに及ぼす影響を考え、建設場所にあたる西尾市長にホタルに優しい照明にして欲しい と要望書を提出した。
 西尾市としては、市長自ら、名四国道事務所を訪れ陳情した結果、平成10年3月「ホタルに優しい照明選定委員会」が設立された。
 委員長に、南山大学名誉教授の阿江茂氏が就任、愛知ホタルの会古田忠久会長が副会長に就任した。
 平成10年5月13日から、現地での調査が開始され、7月の第3回の委員会で照明施設等の選定が行われる。


要 望 書
 西尾市長 本田 忠彦 様

 平素は愛知ホタルの会はじめ、ホタル関係団体への温かいご配慮ありがとうございます。
 ホタルを代表選手にした自然保護活動が全国的に展開されており、愛知県下でも西尾市をはじめ27団体が集い愛知ホタルの会を結 成し、ホタルの住める自然を目指して活動を続けております。
 つきましては、現在工事が進んでいます「国道23号岡崎バイパス工事」及び将来計画されている、「道の駅」についてでありますが、こ のルートの周辺、西尾市小島町(八ッ面山東側 矢作古川河川敷及び堤防敷)は、ヒメボタルの大生息地であります。
 これらの工事が完成しますと当然夜間の照明がされます。
 ホタルと夜間の照明の関係でありますが、夜まで明るく照らされている場所では、ホタルは生息できません。したがって、八ッ面山東側 矢作古川河川敷及び堤防敷のホタルは、大被害を被ります。
 そこで、愛知ホタルの会として、要望いたしますことは、名古屋の首都高速道路で実施されました、ホタルにやさしい照明施設をこの工 事でも採用頂きたいとするものであります。
 今までの工事の関係でも、数多くのホタルが犠牲になっていますが、完成後の照明は、ホタルにやさしいものにしたいと考えますので、 どうか、寛大なる配慮をお願いたします。
  平成9年8月25日
  愛知ホタルの会会長
                              古田 忠久


ホタルにやさしい照明実験-要望書提出後の状況-
                                            愛知ホタルの会事務局

 第3号でお知らせしました「ホタルにやさしい照明にして」の要望に対する「ヒメボタル」照明実験が実施され、その報告書が「ホタルに優 しい照明施設検討業務」としてまとめられました。その概要をお知らせします。
 本業務では、学識経験者・地元関係者等からなる「ホタルに優しい照明選定委員会」を設置し、ヒメボタル生息地への影響の少ない道 路照明等について検討を行った。
 実験は5月13日から5月19日にかけて「照明灯具の種類」や「道路から外部への光の漏洩を防ぐカバー(ルーバー)」をつけた場合の状 態でホタルに対する照明の影響を調査した。実験の結果が7月の委員会に報告され、「ルーバー付ナトリウムランプ」が選定され、工事に 反映されています。
 (まとめ)
  陸生貝類調査及び仮設照明実験、江原大橋付近の生息状況調査の結果から、ヒメボタルの生息環境及び照明との関係について考 察した。これらの実験により調査地域に生息するヒメボタルについて以下のようなことが判明した。
@ 陸生貝類の調査結果から判断すると、陸生貝類を餌とするヒメボタル幼虫の生息環境として適しているのは樹林または竹林であり、 調査地域では、ヒメボタルに対する保全及び創出があげられる。
A江原大橋付近の調査により、ヒメボタルは照度0.28 Luxの環境であっても繁殖は可能であることが判明した。 これを踏まえると、植生 等生息環境に合っていれば照明を設置することにより、多少明るくなっても交尾が全く 不可能になるとは考えられない。現在ヒメボタル は、23号バイパスの側道の外側に生息しており、この側道における照度が0.28Lux 以下となるように照明を設置すれば、照明による影響 は小さく、竹林などで光を遮られなくてもその生息は可能であると考えられる。
 ただし、昔はもっと多くのヒメボタルが生息していたことも考えられるし、長期的にみた場合、その生息は困難となることも予想される。し たがって、単純に照度0.28 Luxまでの光なら当たっていても問題ないとまでは言い切れない。
B 照明を設置する場合、光源の種類としては、高圧ナトリウムランプの方が、けい光水銀ランプよりも適していると考えられる。ただし、 どちらの光源を選択してもヒメボタルは感知することが可能であるため注意を要する。
C ルーバーを付けた場合は、付けなかった場合に比べ明らかに影響は小さい。したがって照明を設置する際には、確実にルーバーを 取り付け、できるだけ道路以外に光が漏れないように配慮する必要がある。
(調査に基づく望ましい照明)
  光源の種類としては、ほとんど影響がみられなかった高圧ナトリウムランプの方が適していると考えられる。また、ルーバーの遮光効 果は確認されおり、その設置は有効であると考えられる。


愛知ホタルの会会報 第2号      1996年6月発行
ヒメボタルを守る高速道路
  名城「ヒメボタル」の父 竹内 重信
 1975年5月25日、名古屋城外堀を走る名鉄瀬戸線の大津町駅宿直の時、暗闇に突如ヒメボタル三万の光を発見、中日新聞で報道さ れるや毎夜ホタル狩りに市民が押し寄せ、翌年は百分の一の三百に激減した。
 これでは絶滅してしまうと毎夜観察者に捕らないでと頭を下げて歩きました。
 生息地で野犬に襲われ、ムカデ、ヘビに出会い、身の毛のよだつ思いをしながらも自然保護を訴え毎年少しずつ増えてきました。1985 年に活動十年の記録と生態を全国で初めて、ヒメボタルの本を自費出版、その後はホタル園の私案を名古屋市に提出し、何度も足を運 び1990年にホタル園が完成。
 1986年に高速道路公社の方が来宅され、生息地横に高速二号線の工事をするが、ヒメボタルに影響ないかと言われ、工事の騒音は 仕方ないが、ポールの照明をなんとか生息地に影響させないように依頼した。
 それから七年後、公社から迎えがきて本町橋で合流、四人の公社幹部から新たに開発された照明器貝の設計図を示された。この図 面を見た時目を疑った。こんな精密な器具を費用一億円と聞いて二度ビックリ。全国でも始めて自然保護に採用され、1995年9月19日都 心環状線として開通、その後、照明学会でも注目された。
 二つの大きな施設を残せたことは、行政の協力はもとより、今は無き羽根田博士の励ましのお手紙と大場博士のご指導のお陰です。
 その上、マスコミの方々や当会の高津氏始め観察者のご支援の賜物と感謝いたしております。
 『自然を破壊するのも人間守るのも人間です』

愛知ホタルの会会報 第1号      1995年6月発行
愛知ホタルの会発足に思う
                  愛知ホタルの会会長 古田 忠久
 地球規模の環境問題とか、地球にやさしいとか、あまりにも上品すぎるとしか思えない言葉が、一人歩きして数年で化石になってしまい ます。
 何ができるのか、何をしなければならないのか、という判断のつかないまま、時間だけが消費され焦りだけが残るこのごろであります。
 環境保全にかかわる活動の多くは、誠に息のながい活動であり、それだけに、数十年先まで見極めた対応でないと問題が解決しない ように思われます。
 最近のことであるが、種の絶滅を目前にした対応では、まことにお粗末としか、いいようの無い記事を目にして、いいようのない淋しさを 心にした一人であります。
 さて、本県においては、長年の希望が適えられ、「愛知ホタルの会」 が、県下各地の団体、個人の方々のご協力のお陰で第一歩を踏 み出すことができました。
 活動や研究の中核が「ホタル」に関わる営みであり、種の保存は元より、ホタルをシンボルとした生活環境の保全と維持に及ぶ大きな 目標の会であると確信しております。
 長年、ホタルとのお付き合いがあると言うことで、会長の席を汚すことになりましたが、初心に戻り努力を重ねる所存であります。
 さしあたっての活動として、中身の濃い情報交換と活動の援助、また、環境に関わる研修、地元住民の方々への啓蒙など、地道な活動 から手懸けたいと思います。

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