会員のページ ホタルの広場
 会員の方からの投稿を掲載するページです。400字原稿用紙数枚程度の短文を募集します。近況、雑感、ホタルの会に対する意見、エ ッセイなどなんでも構いません。できるだけ多くの会員の文章を掲載する予定です。文章は、FAXやメールでも構いません。また、写真の 掲載もできます。普通の写真やネガでも結構です。事務局あるいはホームページ担当者までお送りください。なお、このページは、随時、 更新する予定です。
◎愛知ホタルの会 事務局(新)
  〒444−2324 愛知県豊田市栃本町落 57  倉田 富夫 
  TEL 0565−63−2456 FAX 0565−63−2811

◎ホームページ担当者
  〒465−0035 名古屋市名東区豊が丘103番地 ユニーブル藤ヶ丘403号
   高見明宏 TEL O52−773−8009 
  メールアドレス atpenil2@sb.starcat.ne.jp

平成19年 田原市におけるゲンジボタルの初見日
                                                 2007年5月22日
                                               愛知ホタルの会 田原市 伊藤三也
 田原市では5月8日よりゲンジボタルの羽化が始まりました。5月20日(日)に採卵用成虫の捕獲に入りましたが、まだオス
が多く、オス44:メス6の捕獲でした。21日の朝、1匹のメスから採卵ができましたので、引き続き5月末まで成虫捕獲をしま
す。観覧場とは別の所です。


平成19年 ヒメボタルの初見日
                                                   2007年5月4日
                                               愛知ホタルの会  大府市 深谷豊
 境川堤防でヒメボタルの飛翔が始まりました。今年の初見日は、5月3日です。


クメジマボタルを見てきました
                                            2003年5月4日
                                               愛知ホタルの会 高見明宏
 4月18〜19日に、第36回全国ホタル研究大会が沖縄県久米島町(平成14年4月に具志川村と仲里村が合併)おいて開催されました。愛 知県からは、約90名もの方々が参加しまして、久米島や全国ホタル研究会の関係者を驚かせていました。私もそのうちの一人でした。4 月18日には、昼間にホタル生息地や久米島ホタル館(平成12年5月開館)などの見学と夜間にクメジマボタル成虫の発光飛翔の観察会が 行われました。見学したクメジマボタルの生息地は、川幅1〜2メートル程度の急斜面の渓流で、愛知県のゲンジボタル生息地とはかなり ちがうように感じました。夜間の観察会に先立って、ハブに対する注意を受け、沖縄に来たと実感しました。夜間の観察会(気温23度)は、 天候に恵まれたこともあって、すばらしいものでした。ほとんど照明のない暗闇の空間に、急斜面の渓流に沿って、あたかも山水画のよう に縦長の立体感をもったホタルの飛翔は、感動的でした。空の星とホタルの光が同じ景色の中に調和し、遠くに波の打ち寄せる音が聞 こえてきました。ひさしぶりに自然の中でのホタルの観察ができたように感じました。こういう機会を与えてくれた、久米島の自然と久米島 のホタル関係者の方たちに感謝したいと思います。
 クメジマボタルは、地元の方たちにはホタルの一種としてよく知られていたそうですが、平成5年4月に白瀬川から採集された個体が新 種のホタルとして再確認され、平成6年4月に学術上正式に新種記載されました。同年12月には沖縄県の天然記念物に指定されました。 成虫や幼虫の形態は、ゲンジボタルとほとんど同じで、遺伝的にもほぼ同じと報告されています。
クメジマボタルの生息地

クメジマボタルの成虫と幼虫
(久米島ホタル館資料より複写)



  ゲンジボタルとクメジマボタルのわずかな相違点を以下の表にまとめました。
クメジマボタル
ゲンジボタル
成虫の大きさ(体長) めす: 約18mm   ,おす: 約16mm めす: 約15-20mm  ,おす:約10-18mm
成虫の前胸背面 オレンジから橙色で無紋 赤〜朱色で黒い十字型の紋がある
(東日本では無紋の産地もある)
成虫の腹部 めす: 発光器の下の節(第6腹節)が黒い めす: 発光器の下の節が赤い
成虫の発生時期 4月中旬から5月上旬(上陸3月初め) 愛知県:5月末から6月末 (上陸3月末から5月初め)
成虫の発光時間帯 めす: 午後7時30分から
 産卵行動: 午前5時から日の出直前
  (集団産卵)
おす: 午後7時30分から
めす: 午後8時頃から
 産卵行動: 午前0時から日の出直前
おす: 午後8時頃から
成虫の発光習性 2.5〜4秒間隔で発光
(ヘイケボタルのように変化する)
 2秒間隔で発光(西日本型)
 4秒間隔で発光(東日本型)
産卵場所 樹木に覆われてトンネル上になった河川の岩
にはえたのこけ
川岸の岩や木の幹などにはえたこけ
卵の大きさと色 約0.5mm 淡黄色 約0.5mm 淡黄色
幼虫の色 地色がこい灰色 地色が黒色
幼虫の習性 10から2月まで川底の砂やれきの間にもぐって
休眠する
休眠しない

 クメジマボタルは、すでに開発された平地を除く久米島全域に分布情報(41河川中26河川)がありますが、ホタル館の館長さんの話によ ると、現在では発生数の多い河川は限られているそうです。水源となる森は、島北部(宇江城岳309m)と南部の2箇所にあり、クメジマボタ ルは、北部の河川に多く生息しているようです。今年から、ハブの襲撃に気をつけながら、名前のついていないような河川を含む41本の 河川全部(大部分の河川が流程1Km未満)を再調査するそうです。また、えさとなるカワニナ(沖縄県には、カワニナ科とトウガタカワニナ 科が生息)の分布や生息量もよくわかっていないので、調べる予定だそうです。ホタルを保護するためには、現状の環境や生物相をよく 調べておくことが大切で、その点をよく理解されているので、少し安心しました。
 一方で、久米島の約1万人の住民の生活を支えるために必要な水資源の確保のために、北部の海抜30〜40m付近に、特殊なダム形 態である地表湛水型地下ダムの建設が進んでおり、そこにあるクメジマボタルの生息地の一部が、消滅する可能性が高いそうです。ホ タル水路などの実験施設を併設して保全につとめるそうですが、どうなりますやら・・・。
 ところで、どうして、沖縄本島の東約90Kmに位置する久米島だけに、水生のホタルが生息しているのでしょうか?(ここから先は、帰りの 飛行機のなかで考えた空想です。)陸生のホタル類は、沖縄本島や他の離島にも共通種が生息しており、他の生き物も同様です。これは もともと陸続きであった時期があり、後に分断されたことで説明できます。ところが、沖縄本島に水生のホタルが生息していたという情報 が、全くありません。いまのところ生息していなかったと見るのが妥当でしょう。類似の種が台湾に生息しているそうですが、どうやって分 布を広げたのでしょうか。一方、ホタルのえさになるカワニナは、沖縄の各島々に分布しています。奄美大島の全域にも沖縄と同じタイプ のカワニナが分布していますが、水生のホタルは生息していません。これは何を意味するのでしょうか。いくつかの事が推測されます。ホ タルとカワニナでは、生息できる環境条件がずれていること、分布を拡大する戦略や時期が違うことなどです。ホタル類は、多くの種の分 布から祖先は南方系と考えられています。クメジマボタルは、外部形態、発光習性や遺伝的情報からゲンジボタルやヘイケボタルの祖先 型ではないかと推測されていますが、ホタル類が南方から分布を拡大してきたとする方向性にのっているだけで、まだまだ情報が不足し ていて、明確な根拠はありません。一方、カワニナ類は、化石情報や分布域から東アジア起源で日本に分布を拡大してきた生き物と考え られています。つまり、現在あるようなゲンジボタルとカワニナ間の、食う食われるという密接な関係は、日本本土でこれらの生き物が出 会ったことによって成立したとも推測できるわけです。両者の関係は、原則として、沖縄地方では成立しなかったのですが、すでにカワニ ナが生息していた久米島に偶然、台湾あるいは中国大陸から水生のホタル(祖先型)がたどり着いた。ひょっとしたら人や物の移動ととも に運ばれてきたのかもしれません。もともと久米島では、稲作が盛んに行われており(サトウキビへの転作は、1960年代前半になってか ら)、米が収穫できたことが、島の名の由来でもあり、米だけを原料とした焼酎である泡盛ができたとも考えられています。ですから、北部 や南部の山上に溜池がたくさんつくられていることからもわかるように、古くから農業用水の確保はできていたようで、カワニナや水生の ホタルがすめるような環境条件が整っていたのかもしれません。こういう背景があったこともあり、河川水-農業用水−稲作-カワニナ類- 水生のホタル類という、日本各地にみられる里山の関係が成り立ったのかもしれません。
 近年盛んになってきている、残存する原野を切り開いての土地改良事業やサトウキビ畑への転作、さらに、除草剤や殺虫剤などの農 薬類の大量散布によって、久米島の自然環境は、大きく変わろうとしています。クメジマボタルの保全が、これらの開発行為にブレーキを かけることになればと願っています。久米島の人たちの自然に対する意識の高さに期待したいものです。                                 
 
戻る
戻る