BATTLE ROYALE
〜 黒衣の太陽・外伝2 〜


Appendix

「なんでなんだよ、冬哉」
 18時の放送でオレの親友 五代冬哉の名前が呼ばれたのだ。
 冬哉の名前を聞いた時、オレは体中の力が抜けていくのを感じた。
 F−7にある商店街で横山純子(女子20番)に会った際、オレの仲間をA−5辺りにある教会で見たという情報を得たのだ。
───ひょっとしたら、冬哉が待ってくれているのかも・・・
 身を隠しながらも急いで山道を登り、目的地に到着しかけた矢先の事だったのだ。
「あの時のジェンヌ達も・・・こんな感じだったのかな・・・・・・」
 オレは樫の木にもたれかかって、独り言を呟いていた。
 トップを目指すジェンヌと、生き残りをかけて殺しあうオレ達。
 あの時は考えられなかった事だけど、同じような状況に置かれてみると、少しは飛鳥橙羽の気持ちがわかるような気がした。
 重い足を引きずるようにして山道を登ると、急に視界が開けた。
 地図を確認すると、どうやらC−5にあるキャンプ場に着いたようだ。
 周りを警戒しながら通り過ぎようとしたオレの視界の端っこに黒いモノが映った。
 地面に大の字になって転がったそれは、石田正晴(男子02番)だった。
 石田は撃たれて死んだようだが、既に血は乾いていた。
───そういえば、最初の放送で名前が呼ばれていたよな
 ぼんやりと眺めながら、思い出していた。
 マネキンのように転がっている石田の身体に開いたいくつもの穴には様々な虫が潜り込んでいる。
 鳥や小動物がついばんだような痕も見られた。
 急に込み上げてきた吐き気を、オレは堪える事が出来なかった。
 視線を石田の体から引き剥がし、這いずるようにしてその場を離れたが、震えが止まらなかった。
「も、もう嫌だ。何でこんなヒドイ・・・」
 泣き言が口をついて出たその時、冬哉の言葉が頭に浮かんだ。
『下手の考え休むに似たりっていう言葉、知ってるか英明? 頭の回らない奴は、身体を使う事でそれを補うしかないんだぞ・・・・・・』
 オレはふと我に帰った。
───こんな所でへこんでいる場合じゃないんだ。
───教会で待っている仲間がきっといる。
───そして、もしも・・・
 いくつもの想いがオレの体を衝き動かし、なんとか立ち上がって歩き出す事が出来た。
───もしも、教会にいたのが冬哉だったら・・・
 オレは最後に浮かんだ事を打ち消そうとするように頭を振った。
「教会にいるのは、真吾か俊介さ。もし、冬哉なら・・・」
 オレは、ごくりと唾を飲み込んだ。
 冬哉の姿が先ほどの無残な石田と重なったのだ。
 ぽろぽろとこぼれてくる涙を右手で拭ったオレは
「冬哉なら・・・親友のオレが・・・・・・キチンと弔ってやらないとな」
 涙声を振り絞り、精一杯強がってみた。
 目的地は、すぐそこだった。


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