ホタル類幼虫のたべる巻貝
1. カワニナ類とその他の淡水産巻貝類
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サカマキガイ
(名古屋産)
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モノアラガイ (愛知県木曽川産)
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オオタニシ (愛知県渥美町産)
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マルタニシ (岐阜県産)
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ヘイケボタル幼虫の餌となっているモノアラガイやサカマキガイ(有肺類)のなかまは、同じ貝類でも、カワニナやタニシ
のなかまと分類学上のグループが違っていて、その生態にも大きな差があります。どちらの貝類も、同じように水の中
で餌を探していますが、カワニナやタニシのなかまは、淡水産の巻貝で水中の酸素を使って呼吸していますので、水中
から出られません。しかし、サカマキガイなどのなかまは、空気中の酸素を使って呼吸していますので、少しの湿り気が
あれば、陸上でも生活できます。一方で、水中に入るためには体のなかに空気をためておく必要があります。また、呼
吸のたびに水面まで浮上しなくてはなりません。繁殖のしかたも違っていて、カワニナなどのなかまは、おすとめすが
別々(雌雄異体)で、めすの体の中で子供の貝を育てますが、サカマキガイなどのなかまは、カタツムリと同様に、自分
の体の中におすとめすの器官をもっていて(雌雄同体)、他の個体と精子の交換をして受精した後、ゼラチン状の卵の
かたまりを岸辺や水草などにうみつけます。
カワニナのなかまは、いくつもの種類がいますが、愛知県内にいるのは、カワニナ、チリメンカワニナとクロダカワニ
ナ(愛知県下では限られたところにしかいない)の3種です。びわ湖には、もっとたくさんの種類がいますが、びわ湖にし
かいないカワニナのなかまが多いので、とってきて放流してはいけません。注意しましょう。
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カワニナ (上:愛知県渥美町産,
下:愛知県豊川産)
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チリメンカワニナ (上:愛知県犬山産,
下:愛知県木曽川産)
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クロダカワニナ (上:愛知県豊川産,
下:愛知県矢作川産)
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カワニナ類などの貝類ををたくさん繁殖させないとたくさんのホタルを育てることはできません。
カワニナ類の飼育方法は、いくつも提案されていますが、野外水路飼育と室内飼育の2つに大別できるようです。な
お、飼育する場所の温度などの条件がそれぞれちがいますので、みなさん工夫しているようです。ここでは、飼いかた
の一例を紹介します。
(1) 野外水路飼育
飼育水温は、27〜28℃ぐらいが上限だと思います。18〜25℃ぐらいの水温がもっとも活発に動くようです。12℃以
下になると、活動しなくなるようです。昼間でも動き回っているカワニナがいますが、夕方をすぎるともっと活発に動きま
わるようです。冬の夜は、水温が下がるのであまり動かなくなりますが、日のよくあたる場所では、あたたかくなるので
昼間にも活動するようです。
広い場所と少し汚れたぐらいの流水があるなら、野外水路で飼育するほうがいいでしょう。ただし、とてもきれいな水
だと、カワニナのえさになる藻類がたくさん育たないのでよくないようです。石に付いている藻類や落ち葉がたくさんある
ような水路では、特にえさを与えなくてもいいようです。小さな水路のまわりに草が育ちすぎると、日当たりが悪くなっ
て、藻類が増えにくくなってしまうので注意しましょう。カワニナは、野菜類やイモ類もよく食べますが、それだけでは栄
養不足のようです。植物性の生ごみに、堆肥をつくるのに使う、いわゆる、ぼかし(EM菌)をかけて発酵させた後に、乾
燥させたものをえさとして与えて、うまくカワニナを育てている人たちもいます。また、カワニナが自分の貝殻をつくるの
に必要なカルシウム分が不足しないように、水路に石灰岩をいれているところが多いようです。水中のカルシウム分が
少なかったり、酸性のやや強い水だったりすると、貝殻がこわれやすくなったり、薄くなったりするからです。ちなみにカ
ワニナは、食べたえさなどから体の中に吸収したカルシウム分を、分泌して自分の貝殻をつくりますので、えさに含まれ
るカルシウム分も大切です。
(2) 室内飼育
室内飼育では、水槽の中の水をなんども繰り返して使うので、水をきれいにする仕組みがないといけません。また、
野外水路のようには藻類が手に入りにくいので、えさの工夫もいりそうです。貝殻の成長にはカルシウム分が必要で
す。これら3つの工夫を組み合わせたところ、うまく飼育できることがわかりましたので紹介します。
@ 市販の循環ろ過装置を使い、ろ過材に、活性炭とゼオライトを混ぜて使う。
A えさを野菜類から魚のえさに変える。
B 水槽の中にアサリやシジミの貝殻をいれる。
カワニナ類は、高濃度で有毒なアンモニア等を排出します。また、えさの食べ残しやふんなどからアンモニア等が出ま
す。水中のアンモニアは、バクテリア(硝化菌など)の作用で、毒性の弱い硝酸態窒素に変わりますので、毒性が少し弱
くなりますが,それがたくさんたまると飼育水のがどんどん酸性(pHの低下)になります。そうなると、カワニナの呼吸の
効率が悪くなります。また、せっかくつくった貝殻がもろくなってしまいます。外部ろ床式の循環ろ過方式(市販品)を用
い,ろ材を1〜2ヵ月毎に交換することで、水かえを年数回するだけですむようになります。水をきれいに保つには、水
槽の中に少しだけ水草を入れるのもいい方法です。
自然河川でカワニナ類が食べている付着藻類の成分組成を調べたところ,非常に高タンパク質でカロリーが高く、従
来飼育に用いられていた野菜類や穀物類の成分組成と違うことがわかりました。最も組成が似ていたのは魚類用の配
合飼料でした。また、カルシウム分をたくさん含んでいるので使ってみたところ,貝殻の成長がよく、仔貝もたくさん産む
ようになりました。飼育によく使われるカルキをぬいた水道水(脱塩素処理)には、カルシウム分が少なかったので、二
枚貝の貝殻を入れたところ、カルシウム濃度は増加しました。
2. 小型カタツムリ類 (陸産貝類)
オカチョウジガイやキセルガイのなかまは、おもに落ち葉などがつもった湿り気のある土のあるところにすんでいま
す。カタツムリのなかまは、樹木の枝や葉の上にもすんでいます。乾燥しているとじっとしていますが、雨上がりのように
じめじめしたときには、元気に活動するようです。
オカチョウジガイやキセルガイのなかまは、土の中の有機物や藻類などを食べますが、ある程度分解された生ごみな
ども食べるようです。野外では、自宅の庭に生ごみから堆肥をつくって、そこでこれらの貝類を育てているひともいま
す。また、堆肥とダンボール紙を組み合わせて、飼育しているひともいます。室内では、貝が小さいこともあって、フタつ
きのプラスチック製容器のなかに、庭の土や落ち葉を入れて飼うこともできるようです。容器を温度変化の少ない室内
に置いておけばいいでしょう。えさは、貝の種類によりますが、すぐ手に入るキュウリのような水分の多い野菜類やバナ
ナのような果物類を与えているひとが多いようです。