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市販薬と病院・診療所の薬

皆さん、「薬」と聞いた時、薬局を思い浮かべますか、それとも病院・診療所を思い浮かべますか?

 大雑把に言えば、持病をお持ちの人は多分病院・診療所を一番に思いだす可能性が高いと思いますが、普段あまり病気をしたことのない人が、何か急に調子が悪くなったときは薬局を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。
では、薬局に置いてあるいわゆる市販薬と病院・診療所で扱う薬は同じなのでしょうか?
今回は、市販薬(売薬)と病院・診療所で使われる薬の相違点をまとめてみたいと思います。

理解しやすくするために「風邪薬」を例にとって見ましょう。

 風邪薬を求めて薬局を訪れると、数え切れないくらいの種類の風邪薬が売られており、その中からお好みの薬を購入する事になります。この市販薬の説明書を読んでいただくとその成分の多さに驚かされます。
一方、風邪症状で病院・診療所を受診した場合、たいてい1種類の粉薬と1~2種類の錠剤・カプセル(場合によってはさらに抗生物質が加わる事もあります)が3~4日分処方される事になります。
市販薬でも病院・診療所の薬であっても、風邪症状のほとんどはウィルスによるもので、実際には直接ウィルスを殺す薬が存在しないことから、その治療内容は対症療法といって出てきた症状を軽くする事になります。

では、その違いはどこにあるのでしょう。

 たとえば、咳には効くけれど喉の痛みにはまったく効果がないような風邪薬があったとすれば皆さんは購入されますか?
多分、この薬はあまり売れないでしょうね。
このことからも分かるように、市販の風邪薬は「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」的に風邪の症状ならなんでもござれと多種多様な成分を含む宿命にあるのです。

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 これに対して、病院の風邪薬は解熱鎮痛剤を中心としたせいぜい2種類くらいの成分の薬をベースに症状に併せて他の薬剤を併用していく考え方で成り立っています。
ですので、病院でもらう風邪薬はその時の症状や体の状態によって全く違う内容になる事も多く、これがいわゆる「見立て」に相当します。
 さらに、市販の風邪薬はできるだけ広い範囲の人に使用してもらっても問題が発生しにくいようにそれぞれの成分が控えめな量で作られているのに対し、病院で使用する薬剤は、年齢・体格・他の内臓の状態は主治医のいわゆる「匙加減」にゆだねられています。
要するに、市販薬は少量・多種の薬剤の合わせ技に当たり、病院・診療所の薬は比較的強力な治療薬に症状に合わせた薬を追加する形になっています。

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風邪薬以外の場合でも事情は同じ。

 市販薬の場合には比較的多くの種類の薬剤を少量ずつ合わせたものが多く、一方病院・診療所で使用される薬剤はその成分は1~2種類に絞られていていくつかの薬剤をそのときの症状や身体状況にあわせて組み合わせるのが原則となっています。
これを、病気の重症度や時期とあわせて考えてみると、要は、発病初期のまだ軽い時期には、市販薬による治療もある程度の効果が見込まれますが、持病があって薬の使用量などに一定の制限がある方や、市販薬による治療が効果を発揮しないような場合には迷わず病院・診療所を受診するのが正しい使い分け方といえます。
ちなみに、病院・診療所に勤務している医師・看護師や薬剤師でも市販薬を使用する事はよくあり、その時の病状によって使い分けています。

最後に、もう一つ重要な事は薬の副作用。

 含まれる成分の種類が増えれば増えるほど相互作用といわれる薬同士の相性問題が出現しやすくなり、また体質的に合わない薬の含まれる可能性も高くなります。
市販薬を使用する場合には病初期の軽症の時期に限って短期間のみ、また常用薬のある方はできるだけ市販薬の使用は控える必要があると理解して下さい。



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