BATTLE
ROYALE
〜 黒衣の太陽 〜
プロローグ
[モーニングムーン(チャゲ&飛鳥)]
「ふあー。もうちょっとだったのに・・・」と大きなあくびの後で少年は伸びをしながらつぶやいた。夢の中であの娘に告白しようとしたところで目が覚めたのだ。
「今日こそ…あの娘に…」他人から見れば些細な行動であったが少年には自分の中の勇気というものをすべて振り絞らなければならない重大な事なのだ。
それにしても気持ちが良い快晴の天気だった。
「毎日がこんな気持ちの良い朝ならなぁ」と少年は思った。
まだ正月の休みボケが残っている中、先日までの課題試験で頭も体も疲れているのだろう。あの子がいなければ学校なんてサボってしまいそうだった。
だが少年は気持ちを切り替え、チラッと時計を見た。1995年1月13日の7:20を少し回ったところだった。
「げっ!13日の金曜日かよ…」と嫌そうに言うと着替え始めた。今日から2泊3日の奉仕実習なのだ。
もちろんそこには想いを寄せる同じクラスのあの娘も来る。
「今日こそ…あの娘に…」
少年が今度は自分の決心を口にし、朝日がまだまぶしい青空を見上げた。抜けるような青空と永遠に変わらない太陽の光、そしてその太陽に遠慮をするかのように白い月がそこにはあった…。
∀
大東亜共和国専守防衛陸軍関西支部の、ある一室でプログラム担当官は作戦の発動時間を迎えた。
時計のデジタル表示は23:59から0:00と変わった。
それを待ちかねたかのように
「それではただ今より戦闘実験第六十八番プログラム2002年度第32号を実施します」と言うと担当官は上官らしき男に共和国独特の敬礼を行った。
上官らしき男は「うむ」と言うと立ちあがり同様の敬礼をした。先に上官が手を下ろすと担当官はそれにならい、回れ右をするとドアの方へ向かって歩き始めた。
上官が「大丈夫か?」とその背中に向かって言うと担当官は一瞬立ち止まったが、振り返らずドアを開け その部屋を出ていった。
担当官が退室するとその上官は椅子に座りなおし、机の引出しから葉巻を取り出すとナイフで片側をカットして火をつけた。
「うまくやれよ…」もう誰もいない部屋で煙と一緒にその言葉をはき出した。
彼の背中には死神のカマのような不気味な月が光っていた…。