BATTLE ROYALE
最後の聖戦


エピローグ4〜役目は終わった〜

 大東亜共和国が崩壊して、もうすぐ1ヶ月。
「大東亜解放戦線」の面々は、それぞれの道を歩み始めていた。


 時田裕司は大東亜共和国崩壊後に建国された「日本国」の最初の選挙で当選し、国会議員となった。
 あくまでも民衆の立場からの物言いで、評判は高まる一方。今や人気の政治家になった。


 神野優はその後も警察官として活躍。キャリア組でなかったため、トップに立つことはなかったが、それでも女性初の警察署長となった。
 結婚は今後もする気はないらしい。


 世良涼平は、海外を飛び回っている。世界平和を夢見るようになった彼は、カメラマンとして世界中の紛争地域の状態をファインダー越しに見つめている。
 その写真は今や世界中で有名になっている。


 谷司郎は、東京の郊外に孤児院を作り、院長として働いている。
 その一生懸命な姿勢に惹かれてやってくる職員は多く、今では大分賑やかになってきたらしい。
 それでもまだ彼は、牧原玲のことは引きずっているようだ。


 瀬古貴史は普通の一般人になった。
 通っていた大学を卒業し、それなりに名前の知れた企業に入社。
 今では元テロリストとは回りの誰も信じていないそうだ。


「…報告は以上です、教祖様」
 幹部はそう言った。
「……」
 最近になって、呉道教の本部は東京へと移り、そこで白鳥浩介は教祖としての活動をしていた。
 最初は時田裕司が同じく議員になった白石京介と一緒に政治の世界へと誘ってきたが、浩介はこれを断っていた。もはや体制が変わった今、この国に浩介が手出しは出来そうもないと思っていたからだ。
―そう、もう俺の役割は終わったんだ…。
「板橋君」
 浩介は先程「大東亜解放戦線」の面々のその後の報告をした幹部(その幹部の名は板橋麻衣子と言い、
板橋浩美(女子2番)の妹だった)に話しかけた。
「はい、何でしょうか?」
 浩介は今現在最も信頼している幹部である麻衣子に言った。
「…私は今日限りで教祖を辞めようと思う。今後は君が3代目として活動していきたまえ」
 突然の発言に、麻衣子は狼狽した様子で言った。
「な…何を仰られるのですか! 教祖様! まだあなたは26歳! 引退は早すぎます!」
「これはもう決めたことだ。私の役割は、この国を変えるために、少しでも役立ち、新たな体制を築く礎の一つになること…その目標が達成された今、もう私の役目は終わっているのだよ…板橋君」
「しかし…」
 なおも何か言おうとする麻衣子を制し、浩介は立ち上がった。
「これから私はちょっと旅に出る。永遠の旅だ。もうここに帰ってくることもあるまい。決して私を探そうなど考えるな。これが私の望みだ」
「せめて…何処に行かれるかだけでも教えて下さい!」
 麻衣子は叫んでいた。既に部屋のドアに向かって歩き出していた浩介は、振り返ると、言った。
「まだ、決めていない。全ては風のように気紛れにやっていくさ…」
 そう言い残して、浩介は部屋を出て行った。そこには麻衣子だけが残された。

 その後板橋麻衣子は、呉道教3代目教祖として活動、呉道教はその規模を維持し続けた。その後、呉道教が新国家樹立に協力した事実は忘れ去られていったが、呉道教は存続し続けた。

 この日を境に、誰も白鳥浩介の消息を知るものはいなくなった。
 新国家樹立の立役者の一人、白鳥浩介。彼のその後は、「日本国」建国から20年以上経った今も、不明である。

 BATTLE ROYALE〜最後の聖戦〜 完 


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