BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
プロローグ
ある島に、一人の青年が立っていた。
もう誰も住んでいないその島には、少し前まで誰かが住んでいた形跡が残るのみで、彼以外は誰もいなかった。
そして、島中に残るおびただしい量の血痕。それはここが凄惨な、あの悲劇の舞台となったことを表していた。
青年は、歩いた。「あの時」と同じように。
だがもう9年前と違って、あの時のように「案内役」の彼女はいない。ただ自分の姿と、日光に照らされてできた自分の影法師のみがある。
暑かった。もう7月だから当たり前だ。
―俺は何もしちゃいない。あの頃から変わってもいない。
―あの時と同じだ。クールを気取って、そのくせ何にも出来ない…。
―俺は何も出来ないまま、ここまでのうのうと生きてきちまったよ…。
歩いていくと、その先にはまだ残っているはずだ。森に囲まれて立つ、あの時と同じ場所に立つ、俺たちの出発点。
相変わらず、そこにそれはあった。完全に廃墟と化したその建物に、青年は入っていった。
暗い廊下。森があの時より茂ってしまい、より日光が差さなくなってしまったのだろう。
そして青年はドアを開ける。あの場所に戻ってきた。
「―ただいま、皆」
青年は呟いた。そう、あの場所だ。自分たちが最後まで愛した校舎だ。
青年には見える気がした。今もここで皆、あの頃のまま、ここで生きている姿が。自分だけを置き去りにして。
―待ってくれよ。
―俺も皆と一緒にいたいよ。
―俺を置いていかないでくれよ! 皆!
そう呼びかけることもかなわなかった。彼らは青年の視界から、シャボン玉がはじける様に。
青年は、今の映像は夢ではないと思っていた。もしここに他の誰かがいて、その誰かが見ていなかったとしても、青年は言ったはずだ。
「皆ここにいる」と…。