BATTLE ROYALE
仮面演舞


プロローグ

 少女は、倒れていた。
 いや、それを少女と呼ぶことさえ、殆どの人は躊躇うだろう。

 何故なら、『それ』はもはやただの消し炭と成り果てていたからだ。

 『奴ら』にとってはほんの些細な行為、それがこの元少女を消し炭に変えてしまった。そう思うと、屈み込んでわなわなと身を震わせるしかなかった。

 もう、心の全てを支配されていた。怒りに。絶望に。悲しみに。そして…狂気に。

 もう何もかも許すことは出来ない。今すぐに消えてなくなりたかった。

 だがその前に…、その前にだ、『奴ら』に心の底からの恐怖を、絶望を、悲しみを…そして死を、与えてやりたい。

 それが叶うならば、人間でなくなっても良い。鬼となっても、悪魔となっても構いはしない。

 行き場のない魂が、それで地獄であろうと何処であろうと、何処かへと行き場を見つけるだろうから。

 そして彼女の復讐を…果たすのだ。彼女に変わって。

 どんな手段を以ってしても、この復讐は遂げられねばならないのだ。『奴ら』を葬り去らねばならないのだ。

 彼女の生きていた証と共に、その恨みを晴らしてくれようぞ…。

 翌日、あの男と作戦を練った。そして作戦を実行に移す日も決まった。

……実行は2ヵ月後。

……それまでにやっておくべきことは、一つ。『奴ら』を絶望のどん底まで追いやるための方策。同時に当日、『奴』に真意を聞いておかねばならないだろう。『奴』の答え次第で、復讐の道は変化する。

―ククク…ハハハハハッ!

―遂に『奴ら』を葬り去れるのだ。遂に…。

 最後に、彼女の遺影に手を合わせ、呪文のように呟く。


―この恨み…晴らさでおくべきか…この恨み晴らさでおくべきか! この恨み、この恨み、この恨み、晴らさで、晴らさで、晴らさで、おくべきか、おくべきか、おくべきか!

 凄絶なる呪詛のような、念仏のような、禍々しい呪文だった。


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