BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第20話
「これからどうしましょうか、曽原さん…」
今井友也(男子2番)が、曽原秀也(男子10番)に聞いてきた。
「できれば、脱出したいと思ってる。だが…」
「だが…何ですか?」
友也がさらに聞いてきたが、秀也は答えられなかった。
秀也が言いたかったのは、「友也以外に仲間が必要だ」ということだ。
だが、秀也には今ここにはいないが、円谷和彦(男子15番)や彦野勝(男子19番)という仲間もいる。
しかし、和彦はただ自分の利益を楽に手に入れるために秀也の仲間になったようなもので、現にもう教室内でやる気になったような発言をしていた。
勝は一応ついてきたが、やはりこいつも自分のことしか考えていないから、いつかは裏切る可能性がある。
その点、秀也は今ここにいる友也は何があっても裏切らないと信じていた。
友也は喧嘩も弱い、ただのパシリとして和彦や勝に扱われてきた。
だがその忠誠心は一番ある。
だから秀也は友也と脱出したいと思っていた。
「だが…何なんですか? 何か心配事でもあるんですか? 俺、曽原さんのためなら何だってやりますよ! 脱出なんてすごいじゃないですか! 俺手伝いますよ!」
友也がそう言ったときだった。
「脱出? そんなの無理に決まってんだろ」
秀也と友也ははっと振り返った。
そこには勝がレミントンダブルバレルデリンジャーを持って立っていた。
「裏切る気か。…お前ならいつかそうすると思っていたがな」
「俺は死にたくないんだ。そのためにお前らを殺して優勝する!」
それを聞いて秀也は嘲笑した。
「お前みたいなクズに優勝なんて無理だな」
「うるせえ! 今すぐ殺してやる!」
そう言って勝がデリンジャーの引き金を引いた。
パン、パン。
2度、銃声がした。
だが、標的だったはずの秀也には傷一つなかった。
そして目の前には、腹を押さえてうずくまっている友也がいた。
「と…友也!」
秀也は友也を抱き起こした。
「曽原…さん。無事だった…んですね。…良かっ…た…」
「何故…何故俺をかばったりしたんだ!」
秀也の問いに、友也は答えた。
「俺…曽原さんに…憧れてた。役に立ちたかった。それに…曽原さんに…死んでほしくなかった。ただ…それだけで…」
そんな友也の言葉に、秀也は耐え切れず、言った。
「もう…もうしゃべるな! もう分かったから…死ぬな、友也!」
だが、友也はさらに言った。もう、あと少ししか生きられないのが分かっているかのように。
「曽原さん…、俺、役に立てました?」
「ああ、お前は俺をかばってくれた、それだけで十分役に立った! だからもう…」
「曽原…さん。脱出…したいんでしたよね? …頑張って下さいね? 俺…もう見ていることしか出来ないけど…応援して…」
そして友也は、がくっと首をたれると、動かなくなった。
「友也――――――――っ!」
その光景を見ていた勝が言った。
「茶番は終わりだ、お前にもさっさと死んでもらうぜ」
その言葉を聞いた直後、秀也はバタフライナイフを持って、立ち上がった。
「許さねえ…死ぬのはテメエだ!」
そう叫んで秀也は勝に向かっていった。
「うるせえ! ほざけ!」
勝が再び、デリンジャーの引き金を引いた。
だが、弾は出なかった。
「な、何で…」
実は、勝の持っているデリンジャーは1度に2発しか装填できなかったのだ。
元の持ち主の和歌野将(男子22番)は説明書を見てその事に気づいたが、そんな物を読んでいるはずのない勝にはそれが分かっていなかったのだ。
「形勢逆転だな、彦野!」
そう言って、秀也は勝の左胸にバタフライナイフを突き立てた。
「が…っ」
秀也がナイフから手を離すと、勝は仰向けに倒れ、絶命した。
秀也は勝の手からデリンジャーを取ると、診療所から出た。
少し歩いて、H−4に出ると、和歌野将の死体と、デイバッグを発見した。
将の死体は、顔面がグシャグシャになっていた。
秀也が将のデイバッグの中を漁ると、デリンジャーの予備の弾が出てきた。
「そうだったのか…!」
勝はおそらく、将から強引にこのデリンジャーを奪ったのだろう。
そして秀也は、空を見上げた。
空はもうすぐ夜明けがこようとしていた。
―友也。お前に救ってもらったこの命、無駄にはしない。お前のためにも、俺は何としても脱出してみせる!
そして秀也は、移動を始めた。
男子2番 今井友也
男子19番 彦野勝 退場
<残り37人>