BATTLE
ROYALE
〜 殺戮遊戯 〜
第32話
―康利が、俊和を? そんな、そんなバカな!
須藤広樹(男子9番)は、ひたすら走っていた。
佐藤康利(男子8番)の手から逃れるために、広樹はもうG−9の海岸近くまで走ってきていた。
―何で康利が? 何で? 何で何で何で!
広樹はそこで、康利に撃たれた国見俊和(男子6番)のことを思い出した。
俊和は争い事が嫌いで、このクラスの奴らを誰よりも信じていた。
だが、その信頼をこともあろうに親友の広樹が裏切ってしまった。
広樹も、本当は逃げ出したくなどなかった。
しかし、俊和が康利に撃たれた瞬間、広樹は深層心理の段階で、自分のトラウマを引きずり出していた。
そのトラウマが出来たのは、小学3年生の頃である。
ある日友人と下校していて、その友人と分かれて逆の道を帰っていると、友人の向かった方向で、大きな音がした。
そして広樹がそこへ行くと、さっきまで元気だった友人が、血まみれで死んでいたのである。
ひき逃げされたのだった。
広樹は友人の死を悲しんだが、同時に、血を嫌うようになった。
つまりあの時、俊和が撃たれ、その体から血が出た途端、自然と広樹の体は逃げていたのである。
―本当は逃げたくなんかなかったのに…何で…俺は…。
俊和は、自分が逃げた時は、まだ生きていた。
という事は、広樹が逃げずに康利を説得するとかしていれば、俊和は助かったかもしれなかったという事になる。
―俺のせいだ…俺の…。
広樹は立ち止まり、東の方を見た。
東側には断崖があり、その向こうに海が見えた。
広樹は、ゆっくり、おぼつかない足取りで、断崖に向かって歩いていった。
―俊和に謝んなきゃ…死んで詫びなきゃ…。
そして崖のへりに立った直後、ぱららららと言う音が聞こえた。
無意識に広樹は、崖とは反対側に跳んだ。
するとさっきまで広樹が立っていた地面に何かが当たり、抉れた。
―な? 何なんだ?
すると先ほど音がした方向に、何を考えてるのか分からない不気味な女、仁村公子(女子15番)がマシンガン(ちなみにこれはシュマイザーMP40というもので、公子の支給武器だった)を持って立っていた。
公子は無言で広樹に向かってシュマイザーを向けた。
広樹は思った。
―今ここで殺されるのは嫌だ! 自殺じゃなきゃ、俊和に詫びた事にならない!
ただ、それだけ考えていた。
公子がシュマイザーの引き金を引いた。
同時に、また広樹は左に跳んだ。
しかし、今度は放たれた弾丸の1つが、広樹の右足を貫いた。
「がああ!」
広樹はうつ伏せに倒れた。
だが、広樹はすぐに立ち上がると、公子に飛びかかった。
「てめえに殺されてたまるかよ!」
公子はそんな広樹に容赦なく弾丸の雨を降らせた。
広樹の体が奇妙な、それはまるで何処か南の国の原住民が踊るダンスのような感じに動き、掠めた弾丸が肉片を削り取り、辺りには肉片が飛び散った。
そして広樹の体はうつ伏せに崩れ落ちた。
公子はじっとシュマイザーを見つめていた。
だが、そんな光景を見ている者がいた。
男子9番 須藤広樹 退場
<残り31人>