BATTLE
ROYALE
〜 LAY DOWN 〜
プロローグ
世界は自分を中心に周っていると思っていた。
そうでは無いと気付いたのは小学校に入学してからだ。
自分は集団の中のその他大勢の1人であると知った。
それからは、静かに分相応に生活してきた。
自分は、知らない誰かと街中ですれ違って振り向いてもらえるような特別な人間ではないのだから。
だけど10歳の時、自分には”その他大勢”が持たない特別なモノがあると知った。
*
この部屋には温度が無い。
ここに来るのは2度目だけれど、初めてこの部屋に入った時にも思った事だ。
窓から射し込むオレンジ色の光は、部屋の中央にポツンとあるピアノを照らし出していた。
そのピアノから、何とも言えない音が奏でられ始めた。
普段、全く音楽などに興味のない自分でも思わず音の世界に惹きこまれそうになる。
いつの間にか、演奏は終わっていた。5分か10分かどれ位演奏していたのかは分からないけれど、確かにその短い時間の間、自分は現実世界ではなく音の世界に存在していた。
「……今の曲、お前が作ったのか?」
自分が音楽に惹き込まれていた事に驚いていたが、なんとなくその事に気付かれないよう聞いてみた。
「うん、まだ完成じゃないんだけど。私は私の曲を聴いた人を、この世界から解き放つような曲を作りたいの。この国の全ての人を、この寂しい世界からほんの一瞬でも解放してあげたい。」
「いつか…完成したら、その時は1番最初に聴いてくれる?」
彼女はそう言った。