籐について



歴史

 日本の籐工芸の起源は、藤原時代の重籐の弓、源平時代のかつら籐の弓、戦国時代の刀や槍の千段巻き(柄の部分を籐で密に巻き、漆を塗ったもの)など、武器の一部に籐を使用したものが多数あります。
 出雲大社には籐製の箙(えびら 矢を盛って背負う具)があり、国宝に指定されています。このことから、わが国の籐工芸は1000年ほど前からすでに行われていたといってよいでしょう。
 徳川時代には籐工芸はいっそう進歩し、精巧な網代(あじろ)笠、キセル差し、弓のつる巻きなどがあらわれました。明治初期には中国の工人により籐椅子の製造技術が紹介されました。
 欧米文化の輸入にともない椅子での生活様式が増し、籐椅子などの家具調度がしだいに日本独自に発達してきました。
 大正・昭和に入ると、皮籐を染色したものや丸芯で編んで着色を施したものが出回り、夏季ばかりでなく、四季を通して使用されるようになりました。

籐とは

 籐(とう/トウ)はヤシ科に属するツル性の植物の総称で、数多くの種類・等級があり、アジア南部(マレーシア・インドネシア)など熱帯性気候の地域に分布しています。日本には生息しておりません。
 茎にはとげがあり、密林の他の樹木にからまりながら枝から枝へと伸びていき、その長さは200メートル以上になるものもあります。茎の太さは太いものは60mmくらいのものもあります。
 葉やとげを取り除いた茎の表皮には、自然な光沢(ツヤ)があり、乾燥すると軽く、丈夫で弾力性に富みます。
 籐が家具やかごに使われるのは、茎が長いこと、弾力性があること、内部が繊維状になっているため、水を含みやすく、湿らすとやわらかくなって曲げやすくなるという点から、細工がしやすい材料として最適と言えるでしょう。
 また、籐独自の自然の風合い、年月と共にアメ色に変化していく趣きがあります。

 
  • 籐敷物や脱衣かごなど脱衣場でも使われるように、湿気が抜けやすく、通気性良好。
  • 木製家具の中でも(作り方によりますが)非常に軽いことも利点のひとつ。
  • 座面や背もたれなどを編むのに使われる皮籐は、体になじみやすく、籐ならではのしなやかでしっかりとした支え感のあるクッション性がございます。


籐の原木