友達から「笛の独奏会のキップを買ったが、当日よんどころない用事ができて行けなくなったので、代わりに行ってくれないか」という手紙がきた。私は雅楽の笛と長唄の能管・篠笛の経験はあるが能の笛は習ったことはない。で、行く前に家にある能関係のレコードから田中一次の「九様乱曲」と藤田大五郎の「盤渉調」を聞いて出かけた。
藤田流の家元、藤田六郎兵衛が独奏で3曲吹く。上手いことは上手いが何か音の抜けが悪い。還暦になって体力がが落ちたのか、笛が悪いのか、それとも能楽堂の音響効果のせいなのかは分からないが、イマイチ感動が伝わってこない。
余興で祭りのお囃子が二組でたが「あの社中、演奏が終わって立てるだろうか?」と心配してたら案の定、大方の連中が正座のシビレがきてヨロメイてしばらくの間立てなかった。能の舞台は幕がなく、1時間くらいの演目が終わっても涼しい顔でスッと立って退場しなければならないのだ。(私の場合は日本舞踊や長唄の会のお囃子のお手伝いだったので幕が降りるから何とかなった。幕が降りてから同僚とともにパタパタ倒れてしばらく動けなかったことが何回もある。)
そのあと六郎兵衛さんが最後の曲を奏したが、このときは結構音が抜けてていい感じだった。あのくらいの名人でも最初と最後で音質が変わることがあるのだろうか?中学のときに音楽の3要素はリズム、メロディー、ハーモニーと習ったが、邦楽はそれに加えて音色も入れて4要素と教えている。味の要素で言えば日本ではウマ味というのを含めるが、それと同じようなものだ。音の抜けは音色に関連していて重要なのだ。
|