ホタルの飼いかた


 ホタルのことをよく知るには、飼育して身近なところでくわしく観察するのも良い方法の1つです。たいへん手間がかか りますが、地元のホタルを守るためには、必要なことだと思います。室内で飼育できるホタルのなかまは、ゲンジボタ ル、へイケボタルとヒメボタルです。しかし、飼いかたが完全にできあがっているのではなくて、それぞれの地方で、それ ぞれの人たちが、工夫しながらよりよい飼い方をさがしているのが現状です。ここでは、一般的な飼いかたを紹介しま す。なお、飼育したホタルを観察するだけではなく、育てた幼虫を、きれいになった河川や水路などに放流している人た ちもいます。幼虫の放流は、地元のホタルを守るためのひとつの手段ですが、ホタルのすめる環境がそろっていない と、良かれと思って放流しても、むだに終わってしまいます。生き物の命は大切にしたいものです。
1.ゲンジボタルとへイケボタル
 (1)成虫
 ゲンジボタルとへイケボタル成虫は、水しか飲みません。虫かごの内に草や水ごけだけを入れ、朝夕1回ずつ、きり吹 きで水をかけておけば飼育できます。砂糖水を飲んだ成虫は、少し長生きするという観察例もあります。乾燥し過ぎな いように気をつけて、日かげに虫カゴをおけば、2〜3週間ぐらい飼うことができます。卵をうませるには、おすとめすの 成虫を入れた虫かごの下に水で湿らせたガーゼ、スポンジや水ごけを入れておけばよいでしょう。
 (2)幼虫
 幼虫の飼育方法は、ポンプ類や水槽を組み合わせたいくつもの手法が試みられています。また、飼育用具セットも市 販されています。ここでは、最も基本的で、飼育過程を観察しやすい水盤やバットを利用した方法を紹介します。
 水ごけなどにうみつけられた卵は、へイケボタルで20日間、ゲンジボタルで1ヵ月間でふ化しはじめます。水道水のく みおき水や井戸水などのきれいな水を入れたバットのような容器の上に水ごけを置いておくと幼虫は自然に水の中に 入ります。飼育容器の中にかわらのかけらや石灰岩などを入れておくと、その下をかくれ場所として利用します。容器 の水の中にエアポンプで空気を吹き込んで飼育しますが、幼虫が小さいうちは、あまり強く空気を送り込まないように注 意しましょう。
 ゲンジボタルやへイケボタルの幼虫の飼育容器は風通しがよい日かげに置くようにし、ゲンジボタルでは飼育水温が できれば25℃をこえないように心がけてください。冬の水温は、氷が張らなければ冷たくてもだいじょうぶです。えさとし ては、ゲンジボタルカワニナを、へイケボタルタニシやサカマキガイなどの小型の巻貝を1週間に1〜2回ぐらい あたえればいいでしょう.幼虫よりやや小さめの生きた貝をあたえるのが一番いいのですが、用意できないようなら、や や大きい貝の殻をペンチなどで割って与えてもかまいません。
 容器の水換えは、できれば1〜2週間に1回ぐらい行ってください。エサが残っていると水がよごれやすいので、2日ほ どたったらピンセットなどで残ったエサをとりあげてすてましょう.この時に幼虫がエサに食いついているかもしれませ ん。特に注意してすてましょう。ゲンジボタルの幼虫は、充分に成長すると桜の花が咲く4月頃に、陸に上がります。へイ ケボタルではもう1〜2ヵ月ほど遅れるようです。
 (3)さなぎ
 幼虫を上陸させるために、水槽やプランターに砂を多くまぜた土を入れ、水で湿らせておきます。陸の上にあがった 幼虫はその土の中にもぐり込みさなぎになります。上陸がはじまったら容器を動かすことはなるべくさけ、その中の土が 乾きすぎないように、2〜3 日に1回、きり吹きで水を与えます。ただし、湿りすぎてもいけないので、ようすをみながら、 水分の補給をしましょう。愛知県付近の気温では、ゲンジボタルで40〜45日間へイケボタルで20〜30日間で成虫が 土からはい出てきます。楽しみに待ちましょう。土にもぐった幼虫がさなぎになってから成虫になるまでの期間に死ぬこ とが多く、この期間の飼育がもっともむずかしいようです。

2. ヒメボタル
 (1) 成虫
 成虫は、ゲンジボタルやヘイケボタルと同じように水しか飲みません。めすは、交尾して1-2日すると卵を土の中にう みます。それが終わると死んでしまいます。産卵用にフタ付のプラスチック製の容器(空気穴をあけたもの)を用います。 1個体ずつ飼うのであれば、写真用フィルムケースでもいいでしょう。その容器内には、少し湿らせたできれば黒色の土 を1cmほどの厚さに敷いておきます。この容器におすとめすの成虫をいれておけば、たまごをうみます。卵は淡黄色 で、直径0.6-0.7mmの球形です。もし、産卵数やふ化幼虫数を調べるのであれば、土の中にうみつけられた卵を湿らせ た細筆の先にくっつけて、湿らせたクッキングぺ−パーを敷いたプラスチック容器に移しかえておきます。
 (2) 幼虫
 土の中ににうみつけられた卵は、約20日間でふ化しはじめます。飼育容器には、フタ付のプラスチック製の容器(空気 穴をあけたもの)を用います。この容器には、少し湿らせた土の上に腐葉土を敷き、その上に木片や落ち葉などをのせ ておきます。ふ化した幼虫は、容器から逃げ出しやすいので、かならずフタを閉めておいてください。えさとしては、別の 容器で飼育したキセルガイ類(愛知県では、飼いやすいナミコギセルを使う人が多い)やカタツムリ類などの小型の巻貝 を1週間に1回ぐらいあたえればいいでしょう。幼虫1個体に稚貝や幼貝1-2個体ぐらいを目安に与えてください。幼虫が 食べた貝の殻の中にかくれているかもしれませんので羽化が終わるまでそのままにしておきましょう。なお、幼虫が好 んですむところは、えさのキセルガイ類の成長がいいところよりも、湿り気が少ないので、幼虫とキセルガイ類は、別の 容器で飼うほうがいいようです。
 幼虫は、成長するにつれて、脱皮をくりかえします。4回脱皮して、終令(5令)幼虫になります。
 (3) さなぎ
 順調に成長すれば、幼虫は、ほぼ1年後の4〜5月頃に、土の中でさなぎになります。さなぎ(前蛹期を含む)の期間は3 週間ほどです。
ヒメボタルの人工飼育事例
ホタルの生態
戻る
戻る