BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
11:最悪最凶の魔女
自分が出て数十分のうちに何発か銃声があった。そして、それは各地で殺人が起きているという証でもあった。
「ウフフフ・・・、いいわぁ。アタシも早く人を殺したいな、キャハ♪」
などと物騒なことをつぶやきながら移動しているのは、「転校生」の一人、浪瀬 真央(女子20番)であった。
このゲームが始まって以来、真央は興奮しっぱなしだった。また、人が殺せる・・・、その悦びに全身が支配されていた。
そんな彼女の動きを止める者がいた。
「う、う、動くなあ!!」
そう言われて真央は動きを止める。顔だけ振り向いてみると、こちらに銃を向けている男性がいた。彼女は名前を知らないが、それは和久 光(男子18番)だった。
「う、動くなよ! て、手をあげろよ!」
光は恐怖していた。最初に会ったときの自己紹介で、この女のイカレっぷりは十分知っていたからだ。
光は、ちょっと変わった中学生であった。いわゆる「オタク」であり、同じ「オタク」仲間の赤平 吉平(男子1番)とは非常にウマがあったものだった。
吉平が、がりがりの痩せ型だったのに対して、光はぽっちゃり型(本人談だが・・・、はっきり言えば太っていた)。この両極端の「オタク」コンビは、クラスでも独特のオーラを放っており、その他の人がいっさい通じない会話をする二人を、クラスの間では「史上最強のコンビ」としてクラスはおろか学年中で有名であった。
そのような特徴があるくらいの光は、不運にも今回のプログラムでも「最凶」の魔女と出くわしてしまい、後でやられるくらいなら! という気持ちで精一杯の威嚇にでたのである。
光の武器は『STIタイタン』、オートマチック型の拳銃を真央に向けていた。
あらあら〜、興奮してて全然気づかなかったわ〜。油断ね、キャハ♪
などと、内心は余裕である真央に対して、追い詰めているはずの光のほうがあせり始めた。
「は、早く手を上げないと撃つぞ!!」
「はいはいぃ〜、今、手を上げますよ〜♪」
真央は素直に手を上げた。
「お、お前、このゲームに乗る気なのかよ?」
光は無駄な質問をした。
「ん〜、まぁどうしようかな〜って思ってるところ♪ ところで、背伸びしてもいい?」
と本心はやる気マンマンの真央にそう言われた。
まあ、背伸びくらいならいいか、こっちは銃持ってるし、距離もあるしな・・・
「あ、ああ・・・」
「ども〜♪」
そして真央は両手を合わせて背伸びをし始めた。
「ん〜〜〜〜!」
と言い、その手をそのまま垂直にした瞬間! 急に光のほうを振り向き、
パァン!
という軽い破裂音が聞こえた。
光は何が起こったかわからなかったが、銃を持っていた右肩から激痛が走った。見ると制服に一つの穴が開いており、そこからは赤い液体が流れ出していた。
「あ、あぁああああああ!!」
初めて味わう激痛に思わず銃を落としてしまい、苦痛に苦しむ光。そんな光をよそに、真央は落とした拳銃を足付けし、光に「拳銃」を向けた。
ば、馬鹿な!? 確かにさっきまでは何も持っていなかったじゃないか!?
と思い、光は自分の前に立ち塞がっている真央を見上げた。
そして、真央の拳銃を見てみると、なんと手のひらにすっぽり入るくらいの小型拳銃が握られていた。
「ウフフフ、驚いたぁ? これってねぇ、『デリンジャー』って言うの♪ 説明書によると、暗殺用に作られた超小型拳銃なんだってぇ〜、キャハ♪」
そう、真央は「何も持っていなかった」のではなく、「拳銃を握りながら」移動していたのである。
「でもねぇ〜、これって装弾数が2発だけなのよぅ。だから早めに拳銃が手に入って助かったちゃったな、キャハ♪」
といって、まるでおもちゃを見つけた子供のような瞳で、光に近づいていった。
「ヒィィィィィ。た、助けてくれ! 銃ならやるから!」
と言った瞬間、光の口に何かを突っ込んだ。
「むぐぅ!」
「動かないでね、さもないと、撃っちゃうぞ♪」
蛇に睨まれたかのように光は凍りついた。そして、真央は光が落としたタイタンを拾い上げ、
パーン! パーン! パーン! パーン!
と光の両手両足に向かって発砲した。
「もがぁ! はぐぅ・・・!」
口にハンカチを突っ込まれているので、悲鳴を上げることすらできない。
「さてと・・・、準備完了ぅ!」
と真央が言うと、銃をしまい右のスカートをめくり始めた。ストリップか? と思いきや、なんとそこには包丁が収納されていた。
「どうやら、気づかれなければ武器って持ち込めるのねぇ」
といって光の前に立った。
ま、まさか! お、お願い! 助けて助けて助けて!!
と涙顔で足掻くのだが、両手両足を打ち抜かれているので、まともに動けない。
「あらあら〜、逃げちゃ駄目よん♪ せっかく、人が殺せる快感が味わえるって時なのにぃ」
と言ってサクッっと光の右足を刺した。
「モグゥ!!」
すさまじい激痛が光を襲う。
「さぁて、アタシをま・ん・ぞ・く、させてね、キャハハ♪」
「ングゥゥゥ!」
和久 光の瞳には、そう、ご馳走を目の前にした野獣が映し出されていた。
そして、浪瀬 真央の狂乱の宴の犠牲者第1号は誕生した・・・
5分後、浪瀬 真央の姿はなく、そこには人の形をした、ただの肉塊が横たわっていた・・・
【男子18番和久 光 死亡】
【残り・・・36名】