BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
14:刃狼の牙〜狼VS少女たち〜
ドッコォォォォォォォン!!!!
という爆発音と共に長川 千里(女子12番)の後ろからいきなり轟音と爆風が訪れた。
そして一瞬、呆然となったあと、中にいた大塚 真澄(女子4番)のことが気になり、後ろを振り向いた。
「真澄!! 真澄、返事をして!! 真澄!!!」
そう、叫ぶしかなかった。あの時、黛 風花(女子17番)がやっと合流してきたと思い、夢中に声を張り上げた。するとふいに、アタシの横を何か黒いものがヒュ! とものすごい速さで通り過ぎていった。そして後ろで骨が折れる音も聞こえた。
そのあとすぐに訪れた轟音、爆風、そして目の前の惨事・・・・ 明らかに何かが爆発した模様で、目の前の部屋は原型を留めていなかった。(とはいっても、崩壊までしてはいないが)
「千里!!」
その叫び声でハッと我に返った。その声の主は、自らの支給武器『グロック17』を握り締めた、菊原 蘭(女子6番)であった。
「東から、来るぞ! 警戒しろ!」
そう言われて初めて気がついた。私たちは攻撃されたのだ。真澄のレーダーに映っていた人物に!
ちくしょう! よくも、よくも真澄を!!
激しい憎しみが千里を包み、握っていた支給武器『S&W M49』を東の森に向けた。
来い! あんただけは許さない!!
そんな憎しみの千里に対して、蘭はいたって敵を冷静に分析していた・・・・ 銃じゃない、おそらく投げたのだろう。自分にも見えない早い遠投、そして距離、命中精度、それを考えると、明らかに素人じゃないということが容易に予想できた。
それでも、戦う覚悟はできていた。この大事な友人のために・・・
蘭は中3になるまで、友達をあまり率先して作るタイプではなかった。しかし、孤立したいのではなく、「別に作らなくてもいい」と言う思考であった。
ただでさえ、感情表現の苦手な蘭であっただけに、あまり友人もできないことはおろか、親からも「人形みたいね」といわれる始末。しかも、蘭はそれに何も感じず、ただマイペースに自分の道を歩いていた・・・
だが中3になり、新クラスになった途端、美津 亜希子(女子19番)がこう話しかけてきた。
「菊原 蘭さんね? 私、あなたと友達になりたいな!」
そう言ってきたのである。どうやら亜希子は直感で人を視るらしく、自分に合いそうな人をまさしく直感で選び、いきなり「友達になろう宣言」をかまして、友達を作るのである。
初めてのタイプの人間だった。実際、直感通りだったのか、それとも亜希子の魅力なのか、千里も風花も笑美も真澄も千歳もそんな亜希子が大好きになっていったらしい。
そして私も・・・ 初めて温もりを感じた。人の中でいて、生きてるって感じた。
そんな思いが、蘭の戦意を形作っていた。そしてチラっと千里を見た。
千里とはなぜか気があった。性格は正反対。蘭は感情が乏しく、千里は喜怒哀楽が激しい。千里は楽しい・・・・ どちらもないものを相手が持っているから羨ましいのかもしれなかった。
でもそんなことはどうでもいい。友達を守りたい・・、その想いだけで強くなれるのだから。
しかし、敵は一向に姿を見せなかった。目の前には森が広がっており、森の手前には背の高い草むらが覆い茂っている。
中に入って探すのは危険だな・・・ そう考え千里に次の作戦を伝えようとした。
「せん・・・・」
その瞬間、ブワッと風が音を立てたような気がした。目の前にはいつのまにか低くしゃがんだ、棒をもった「人」が居た。
いや、棒じゃない。剣!?
そう思い、自分のグロックを相手に向けて、引き金を引こうと・・・
その瞬間、目の前の「狼」の剣が風のような速さで1回転した。美しい三日月の軌道・・・ そして、蘭の左腹部から左肩までぱっくり斬られたのだ!
「か・・・はぁ・・・・」
幸い、分離するほど深く斬られていなかったが、確実に致命傷だった。
そして、そのまま、その「狼」は蘭を抱きかかえ、何かをいった。だがすでに蘭には聞こえていなかった。最後に、こう思ったからだ。
ありがとう、千里たちに会えてよかったよ・・・
刃狼は蘭を片手で抱きかかえ、一言こう言った。
「眠れ」
そして、蘭の心臓めがけて、刀を突き刺した!
ドスゥ!!
その一撃で、菊原 蘭は言葉通り深い、永遠の眠りについた・・・
【女子6番菊原 蘭 死亡】
千里は憎しみで何も聞こえていなかった。ただ目の前から来るだろう敵に一切の注意を払っていた。
だが、蘭が呼ぶ声が聞こえてきたような気がした。そして、振り向いてみると・・・、
そこには、不自然に何か貫かれている、親友・蘭。そしてその貫いているものをもつ「男」・・・
「う、うぁ・・・・、うわああああああああぁぁぁぁああ!」
堰を切ったように叫び声を上げ、自分のS&W M49の引き金を引いた。
バーン! バーン! バーン!
3発ほど一斉に引いた。確かに体に穴を開けることはできた。だがしかし、穴が開いたのは、剣で死体ごと持ち上げ盾となった、蘭の亡骸だった。
だが、千里は止まらなかった。
「うあああああぁぁぁぁあああああぁあぁ!!」
バーン! バーン! バーン! バーン!
続けざまに銃を乱射し続けた。正確な射撃をしきっていない千里を尻目に、刃狼は蘭の死体ごと、再び草むらに姿を消した。
そして、カチ、カチ、カチ、カチ。千里の銃はすぐに弾切れとなった。だが、撃って幾分落ち着いたのか、千里はすぐそばにあったバックから予備マガジンを取り出し、即装填した。
そして、一瞬考えていた。蘭を串刺しにした男のことを・・・ それは千里がよく知る人物であったからだ。
あ、あいつなの? あいつが真澄や蘭を殺したっていうの?
そして、その時のあいつの顔に恐怖していた。さきほど取り乱した理由もそれである。何もなかった・・・・ 無表情だったのだ。人を殺すっていうのに何も感じていていないの・・!?
あの顔が千里を恐怖に包み込んだ。そしてヒュっという音と共に、真横から「男」は来た! しかし、持ち前の直感のよさで出てくるポイントを予想し、それが当たっていた千里は、今度は恐怖に打ち勝ち、S&W M49の銃口を男の額に合わせた。
これで終わりよ! 真澄と蘭の仇!!
そう思って、引き金を引く瞬間、一瞬にして、「男」の姿が消えたのである。な、何なの!?
バーン!
と、撃った先には「男」はおらず、その真横に移動していたのである。それに千里が気づいたとき、刀は上段まで上がりきっていた。千里は、死を悟った・・
ああ・・・、真澄、蘭、アタシ達死んでも友達よ・・・・ そして、一言
「大和・・・」と。
ズバァ!!
刀を振り下ろしたとき、千里は暗黒の中にあった。斬り口は左肩から右わき腹まで一直線。その過程で心臓も斬られており、見事、即死だった・・・ 千里の死を確認すると、「男」は銃と予備マガジン(千里と蘭の分)を取り上げ、公民館内に消えていった。
「あと3人か・・・」そう呟きながら。
【女子12番長川 千里 死亡】
【残り・・・33名】