BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
16:刃狼の素性〜砦の結末〜
ガチャ・・・ 部屋に男が入室してきた。
「動かないで!!!」
旭 千歳(女子1番)がそう叫び、ワルサーの銃口を向ける。美津 亜希子(女子19番)も、モデルガンを目の前の相手に向ける。完全に包囲された形になったのである。
そして、男の顔を見て、千歳と亜希子は驚愕する・・・
はっきりいって転校生の仕業かと思っていたのだ。しかし、目の前にいる男は・・・
「う・・・、鵜飼君・・・?」
亜希子がつぶやいた。そう、目の前の男は、血に染まった刀を持った鵜飼 守(男子3番)であった。不登校気味で性格などはよくわからなかったが、こんな無表情な顔は初めて見た。
一言でいうと・・機械のようであった。
「あ・・・、あなたなの・・? 千里を殺したのは・・・?」
千歳は問う。鵜飼はこちらを無機質に見つめる。
「答えて!」ワルサーを突き上げる。
「・・・・・そうだ」
鵜飼は口を開いた。その無機質な言葉に激昂しそうになりながら、鵜飼に近づき千歳は叫んだ。
「・・・・ッ! 武器を捨てて! 早く!」
そして鵜飼は、その言葉を聞き、刀を目の前に差し出し、そのまま床に落とした・・・ が、次の瞬間!
落とした左腕が一気に左側に動き、千歳が銃のグリップを握っている右手の手首をつかんだ。そしてそのまま、手首を180度回転させたのである。
ボキボキッ!!
にぶい音とともに、千歳の右腕はありえない方向を向いていた。
「ああああああぁぁああああああぁぁぁ!!!!」
そう千歳が叫ぶのと同時に鵜飼は左足で刀を真上に蹴り上げ、右手でキャッチしていた。そして、千里の命を奪った同じ太刀筋、袈裟斬りを千歳の体にあびせた!!
ズバッ!!
一瞬の出来事であった・・・ 亜希子は何が起きているかわからなかった。だが目の前の千歳が床に崩れ落ちるのを見て、意識がはっきりした。
「ちとせ・・・ い、いやぁあああああああああ!!」
千歳には亜希子の叫び声が聞こえていた・・ 運がいいのか、不運なのか、千歳は即死ではなかったのだ。
亜希子・・・、守れなくてゴメン・・・ でもね・・・、あなたに会えてよかった・・・ あなたがわたしの・・・――――・・・
それが千歳の最後の意識となった。苦痛のはずの千歳の表情は、微かに笑っているように見えた・・・・
【女子1番旭 千歳 死亡】
鵜飼は一歩、そして一歩、亜希子のもとに近づいていった。
「こ、来ないで!」
亜希子はモデルガンを突きつける。だが、鵜飼は進むのを止めない。
「来ないで! う、撃つわよ!」
そういって、モデルガンの引き金にかかっている指に力を入れた。
「知っている」
そう鵜飼が言った。
「え・・・?」
と亜希子は言った。そして鵜飼はこう答えた。
「モデルガンだということを」
な・・・なぜ!? 亜希子はただ驚くしかなかった。そして、よろっと後ろに下がった。
ズバァ!!
鵜飼が答えたその次から、斬撃は始まっていたのである。そして、その太刀筋は確実に亜希子の体を切り裂いた・・・
「・・・かはぁ・・・・こふ・・」
亜希子は壁に寄りすがるように倒れ、血を吐いた。
浅かったか・・・ 鵜飼はそう思った。
亜希子が後ろに下がったおかげで一瞬で命が奪えなかったのである。しかし、そのおびただしい出血の量から亜希子が助かる可能性は皆無であった。鵜飼は刀を振り上げた。目の前の女性を楽にしてあげるために・・・
あぁ・・・私、死ぬんだ・・・ でも・・・、最後に、最後に、武士に会いたいよ。会いたいよ! 会いたい!!
そう思い、亜希子は涙した。ふいに鵜飼の刀が止まる。
「・・・・・」何かを考えているようだ。そして目をつむった。
「・・・・・・・・!」何かに気づいたように、ゆっくり目を開けて、こう言った。
「・・・お前の願い、聞き遂げてやろう。」
その言葉を残して鵜飼は刀をしまい、千歳の手からワルサーを奪い取ると、その場から姿を消した・・・ 亜希子は何がなんだかわからなかった。ただ、絶望なまでの苦しみが体に襲い掛かってきたのである・・・
【残り・・・31名】