BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末（DEAD END FINALE） 〜
１７：恋人たちの鎮魂歌
鵜飼 守（男子3番）が公民館襲撃を行う少し前、御手洗 武士（男子14番）はE−3地点の廃工場前の草むらに隠れていた･･･
そう、遠山 慶司（男子10番）と那節 健吾（男子11番）の合流ポイントとはこの廃工場前だったのだ。
とは言え、こんな目立つところに突っ立っていては確実に狙われるので、近くの草むらに隠れているわけである。もちろん、自分の支給武器も手に持っている。武器は『H&K PSG−1』スナイパーライフルである。
しかし待てども待てども慶司はおろか、健吾も来る気配もない。
くそ･･･、二人とも無事なんだろうな･･･
そう思っていると自分から南西の方角から、･･･ッゴォォォン･･･という音が聞こえてきた。
こいつは･･爆発！？ そう思い、地図を広げる。
ここの南西っていうと･･･、公民館！！ 亜希子たちが居るところじゃないか！？
そう思うと、何かいやな予感がよぎった。その次の行動は、公民館へ全力で走ることだった。
亜希子！ 無事でいてくれよ！
武士は必死で亜希子の無事を祈っていた･･･
美津 亜希子（女子19番）は、鵜飼から貰った刀傷に苦しんでいた。致命傷ではなかったものの、多量の出血により瀕死の重体であった。
「･･･ハァ････ァ･･･ハ･･」声にならない苦しみがこみ上げる。
あぁ･･･、これなら･･、鵜飼君に楽にしてもらったほうが･･、よかったのかな･･ぁ？
そんなことを思っていた。そして、苦しみをまぎらわすように、武士のことを思った。
武士ぃ･･･、この前の試合の決勝アシスト･･･、すごかったよ･･･ねぇ･･･ また･･･、武士の･･･、雄姿を見たい･･よ･･
そう思い、目を閉じた。そして、涙を流しながら武士の姿を思い浮かべた。
武士････、愛してる･･･ わたしが･･･死んで･･も･･･、忘れ･･ない･･･でね･･･ わたしは･･･、死んでも･･･
そう思った瞬間、何かが聞こえてきた。
「･･･！ ･･･子！ ･･･希子！ ･･亜希子！！」
自分を呼ぶ声が聞こえてゆっくり目を開けると、そこには今一番会いたい人が目の前に居た。
た･･･、たけしぃ･･･
そう思い、抱きかかえてくれている恋人は私に問いかけた。
「誰に･･･誰にやられたんだ！！」
そう言われると、私はゆっくりと指で床に自分の血で数字を書いた。「３」と。 ･･･そして、私は言葉をつむいだ。
「た･･け････し･･ゴホ！！」
「もういい！ しゃべるな亜希子！！」
武士は目から涙を流しながら懇願する。
しかし私は続けた、伝えたい思いがあったから。
「わ･･たし･･は･･ね。死･･んで･････も･･」
そうすると、意識が飛びそうになる。
まだダメ！ 伝えるまでは！ そう自分に言い聞かせ、言葉をかみ締める。
「あ･･な･･た･･を･･･、わすれ･･･ない･･･よ･･」
言えた･･･ すると武士は
「ああ！！ 俺だって死んでもお前を忘れるものか！ だから亜希子････死ぬな！ 俺を置いて死ぬなぁ！！ 死ぬなああああああ！！！」
ああ神様、ありがとう。最後にこの一番愛する人の腕で死なせてくれることを･･･
愛してる･･･、武士。
その思いを最後に、亜希子の体から力が一斉に抜けた。その顔は非常に安らかなものだった･･･
【女子19番美津 亜希子 死亡】
「･･･亜希子･･？」
物言わぬ最愛の人の亡骸に問いかける。だが、安らかに眠るその女性は一切の反応を示さない。
「････亜希子ぉぉぉおおお！ うわああああああああ！！！」
本当に好きだった。愛していたんだ！ なのに、もうこの世にはいない･･･
その絶望感で武士は号泣した･･･ その叫びはしばらく止むことはなかった･･･
そして恋人の死を悲哀して数分がたった････ 武士の顔は、まるで死を宣告された重病人みたいな顔をしていた。そして恋人が残したメッセージ･･･、「３」を見た。
３････、男子3番か女子3番･･･てことだよな･･？ ････鵜飼･･･か･･･井口･･･なのか？
そして、武士の顔に生気が戻った。しかし、さきほどとは違う感情を抱いていた。
･･･許さねぇ。許さねぇ！！ 亜希子を･･･亜希子を殺したことを死ぬほど後悔させてやるぜ！ 待ってろよ！！！ 絶対に俺の手で殺してやる！！
もはや、海音寺中学校天才MF御手洗 武士はそこにはなく、一人の復讐者がいた。そして武士は立ち上がり、亜希子を見た。
待っていろよ･･、亜希子。仇はとってやるからな･･･
亡き亜希子に誓い、武士は公民館を走り去っていった。走り去る復讐者に、もはや慶司や健吾のことなど頭になかった･･･
【残り・・・30名】