BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
24:無抵抗の正義
「そんな・・・・!」
そう呟く男は、スタート地点でいきなり秋文 将(男子2番)の襲撃を受けた遠山 慶司(男子10番)であった。さきほど森の放送があり、それを聞き愕然としていた。
「もう・・・もう10人も死んだのかよ!」
慶司は怒っていた。この放送が何よりこのクソゲームに乗った奴が複数いる証でもあったからだ。転校生以外にも能登 刹那(女子13番)は乗っている。
だが4人だけで6時間で殺せる人数じゃない・・・
他にもいるのかよ・・・クソ!
そして怒っている理由はもう一つあった。
自分の親友・御手洗 武士(男子14番)の彼女、美津 亜希子(女子19番)の死であった。
武士とはよく一緒にいる間柄だったからわかっていたが、武士と美津さんは本当にお似合いのカップルだった。美津さんから告白されたらしいが、武士は美津さん以上に彼女を愛していたかもしれない。
ある部活の帰り、
「慶司、俺さ亜希子と結婚するつもりなんだ」
それを聞いた慶司はオイオイ、またノロケかよっと思った。
「バーカ、まだ早いよ」
「今すぐじゃないさ。でもこの気持ちはマジなんだ。俺にはアイツしか考えられないんだ・・・」
その時の武士の真剣な顔を見て、こいつ・・・、マジなんだなと思ってしまった。
そんな思いすら打ち砕くこのプログラムに本気で激怒していた。
しかしその一方で、武士の身を案じた。この放送を聴いた武士はどうでるのであろうか・・・?
あいつの性格だ、絶対復讐を考えるだろう・・ そしてあいつも人を殺す・・・
ダメだ! 止めないと! 美津さんは絶対そんなこと望んでいない!
慶司は考えをまとめると、まず自分の置かれている状況を整理しだした。
将の襲撃から必死に森を逃げ切って、やっと開けたところにでたと思い、少し歩いてみると目の前には橋がある・・・ 森と橋・・・この条件から推測すると、おそらく俺はD−5地点にいることがわかった。
しかしのんびりもしていられない。この地点は4時間後に禁止エリアになるのだから。
そう思い、逃げてばっかりで確認できなかった荷物を見た。一応休憩も途中でとったりしていたのだが、いつ襲われるかの恐怖で休憩しながらの警戒だったのでまったく余裕がなかった。そして自分の武器を取り出してみる。
「これは・・・『スタンガン』?」
慶司の支給武器はスタンガンであった。確かに武器ではあったが、銃器をもった敵が出てきた場合は歯が立たない。
「まぁ・・いいさ! 俺は乗る気はないから・・」
そういうととりあえず橋を渡ろうとした。
とりあえず、健吾と武士を見つけないと・・・!
そう思っていると反対側の橋に誰かいるのが見えた。よく見てみるとそれは・・・、
「・・・深矢?」
そうちょっとミニスカート気味で茶髪の深矢 萌子(女子14番)がそこにいた。橋を挟んで二人は話しかける。
「深矢! 無事だったんだな!?」
そう言うと萌子は淡々と話し始めた。
「ああ・・・慶司君・・・ あなたも無事だったのね・・・」
そして、何かを取り出した。
「でも、ここまでね・・」
そこには銃を構えた萌子が居た。
「な!? 深矢!」驚きを隠せない慶司。
「お前も・・・乗っちまったのかよ! このゲームに!」
すると萌子は喋りだした。
「・・・乗る? 何言ってるのよ、慶司君。殺さなきゃ殺されるのよ!!? 乗るか乗らないかの問題じゃなくて、もう私たちは乗ってるのよ!? 勘違いしてるのはあなたのほうよ!」
萌子は堰を切ったように続ける。
「私は死なない! まだ15歳だしやることはいっぱいあるの! ブランド品も集めたいし、彼氏だって欲しい! そのために殺すの! まずあなたを殺すのよ!! あははははは!!!」
慶司はわずか6時間で昨日まで笑いあっていたクラスメイトをここまで壊すこのゲームが憎かった。
だが憎んでも萌子は止まらない。
「慶司君、かっこよかったのにね・・・ でも、私のために死んで!!」
そうやって萌子は引き金を引く。慶司は覚悟を決めた。
健吾、武士、あとは頼むぜ・・・ 俺は人を殺すくらいなら・・!!
そして銃声が鳴り響く。
ドォン!!!!
とっさに慶司の体が横に吹っ飛ばされた感じがした。
いや、正確には自分に突っ込んできた人物と一緒に吹っ飛ばされたのである。
そして自分に突っ込んできたその人物は言った。
「バカヤロ!! 死にたいのか!!」
そしてその一方で叫び声が聞こえる。
「あああああああああぁぁあああああ!!」
そっちを見ると銃を持った腕がダランと下に向いて、苦しんでいる萌子がいた。そして自分の近くの人物は萌子に銃を構えた。
「だめだ!!」
とっさにその男の腕の軌道を変える。
バァン!!!!
幸い軌道を変えただけだったので萌子には当たらなかった。だがこっちが銃を持っていることがわかったのか、
「ヒィ!!」といって近くの森に逃げていった・・・
「よかった・・・」
どちらも死なずにすんだことに慶司は嬉しかった。だがそんな気持ちもつかの間に、男は銃をこちらに向けてきた。
「・・・・どういうつもりだ。お前?」
男が問いかける。よく見ると俺のクラスメイトじゃない・・・! こいつは・・・転校生! 短髪の男だ!
「お前こそ、どういうつもりだ。俺を助けるなんて・・・」
俺は逆に聞き返したが、
「質問しているのは俺だ。まずはそっちが答えろ」と言って銃を突きつける。
「・・・誰にも死んで欲しくなかっただけさ。ただそれだけだ」
「お前・・・、正気か? このプログラムのルールを承知の上でか?」
短髪の男は問う。
「そうだ」
「それで自分が死ぬことになってもか?」
「人を殺してまで生きようとは思わない!」
と言い切った。すると短髪の男は、
「お前みたいなタイプは真っ先に死ぬ。覚えておけ」
そしてムッときたのか、慶司は不機嫌気味に言った。
「今度はこっちだ! なんで俺を助けた!?」そう言うと男はいった。
「お前みたいなタイプは嫌いじゃないからさ」
思わぬ返答に慶司は言葉が詰まる。
「正直に言うとお前たちのやり取りはさきほどから物陰で見せてもらっていた」
なんだって・・! 狼狽する慶司を節目に男は続ける。
「そしてお前は女に銃を向けられても、抵抗をしようとはしなかった・・・ そして、そんな奴を俺は探していたからだ。こいつなら・・・大丈夫だと」
「な・・何が大丈夫なんだよ?」さっぱりわからない慶司が問う。
「このゲームに乗る心配がないってことさ。・・・・単刀直入に聞く。お前・・、このプログラムから脱出してみる気はないか?」
なんだって!? 脱出だって! 思いもよらぬ転校生の言葉。慶司は言葉を吐き出す。
「あるのか! 方法が! どんな方法だ!?」
「まだ教えるわけにはいかない。この計画は慎重にしなければならないからな。そして信用できるやつしか連れてはいけない」そして男は続けた。
「そこでお前が絶対信頼できるやつを教えろ。そいつらを連れて行く」
本当か・・・ そんな方法があるのか! わずかな希望に慶司は嬉しさが止まなかった。だが・・・
「信頼できるやつ? じゃあ・・・、それ以外は・・・? 深矢さんは・・・?」
そう言うと男は言い切った。
「あの女か・・・? あいつはもうだめだ。完全に狂気に飲まれている。正常な判断をしていないやつは足手まといだ」
「な・・!?」
「勘違いするな。俺はボランティアじゃないんだ。信用できないやつを信頼するほど俺はお人よしじゃない」
そう言われて反論でもしたかったが、慶司は口を閉ざした。
こいつの言うことも一理あると・・・ ここで申し出を断るよりかは、乗る気のない奴らを集めて脱出したほうが確かにいいことはわかっていた。
しかし、心のどこかは納得していなかった。
「・・・まぁ、いいさ。詳しい話は別の場所でやろう。銃を使ったから誰かくるかもしれない」
「あ、ああ・・・」
とりあえず了解した慶司だったが聞きたいことがあった。
「なぁ・・・、お前の名前は?」そう聞くと男はいった。
「自己紹介しただろ?」
「あんなので覚えられたら天才だよ」
そう言うと男はため息をつきながらいった。
「本条 龍彦だ」
「俺は遠山 慶司だ。よろしくな」
【残り・・・28名】