BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
25:転校生の実力
場所を移してC−6地点あたりの森林にて・・・
深矢 萌子(女子14番)は苦痛に悩まされていた。肩からブランッと腕が下がり、痛みで動かせないのだった。脱臼に加え、腕の筋肉も少々痛めていた。
原因は萌子が持つ銃にあった。『デザートイーグル』。現在支給されているハンドガンで最強の威力を誇る銃である。
ならば萌子は運がいいのか、答えは否であった。
デザートイーグルは威力は人間の体を吹き飛ばすほどの破壊力を持っているが、その反面、反動が半端ではなく素人がとても使える銃ではなかった。これを使える中学生は男でも全国でも少ないだろう。
ましてや萌子は普通の女子中学生。しかも片手で撃ったため完璧に右腕の自由をもっていかれたのである。
「く・・・、くぁ・・ う・・うぅ・・」
萌子は理不尽な運命を呪った。本当ならば、今頃夏休みを満喫し、何事もなく卒業。その後は東京にいくつもりだったのに・・・
萌子は東京に憧れていた。よく若者にありがちな在京志向である。萌子もその一人で、最新のファッション・最新のオシャレが集まる首都・東京に憧れる女子中学生だった。
住んでいるところが茨城だったので、よく東京に行けるが、まだまだ物足りなかった。行けるほうといってもまだ遠いのである。
そして卒業後、親が東京に転勤するということで東京にいける喜びに体が震えたものだ。
卒業までの辛抱・・・だが最大最悪の試練が待ち受けていた・・・
くそ・・・私は生き残るのよ! そして東京に行くのよ!
その気力だけが萌子を支えていた。そしてガザッと目の前の草が動いた!
「誰!?」
右腕が痛むのを我慢しながらも、左腕で銃をもち構える。
「誰! 出てきなさいよ!!」
そうすると相手も出てきた。長身で足が長くて金髪・・・、外国人モデルかと思わせるような体形とルックス・・・、転校生・デビット=清水(男子19番)であった。
「オゥ、ヨクワカリマシタネ〜!」
と陽気にしゃべるデビット。片腕にはナイフが握られている。こいつの武器はナイフか・・・ 距離をとっておけば、銃で威嚇できる! そう思った萌子は主導権を握ったと思った。
「そのナイフを捨てて・・・ さもないと撃つわよ!」
そう言うとデビットは、
「オゥ、ないふ捨テルト、私殺サレテシマイマスヨ! ソレヨリアナタ、腕ハ大丈夫?」
と話を逸らそうとする。
「いいから、捨てて! マジで撃つわよ!!」
デビットも萌子の殺気を感じたのか、
「ワカリマシタァ! 捨テマスヨ!」
といって萌子のほうにナイフを一直線に向ける。するとカチと音がした。
ビュッ!!
といきなりデビットの持っていたナイフの刀身がこちらに飛んできたのである。
ドス!! 見事ナイフの刀身は萌子の右肩にヒットしたのである。
「ぐあぁ!!!」
右肩に激痛が走る。だが萌子は銃を離さなかった。離せば終わりだと理解していたからだ。
「ホゥ、丈夫ナオ嬢サンダ」
デビットは余裕の表情だ。
「ハァ・・ハァ! 残念ね、あなたの反撃ももうお終い。次はどうするの?」
萌子はデビットに問いかける。
「ドウモシマセンヨ。アナタハ死ヌノデスカラネ」
何を言ってるのこの男は・・・ そう思った萌子の視界が急にブレた。
ぐら・・・、妙な吐き気を催してきた。そして立っていられなくなりその場に倒れこんでしまった。
「あぁ・・・ぁ・・・・ぁ・・・」
もはや言葉もはっきりしない。デビットは近づいて萌子のデザートイーグルを奪ってこう言った。
「私ガ余裕ダッタ訳、教エテアゲマショウカ?」そう言って続けた。
「一ツハ私ノ武器ガ『すぺすなずないふ』ダッタコト。コレハ旧ソ連ガ作ッタ暗殺用ノないふデシテネェ。すいっちデ刀身ガ飛ブンデスヨ。ソシテコレト合ワセタノガコノ瓶ノ液体デス」
そういって小瓶を差し出す。
「説明書ニヨルトコノ小瓶ハ『毒薬』ダソウデス。即効性デアットイウ間ニ体ノ自由ヲ奪ウ猛毒ダソウデスヨ。ツマリ私ハアナタニないふヲ当テレバ勝チダッタ。コレガ1ツ」
悠然と銃を向けて口上を続ける。
「2ツ目ハ、コノ銃デス。コレハ『でざーといーぐる』トイッテ破壊力抜群デスガ、非力ナ者ガ使ウト反動デ自分ノ体ヲ傷ツケテシマウ諸刃ノ銃デス。アナタハスデニ片腕ヲ痛メテイタ。サラニ片腕ヲ失ウトイウコトハアナタニトッテ死ヲ意味スル。ダカラ引キ金ハ引ケナイ。コレガ2ツ目デスヨ。ソシテ3ツ目ハ・・・」
ドォン!!!!
言い切る前にデビットは萌子に銃を発砲した。至近距離であったため萌子の頭は完全に吹き飛んでいた。
「私ハコノ銃ヲ扱ウコトガデキル・・・トイウコトデス」
そう言い切るとデビットは萌子からナイフを引き抜き、戦利品を漁ったあと、満足そうにその場を後にした・・・
残ったのは口より上がない奇妙な死体だけだった・・・
【女子14番深矢 萌子 死亡】
「そろそろいいだろう・・・ ここでさっきの続きを話そう」
そう言って。龍彦が腰を据える。そこは廃工場の北に広がる森・・・ その中にいた。慶司はその道中で必死に龍彦に付いていこうとしたがかなり早く疲れていた。
「ハァ・・ハァ・・・ああ」
「もうバテたのか。体力のない奴だ」
そういわれてカチンときた。自分はその界隈では知らぬ者などいないほどのサッカー選手だったのだ。体力には自信があった。
「お、お前が化け物なだけだ・・ お前・・・何者なんだよ」
「俺の質問に答えれば教えてやるよ。」
とさきほどと同じパターン。くそ、こっちが答えるしかないようだな・・・
「そうだな・・・ 健吾と武士は間違いなく信用できる。あとは黛さん・・・・ 乗りそうにないのは春日部と墨田さんとリーダーだ。あとは・・・よくわからない」
本当は美津さんたちもそうだったが、もうこの世にはいなかった。龍彦は問い返す。
「出席番号で言え。顔がわからん」
「顔がわかるのか?」
「俺は最後の出発だったんだ。全員の顔くらい覚えている」
やっぱり化け物だ・・・ そう思ったが口には出さず続けた。
「健吾が11番、武士は14番だ。黛さんは17番、春日部は4番、墨田さんは9番、リーダーは16番だ」
ふむ・・・と龍彦は考え出す。そして、答えた慶司は龍彦に言った。
「今度はこっちの番。本条、お前何者だ?」
と言うと、本条は何か考えたようだが答え始めた。
「・・・・俺は専守防衛軍だ」
な!? 専守防衛軍だと! この国の正規軍じゃないか!? 驚きを隠せない。
「正確な所属は『大東亜共和国専守防衛軍少年予備隊』だ。軍の予備軍みたいなものだ。・・・ちなみにもう一人、金髪がいただろう。あいつも専守防衛軍だ」
もう一人の転校生・・・外人風の男・・あいつもなのか!?
「じゃあ・・・、もう一人の女のほうもそうなのか?」
「あいつは違う。だが・・・プログラムに志願するくらいだから並大抵じゃないってことだ」
志願・・・? その言葉にさらに胸がざわついた。
「じゃあ・・転校生っていうのは・・・、自分たちの意志でプログラムに参加した人ってことか!?」
「そうだ・・・ 俺もプログラムに自分から進んで参加した」
そう言う龍彦に慶司がくってかかる。
「なんでだよ! こんなクソゲームに参加することに意味なんてあるのかよ!」
「・・・・ある男に会うためさ・・・」龍彦はつぶやいた。
「え?」
「お前は俺を化け物って言ったな。だがお前らのクラスには本物の『怪物』がいる。そいつに比べれば俺もデビットもかすんで見えるくらい・・のな」
仮にも軍隊に所属しているこいつにこんなに言わせるなんて・・・・
「だ、誰なんだよ・・そいつは」
「・・・・聞くのか?」
龍彦は慶司に言った。
「ちなみに、俺がその男に会う理由は・・・・、復讐だ。あの男を殺すために俺はこのプログラムに参加したのさ」
殺人を誓っている人間がここにもいる・・・ それを目の前にしながらも、慶司は知るしかなかった。
「誰なんだ?」
慶司の覚悟に龍彦も口を開けた。
「男子3番鵜飼 守。俺たち軍では『刃狼』として伝説になっている男だ・・・」
これから龍彦が口にするのは、軍に伝わる恐るべき武勇伝である・・・
【残り・・・27名】