BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
27:狂信者の行進曲
森の最初の放送後、家島 舞(女子2番)はやっとのことで廃工場にたどり着いた。そこでずっと隠れていたかったからだ。
舞は読書好きな普通の女子中学生だった。
しかし出発後、男子を挟んで来る親友の井口 友香(女子3番)を待つようなことはしなかった。出発前のルール説明のこの言葉が頭から離れなかったからだ。
「最後の一人になるまで殺しあってもらう!」
そう、このゲームに生きて帰れるのはたったの一人・・・ たとえ友香と一緒に行動したとして最後の二人が自分たち二人だったとする・・
その状況が恐ろしく見えた。こちらが殺す気がなかったとしても相手があるかもしれない・・・ そんな疑念から舞はすぐに廃校より東にある廃工場へと向かったのである。その途中銃声が鳴り響くたび、隠れてやり過ごしていたためかなりの時間がかかったが、なんとか辿り着いてこの工場の前にいる。
「うぅ・・・・」
だが舞は怖かった。
こんな工場の中を一人で・・・、しかも夜も・・・一人で・・・
舞は孤独が怖かった。なにより一人になるのが怖かった。だから自分と趣味が合いそうな友香と友達になったりもした。とにかく孤独を抜け出せればそれでよかったのである。
だが自分は相手の疑念と殺戮の恐怖から孤独になってしまった。
自分が見捨てた井口 友香はもうこの世にはいないのだから。その事実に舞は深い後悔をしていた。
「うぅ・・・ぅ・・友香・・・ごめん・・・ 謝るから・・・、こっちに来てよぅ・・・」
その孤独から親友の名前を呼ぶ。だがその声は届かない・・・
と突然声が聞こえた。
「い、家島さん・・・」
その声に体をビクッとさせる。
「ヒ!」とそちら側を見つめる。
そこには、不登校気味で有名な真中 冥(女子15番)がいた。それに後ずさりをする舞に冥は話しかける。
「よ、よかった・・・見つかって・・・」
いきなりの発言に舞は戸惑いながら冥の話を聞く。
「わ、私、井口さんと一緒にいて・・・ 井口さん、家島さんを探してたの・・・」
え・・! 友香が・・・私を? 友香を見捨てた私を・・・
冥の言葉にすばやく反応した。
「友香に・・・友香にあったの!?」
「う・・・、うん・・・ 死ぬ間際に・・・家島さんに渡してほしいって・・・あずかったものがあるの。こ、こっちにあるの、来てくれる・・?」
そういわれて舞は素直についていった。
見捨てた友香が残したもの・・・・それを知りたい気持ちが恐怖を克服していた。そのため言われるがままに冥に付き従ったわけである。
「この曲がり角の先に・・・私のバックがあるの。そ、その中に・・・」
そう言われたところは工場の裏手だった。
友香・・・、ごめん! 謝るから、謝るから許してね・・・
そんな気持ちで舞は裏手に出た。だが何もない。
「あれ・・・、真中さん・・・?」
「せいぜい地獄で仲良くね。裏切り者さん。」
はっきりとした冥の言葉とともに横からにぶい音が聞こえた。
ボキィ!!
と・・・も・・・か・・・
そしてそのまま横の壁に激突した! そして舞の意識は戻ることはなかった・・・
【女子2番家島 舞 死亡】
ゴン!!!
横からヌンチャクの渾身の一撃を食らったあと、その横の壁に派手に頭から突っ込んだ舞。
そしてそのまま倒れこんだままピクリとも動かない。見てみると鼻血を出し、目も虚ろだった。どうやら即死のようだ。
「フン・・・、友達を見捨てるような裏切り者にはふさわしい末路ね」
そう、自分は醜い人間に天罰を下す神の代行者・・・
自分だけ助かろうとする女に、友達を見捨てて逃げた女・・・
滅ぶに値する人間たちばかりだわ。・・・このクラス、いえこの国にはまだまだ天罰を下す人間は大勢いる。私はそんな神の意志を代わりに執行する者・・・
冥はこのプログラムが始まる前から狂っていた。
近所の犬や猫も「野良は社会のゴミでしかない。抹消が妥当である」という理由で野良猫や野良犬を殺し続けた。
これは冥の近所でも問題となっていた。
そして冥は野良犬や野良猫を殺す感覚で人を殺している。
「さて・・・この裏切り者の武器はなんでしょうね・・・」
と舞のデイパックを探った。
「・・・『縄』か・・・ まあ使えるかもね・・・」
そしてこう呟いた。
「次に神の裁きを受けるのは誰かしらねぇ・・・」
「那節君・・・! 反応が・・・1つ消えたわ・・・」
廃工場に向かっていた那節 健吾(男子11番)とレーダーを持っている黛 風花(女子17番)は足を止めた。この先にあった2つの反応のうち1つが消えたことに気づいたからだ。
「そうか・・・ ということはもう一方はやる気になっている奴に間違いないだろうな。近づかないほうが無難だろう」
といって健吾は呟いた。
「今度は北の診療所に向かってみよう。そのあとは住宅地なんかに行くのもいいかな。とりあえず人がいるところを重点的に探してみよう」
「う・・うん・・」
「心配しないで。慶司とはきっと会えるさ」
そういう健吾に、風花は力強く頷いた。そして二人は廃工場を避けるルートを通り始めた・・・
【残り・・・26名】