BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
28:プライドの鍔迫り合い
日も落ちてきたころ、再びガガッという音と共に放送が鳴り響く。
「あ〜、私のかわいい生徒たち!! しっかり殺しあってるかい? 今回は優秀な生徒が多くて先生も嬉しい限りだ。ではさっそく死亡者と禁止エリアの発表いくぞ〜! 死亡者は、男子は17番沢崎 義史、一人だけだ。女子は3番家島 舞、14番深矢 萌子、16番松浦 英理、以上だ。女子が少し殺られすぎだぞ! 残りの女子はもっと頑張れよ! 新記録目指してどんどん殺せ! 日も暮れるからチャンスかもしれないぞ〜! 次に禁止エリアだ。1時間後にD−6、2時間後にG−1、4時間後にC−4、5時間後にB−1だ! 禁止エリアに入って首輪が爆発しないように注意していけよ〜。それじゃ次の放送でみんな生きて会おうな〜」
ブチッという音とともに森のうるさい声が聞こえなくなる。
勝手なこと言ってるわね・・・ まぁいいわ、ワタクシには関係ないことですもの。
この最悪の状況でも高慢な態度を崩さないその少女の名前は天王寺 君代(女子11番)。まさしくお嬢様の名前がぴったりな性格をした少女である。
それもそのはず、君代の親は大東亜でも屈指の富豪、天王寺グループの総帥にあたる人物だ。まさに「お嬢様」なのである。
だが君代の身体能力はお嬢様なんてものじゃない。親からの厳しい教育で武術・弓道・馬術と天王寺家の才女としてのレッスンを受けてきた。もちろん礼儀作法・さまざまな教育を受けてきた。
その選ばれし天王寺家の長女でもあるこのワタクシに殺しあえと! あの森とかいう担任、あとで必ず圧力をかけて社会的に抹殺して差し上げますわよ!
そんな気持ちでいっぱいだった。
だいたいクラスのみなさんはもちろん、その親たちも結果的には天王寺のコマに過ぎない人たちばっかり・・・ まぁ、いずれお父様が圧力をかけて大事なワタクシを生かすために全員の首輪を爆破してくださるでしょうけれど・・・ それまで生き残らないと・・・ね。
そう思って自分の右手に持っている武器『鎖鎌』をみた。鎌の下に鎖がついてて、その先端には分銅があるタイプだ。これで父親が手を出してくれるまで耐えるつもりだった。
そして日もそろそろ暮れるのではないかという頃、君代はD−8の橋の前にいた。
さきほどまでは廃校近くの森に潜伏していたが、そろそろ夜になるので寝床を確保するためだ。いくらここがサバイバルとはいえ、お嬢様の君代にとって、野宿だけは勘弁だったからだ。
その橋を渡り、住宅地で夜を過ごすつもりだった。もちろん住宅地に敵がいるかもしれないということは考えていたが君代は負ける気は微塵もなかった。
ワタクシは天王寺家の長女ですのよ、あんな庶民に負けるはずがありませんわ!
そのような絶対的な自信に満ち溢れた君代は橋を渡り始めた。
しかし、目の前に誰かがいた。身長はやや高め、腰まであるだろう長い髪・・・
あの女は・・!
君代は見てすぐ気づいた。まさしく自分の天敵・墨田 剣子(女子9番)であることがわかったからだ。
「あら・・・、墨田さんじゃありませんか?」
悠然と君代が語りかける。
「天王寺・・・・か」
君代は癪に障った。このような庶民に呼び捨てされることへの怒りからだ。
「・・・ッ! 何度呼び捨てにするなと言えば気が済むのかしら! この名前はあなたが思っている以上に重いものなのよ」
憤然と話す君代に対して剣子はいたって冷静に話す。
「別に・・・ アンタが偉いわけじゃないだろ。アンタの父親が偉いだけだ」
「だからあなたはわかっていないのよ。お父様の権威はワタクシの権威なの。その辺をわきまえてくれるかしら」
「用はそれだけか? それならアタシは行かせてもらうよ」
軽く相手をしている感じの剣子を見て、君代の中で何かがキレた。
この女・・・・、前々から気に食わなかったのよね! この機会に・・・・殺して差し上げますわ!
怒りのままに君代は鎖鎌を構える。
「あなた・・・、前々から天王寺を馬鹿にした発言を繰り返していましたわね・・・ その罪・・・、あなたの命で償ってもらおうかしら!」
対する剣子も自分の腰に刺してあった『木刀』を取り出して、
「悪いけど、アタシもまだ死ぬわけにはいかないんだ。そっちが殺す気ならこっちも引けないよ」
と言って剣道の構えをとる。剣子は剣道有段者であることは女子の間でも有名であった。その剣子の武器が木刀であるのはまさに鬼に金棒であった。
そして武術経験者同士の戦いはきっておとされた。
まず仕掛けたのは君代だった。
「死ね!!」
といって鎖鎌の分銅を力いっぱいに投げる。しかしそれを軽くよける剣子。
一気に間合いを詰める。
そして剣撃一閃! 上段からの一撃を君代に叩き込む。これを間一髪で避ける。
ドゴッ!
という音とともに君代は鎌を剣子に向かって振り回す。だが少し剣子の腕をかすっただけで回避されてしまった。
しかし完全に鎌の間合いに入った君代は容赦なく鎌を振り回す!
ブン! ブン! ブン!
完全に防戦一方の剣子。回避するのに精一杯だ。
「死ね! 死ね! 死ねぇぇぇ!!」
と血眼になって鎌を振り回す君代。
このままじゃまずいわね・・・
そう考えた剣子はある秘策にでた。君代が鎌を振った瞬間、今だ! と思って振るのに夢中で野ざらしになっていた地面の鎖を踏む。
「な!?」
鎖に目が行っていなかった君代は自分の鎌が引っ張られる感じを受け、一瞬ひるむ。これを剣子は見逃さなかった。
「ハアァ!」
と気合の篭った一撃を鎌をもっていた君代の右腕に叩き込む。
ボキィ!! と骨の折れた音がした。
「ギャアアアアア!」
お嬢様とは思えない叫び声を上げる君代。間髪いれず剣子は君代の空いた左わき腹に剣撃をおみまいする。
ボキボキボキィ!! 今度は肋骨がイった音だ。
「ゴァ・・・・カハァ・・・・」
そして完全に倒れこむ君代。
「ハァ・・・ハァ・・・」
剣子の方も無事ではすまなかった。鎌を振り回された際、いくつかの軽い切り傷を負っていた。しかしそんな傷は気にもせず、止めの一撃を食らわすために、木刀を両手で振り上げる。
「あ・・・う・・助けて・・・・」
といまさら無様に命乞いをする君代。
だが今生かしておくと確実に狙ってくる。そういった確信から殺すしかないと思った。
「悪いね。アタシはまだ死ぬわけにはいかないんだ」
あいつに会うまでは・・・・
そう思い、完全に殺すつもりで木刀を振り下ろす。
バーン!!
という音が鳴る。ふいに剣子の腹の部分から激痛が走る。見ると穴が開き、そこから血が噴出してきていた。何がなんだかわからず、音がした後ろを振り向く。そこには・・・・、
不敵な笑みを浮かべる「魔女」が佇んでいた・・・
【残り・・・26名】