BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
30:いじめられっ子の逆襲
夕日がまぶしくなってきた頃、H−6地点の学校にある生徒たちが集結していた。協力してこのゲームに生き残るためだ。
陸奥 海(男子15番)をリーダーに海音寺中学校の裏を取り仕切る不良グループたちだ。海の周りにはグループの狩谷 英寿(男子5番)、久慈 雅人(男子6番)、椎名 潤一郎(男子8番)がいた。グループメンバーとしては海の彼女の神部 姫世(女子5番)がいないくらいか・・・
英寿は腕力で物をいう不良、雅人はハッタリが得意の不良、潤一郎は悪知恵が働く不良であった。
そして海はというと、その界隈では知らぬものがいないほどの札付きのワルであった。喧嘩の強さはもちろん、中学生にして傷害、暴行、薬、はたまた殺人までやっている噂があるほどだ。しかし補導歴は一切なく、それを隠すほどの狡猾かつ知恵が働く「悪」であった。
その海がメンバーに伝えたことは・・・「廃校をでたら、学校に集まれ。そこで協力してこのゲームを乗り切るぞ」
頭の悪い3人にとって海の申し出はありがたかった。海についていけば生き残れるかもしれない・・・ そう思ったからだ。
ふいに英寿が海に話しかける。
「しかし、カイよ〜」
「あん?」
「姫世のやつには伝えなくてよかったのかよ? 俺らがここにいるってことをよ」
すると海は迷うことなくこういった。
「あいつはダメだ。俺と付き合ってたのも自分にハクをつけたかったからだからな。まあ俺もあいつのスタイルが好きだったんで承知の上で付き合ってやってたわけだが。裏切る可能性も大だから見捨てた。それに・・・」
「それに?」
「女なんざ足手まといだ。このゲームに生き残ろうと思ったら必要ないしな」
ぞくっと英寿は寒気を感じた。じゃあ俺らはどうなんだよ? と聞きたかった。しかし海は続けた。
「その点、お前らは仲間だからな。信用できる。まあ心配すんなって。俺が全員生き残れる方法、考えてやるからよ!」
笑いながら、海は英寿の肩を叩く。
そうだよな・・、こいつなら・・・
英寿は入学早々上級生との喧嘩で停学処分を食らった。そしてその停学あけ、上級生たちに再び挑もうとすると・・、上級生たちはすでに他の後輩にシメられたらしい。
それならと今度はそいつに挑みにいったのである。その時上級生をシメたのが海だった。体格では圧倒的にこっちのほうが優勢にもかかわらずこっちが完全にボコボコにされた。そしてその時に陸奥 海の恐ろしさを体に染み込まされたのである。
以来英寿は海のグループの傘下に収まったのである。
「ふぅ、俺はトイレ行ってくるぜ。ヒデ、マサト、ジュン、ここは頼むぜ」
といって海が自分たちがたむろしている教室から出て行く。そして英寿は残った雅人と潤一郎に話しかける。
「おい、お前たち。本当にあると思うか? みんなで出る方法なんてよ」
「ヒデェ、心配しすぎなんだよお前は。カイに任せてれば大丈夫だって」
と潤一郎が言う。雅人も続く。
「こっちがやられる心配してんのか? だったら心配ねーよ。俺の武器も銃だったし、カイのにいたってはありゃ最強じゃねえか?」
といって自分の武器を見せる。
雅人の武器は『トカレフTT−33』オートマティック型の拳銃だ。そして海の武器は『UZI SMG』サブマシンガン・・・確かに最強だろう。ちなみに英寿は『アイスピック』、潤一郎は『バタフライナイフ』だった。
だが2人とは違って英寿は海への疑念が止まらなかった。正直、海の底知れぬ深い「闇」が英寿を恐怖させていたのかもしれない。
本当に海を信じていいものか? もう一度話してみるか・・・
「なぁ・・・、マサト、ジュン・・」
パァン!!
その音を最後に英寿の意識は途絶えた。英寿のこめかみを銃弾が見事貫通したからである。
【男子5番狩谷 英寿 死亡】
「う、うわあああああああ!!!」
「ひ、ヒデェェェェ!」
パァン!!
もう一度銃弾がこちらに入ってくる。
その銃弾は誰にも当たらなかったが二人はとっさに伏せる。ここは1階・・・窓の外から撃ってきたやつがいる! そして雅人はそっと窓の外を見てみる。
そこには・・・なんと自分たちの奴隷・秋文 将(男子2番)がいるではないか! そして銃らしきものを構え、その引き金を引いた。
パァン!
将が放った銃弾で、もはや教室のガラスは割れ放題であった。
「テメェ! 秋文、どういうつもりだ!!」
「こんなことしてただですむと思ってんのかよ!?」
雅人と潤一郎は叫ぶ。
「う、うるさい!! これは神様がくれた復讐の機会なんだ。お前ら全員この銃で殺してやる!!」
パァン!
再び銃声が鳴り響く。だが伏せているため二人には当たらない。
「上等だよ! テメェ、ぶっ殺す!」
と雅人が顔を出し、将に対してトカレフの引き金を引く!
バン! バン! バン!
しかし射撃に関しては素人の雅人の射撃、さらに本物の銃を初めて撃つだけあって将の体には当たらなかった。
「ヒィ!」
弾に当たらなかった将は再びコルトトルーパーの引き金を引く。
パァン! パァン!
さすがに危ないと思ったのか雅人は再び隠れた。将は再び引き金を引く。しかし・・・
カチカチカチ。
この学校で撃った弾はこれで6発、廃校の時使った弾は装填したとはいえ、リボルバー式の拳銃のため6発で弾切れであった。
「し、しまった!」
そう思って必死に木の裏に隠れた。一瞬反応の遅れた雅人。
「く! しまった!」
バン! バン!
すでに撃ったときには将は隠れた後であった。
「何やってるんだよ、ヘタクソが。奴隷ごときにてこずってんじゃねーよ!」
潤一郎はこのこう着状態にイラついていた。
「うっせーよ! 静かにしてろ!」
雅人は静かに集中していた・・・
将は必死にコルトトルーパーの装填をしていた。
く、くそ! でもでも、狩谷の奴は間違いなく死んだぞ! あと3人だ、僕をいじめたやつらへの復讐は!! ハハッ、僕の拳銃でどいつもこいつも皆殺しだ!
そう思っている将の額にゴリという音がした。見上げてみてみると、将は顔面蒼白になった。
「む・・・陸奥・・・」
「陸奥様・・・だろ? 奴隷クン」
目の前にはUZIをこちらに向けている陸奥 海が立っていたのだ。実は銃声を聞きつけた海は後ろの森を迂回して将の後ろに回りこんでいたのだ。
「どうやらヒデが死んだらしいな・・・」
海は冷酷に言い放つ。
「あ・・・ああ・・・あ」
「ち! あの役立たずが・・・ まあいいや、お前のその銃が貰えるから」
そしてニコリと笑った。
「喜んで死ねよ。このクズが!」
バラララララララララ!
その瞬間将の顔面は見事に削られた。そして秋文 将という存在は抹消されたのである・・・
【男子2番秋文 将 死亡】
そして目の前の奴隷の銃とデイパックを拾い、学校の二人に呼びかけた。
「お〜い、ゴミは始末したぞ!」
海の声に潤一郎は喜んだ。
「ヤッホゥ! さすがカイだぜ」
「だな」
潤一郎は悪知恵が働く狡猾な不良だったが、海の出現によりその存在にひれ伏すしかなかった。自分よりより狡猾で残忍な海に畏怖と尊敬の念を抱いていたからだ。
自分より上の存在に付き従うなんて当たり前だろ? それが潤一郎の思念であった。
「さってと、奴隷の死に様を拝んでやるぜ」
と潤一郎が学校を飛び出た。
「おい、ジュン・・・・」次の瞬間、
ドォン!!! ドォン!!!
という自分の持つ拳銃よりさらに大きな音が聞こえた。その時見たものは体の中心に奇妙な空洞ができた、潤一郎と言われた男の肉の塊だった・・・・
【男子8番椎名 潤一郎 死亡】
【残り・・・21名】