BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
40:最凶の魔女VS残虐天使
「・・・ん」
軽い気だるさを残しながらも目を覚ます一人の少女。
野宿していたのにもかかわらず、しっかりとした休息をとっていた豪胆かつ大胆な性格を持ち合わせているように見える能登 刹那(女子13番)は覚醒した。
三国 晶(女子18番)を逃した後、休息が必要と判断して住宅地で休むよりかは、森で休んだほうが安全だと思い、手ごろに開けているところで眠っていたのである。襲撃されては元も子もなかったが、刹那にとってはどうでもよかったのかもしれない。
彼女はいつでも死ぬ覚悟があったからだ。そして殺す覚悟ももちろんあった。最後まで生き残ればそれでいい。途中で死ぬのならそれもいい。
生を目指し死を覚悟した刹那は再びクラスメイトを殺すため、再び両足を地面につけた。
すると横のほうから小さな声で「キャハハハ♪」という声が聞こえた。
寒気を覚えた刹那は前にダイヴする。
バーン!! バーン!!
二発の銃声は刹那の居た場所を確実に捉えていた。なんとか回避した刹那はその銃声のした方向にイングラムの弾丸を発射した。
パラララララララ!!!
その人影はわずかにそのマシンガンの弾が当たる前に、木々に姿を隠した。
あれは・・転校生・・ね。
刹那は頭の中で冷静に判断した。そして冷静に目の前の獲物を仕留める方法を、イングラムをぶっ放しながら考えていた・・・
一方、刹那に奇襲をかけた浪瀬 真央(女子20番)はまったく寝ていなかった。
しかし体調は悪くなるどころか、体は完全に覚醒・興奮状態にあり、目は冴えわたり感覚が研ぎ澄まされていた。すでに1日で3人の人間を葬った彼女は、そのことにより脳内にアドレナリンが放出されまくっていたのかもしれない。
「ああ・・・ ここは天国ね、キャハハ♪ でもあんまり興奮するから気づかれちゃったかなぁ」
明らかに刹那の体を貫いたはずの弾丸は、実際はその先の木に命中していた。そしてその後はマシンガンの雨嵐。武器は圧倒的にこちらが不利だった。
「う〜〜ん。どうしよっかな〜」
銃撃音鳴り響く戦場に真央は似合わない声をあげた。
すると刹那はイングラムの銃撃をやめ、もう片方の武器・グレネードランチャーを使うことを決めた。
銃撃がやんだのを見て真央は刹那を覗き込んでみる。すると今度は違う武器でこちらを攻撃しようとしている。
あれって・・・なんかミサイル出すやつだっけ・・・じゃあやばいじゃーーん!!
真央はとっさに判断して先の木に移る。
ボシュゥ! そして真央が居た場所に着弾した。
ドカァァァァァァァン!!!!
しかし真央は驚いた様子もなく、
「キャハハハハハハハハ♪♪ おっもしろーーーい!」
と言って自分のタイタンとデリンジャーをありったけ刹那に撃ち込んだ。
バーン! バーン! パァン! バーン!
これには刹那も意表をつかれた形になった。とっさに木に逃げ込む。
幸い姿勢を崩した形になったので真央は正確な射撃ができていなかった。ゆえに刹那には一発も当たっていなかった。
そして真央の弾がなくなる。
「う〜ん。このままだと、こっちやっばいかも〜、キャハ♪」
お茶目に笑う真央をよそに今度は刹那のイングラムが容赦なく火を噴く。
パラララララララララ!!!
「ふぅ〜、あっぶないなぁ、もう!」
必死に隠れる真央。刹那の攻撃の中、真央は興奮しきっていたが、だんだん欲求が抑えられなくなっていた。
「あぁぁぁあっぁ! もうめんどくさいなぁ・・、はやく人ぉ殺したいのに・・・・ あ! そ〜だぁ♪」
そして欲求が生み出した強行策に真央は乗ることにした。
やがて刹那のイングラムの銃音が止む。
今度は弾切れだ。
とっさにグレネードランチャーとイングラムの再装填を行う。
だがその隙を狙い、真央がとんでもないスピードでダッシュしてきたのである!
「キャァハハハハハハハ♪♪♪」
明らかに自殺行為に近い突進。欲望のままに本当に真っ直ぐ突進してくる真央。顔はまるで頭のイカれた狂人のような様であった。だが無邪気に何も考えず真っ直ぐ進む子供のようにも見えた。
普通、こんな行動をすれば焦って、かえってやられるケースが多いのだが、刹那は違った。そんな嬌声をあげる真央に一瞥もくれず、冷静に装填を完了し、グレネードランチャーの銃口を真央に向けた。
真正面、近距離、回避不能ね!
そしてためらいもなく引き金を引いた。
だが引き金を引く瞬間、真央は本当に真っ直ぐにヘッドスライディングをした。
「キャッハハハアア♪」
ボシュゥ!!
その弾丸は真央のほんの数センチ上を通過した。そして着弾する前に真央は一回転して、すでにタイタンを構えた状態でいた。
「・・な!?」
この行動に驚いたのは紛れもなく刹那だ。
もし、イングラムを撃っていれば蜂の巣になっていたのは真央だろう。だが真央は実際自分の目の前で銃を構えている。グレネードランチャーを撃ってくることを予測してあの行動に出たとでもいうの!?
刹那の一瞬の疑問は次の音で掻き消された。
ドカァァァァァァァン!!! バーン!!
爆発音とともに銃音が響き渡る。タイタンの弾丸はグレネードランチャーを持っていた左肩を直撃した。
「ぐぅぅぅぅ!!」
バーン! バーン!
追撃の弾丸を放つも刹那はとっさに避け、反撃のイングラムの銃撃をお見舞いしてやった。
パララララララ!!
「キャハハハハ!!」
しかし肩の痛みでまともな射撃ができなくなっていた刹那の弾はあたらず、まんまと木への逃亡を逃がしてしまった。
刹那は傷口を見る。多少の出血はあるが致命傷ではないようだ。だが放っておけば、間違いなく失血で致命傷になりかねない。
そしてこの女・・・、予測不能の転校生、浪瀬 真央に対して負傷してから戦うべきではない。刹那は瞬時に判断した。
「・・・しかたないわね」
明らかに片腕が自由な状態でない以上、使えないグレネードランチャーを餌にして、ここは逃げる。
その結論をはじき出した刹那はグレネードランチャーと松浦 英理(女子16番)のものであったグレネードの予備弾が入った重量感のあるデイパックをその場に放棄した。イングラムの弾を撃ちながら刹那は逃亡していった。
殺人欲求に満たされていたさすがの真央も追撃を諦めた。マシンガン相手にこれ以上やる危険性ももちろん考慮していた。
「いいもんねぇ。あとでゆっくり狩ればいいし♪」
それより目の前の「おもちゃ」に興味を引かれた。まるで子供がおもちゃを欲しがる目によく似ている。そして刹那が残したグレネードランチャーを手に取る。
「すっごいよね〜、なんでもドカン〜〜!! って吹き飛ばすんだもん♪」
そして屈折のない笑みをこぼした。
「これで人を吹き飛ばしたら、どんな気持ちになれるんだろぉ〜〜。アァアァァァアアアアッッッ♪ 考えたらまた興奮してきたちゃったな、キャハ♪」
そしてこう口にした。
「早くこれで人を殺してみたいなぁ〜♪」
こうして最強の威力を誇るグレネードランチャーは浪瀬 真央に渡った。一番手渡してはいけない「最凶」の魔女の手に・・・・
【残り・・・16名】