BATTLE ROYALE
死線の先の終末(DEAD END FINALE


46:守り続けたいモノ

 一方、こちらは別の捜索者、遠山 慶司(男子10番)を探している、那節 健吾(男子11番)黛 風花(女子17番)は診療所の南の森・・・C−3ポイントの辺りにいた。
 実は二人は診療所を訪れ、夜ごろには住宅地についていた。そこで3つの反応を発見したのだが、突如1つ反応が消えたのだ(これは慶司大和 智一(男子18番)を殺害した時であったのだが)。
 これにより残った2つの反応はペアの殺戮者の危険性があった。なにより慶司は絶対人殺しをしないと思ったので、住宅地を後にしたのだ。
 そして今度は南に行くため最短ルートで森を突っ切ることにしたのだ。時間がたてば、死んでいる可能性が出てくるからだ。健吾風花の体力を考えて反対したが、風花は一刻も早く慶司を見つけたかったので断固として譲ろうとしなかった。その風花の強固な意志に負けて、健吾も了承した。そして現在は険しい天然の道を進んでいる。

「ハァ・・・・ハァ・・・」
 しかし風花も普通の女の子だ。健吾はサッカー部で優秀なプレイヤーで体力があったので、そこまで疲れてはいなかったが、風花は吹奏楽部所属の文化系の女子である。運動神経もお世辞でもあるとはいえなかった。
 それがこの過酷なプログラムで1日過ぎを過ごすのでさえ体力がいるのに、公民館を出発してからは歩き、その後睡眠を取った後は、また歩きっぱなしである。
 さすがに疲労はピークだった。

黛さん・・・・、少し休もう」
 健吾は疲労感漂う風花に優しく声を掛けた。
「ハァ・・・ハァ・・・、え?」
 疲れすぎてあまり聞こえていなかったのだろう、呆気にとられている風花
「やっぱりだね。疲労がたまっている。少し休んだ方がいいよ」
 そういう健吾風花は疲れながらも笑いかける。
「う・・ううん、いいの。心配してくれてありがとう。でも・・・私、早く遠山君に会いたいの・・・ もう二度と会えないなんて・・・嫌だから・・・」

 そう言われて健吾は胸の中がざわめいた。
 やっぱり・・・失恋のショックって大きいんだなぁ・・・
 一度は諦めたとはいえ、自分もやっぱり初恋だったのだ。そう簡単に割り切れるものでもなかった。
「駄目だよ、休憩も必要な行動だよ。いざとなったときに体力がなかったじゃすまされないんだよ?」
 健吾は自分の心中とは裏腹に風花を諭す。
「でも・・・」
「それに・・・、自分の好きな人と再会した時に、疲れきった顔だと嫌われるよ?」
 ちょっと冗談交じりの会話を展開すると、風花は笑ってしまった。
「フフフ・・・、わかった、那節君。・・・・心配してくれてありがとう」
 優しい微笑みを健吾に返す。その笑顔を見て、思わず見とれてしまった。
 そういえばあの時もこんな微笑を見たな・・・


 中学3年になって美津さん武士と付き合うことになって、自然と美津さんのグループと一緒にいることが多くなっていった。
 そんな帰り道、たまたま黛さんの家と同じ方向のスポーツショップに用があったので一緒に帰る途中だった。
「あ・・・!」
 見ると片足を怪我している猫がいた。とても歩きにくそうだった。
「大変! 治療しなくっちゃ・・・!」そういってすぐさま猫に駆け寄る。だが野良猫は人間不信。黛さんが治療しようとした腕を引っかいた。
「イタァ!!」
 俺はすぐに駆け寄った。
「大丈夫!? 黛さん! ・・・・この!」
「待って、那節君!」
 俺が猫をしかろうとしたのがわかったのか、黛さんは俺を止める。一度は引っかかれたにもかかわらず、さらに治療しようとする風花

「なんで・・・黛さん・・・」
 すると風花は悲しそうな顔で答える。
「だって・・・このコ、私のこの傷より痛いんだよ・・・ 可哀想だよ・・・」
 そういって猫に近づく黛さん。さらに警戒する猫。
「ふぅ・・・、しかたないな」
 そう言って俺は猫に近づき、体を押さえつける。
「ちょ・・・那節君!?」
「俺が抑えておくから今のうちに手当てしなよ」
 暴れる猫をなんとか押さえつける俺。さすが苦戦して俺も引っかかれたが・・・・なんとか手当てはできた。猫は俺が離すとあっという間にどこかにいってしまった。

「ふぅ・・・」
那節君・・・・ちょっと腕見せてね・・・」
「え?」
 一息ついている所に黛さんが俺の腕を取る。そして絆創膏などを貼り付けてくれた。
「ありがとう、黛さん
 すると黛さんは、
「お礼を言うのはこっちだよ。・・・・ありがと、那節君!」
 そう言うと優しく微笑んだ。

 その笑顔を見た瞬間、俺の体が熱くなるのを感じた。そしてその日以来、黛さんを見ると恥ずかしくて、嬉しい気分になっていった。初恋だと気づくのにも時間はかからなかった。
 この事実を知っているのはお兄ちゃんっ子の弟と親友の慶司武士だけだ。それ以外には恥ずかしすぎて誰にもいっていない。
 このプログラム中、間接的にフラれたが俺が黛さんを好きなのは揺ぎ無かった。

 だから・・・彼女の幸せを俺は望みたい。それだけなら許されるだろ?


 そんな想いに身をゆだねている健吾に、ふいに風花は声を掛けた。
那節君! ・・・一つ反応があるよ!?」
 そう聞いて、健吾の意識も再び現実に戻った。
「なんだって? どの方向?」
「南の方向よ・・・」
 そう言って自分たちが進むであろう方向を指差す風花
 健吾は迷った。声を掛けるか、掛けないべきか・・・ だがすぐ答えは出た。

「よし・・・、それじゃあ俺が一人でそいつに会ってくる。黛さんはここで待機していてくれ」
 そう言われて風花は驚いた。
「なんで!? 私も行くわ! だって・・・」
「いいか、聞いてくれ、黛さん
 健吾が真剣な表情で風花を見据える。
「もうクラスメイトも半分以下になっている。やる気になっている生徒も残念ながら俺たちのクラスにいるだろう。その中でも厄介なのは問答無用に攻撃を仕掛けてくる奴らだ。この先にいる奴がもしそうだった場合、俺は黛さんを守りながら戦える自信はないんだ・・・・ だから・・・」
 そう言って、風花の手を握る。
「もし、銃撃が聞こえたらとにかく逃げて欲しい。とにかく安全なところに避難するんだ」

 その言葉に風花はもちろん反論した。
「イヤ! 那節君を置いてだなんて・・・」
「頼む、聞き入れてくれ黛さん。俺は君が慶司に会う前に死ぬのが一番イヤなんだ!」
 強い光を目に宿す健吾風花もひるむ。
「なぁに、必ずしも敵とは限らないさ。慶司だったら都合がいいしね。とにかく、ここで待機していてくれ」
 そう優しく声を掛ける健吾風花も頷いた。

 そして風花はこのやり取りにデジャビュを感じた。
 これって・・・・そうだ、公民館の時と同じだ・・・!
 そして人物がいる方向に行こうとする健吾に、風花はこう言った。
那節君! ・・・必ず帰ってきてね!!」
 健吾は背中を見せながら、大きく腕を振り上げた。力強く拳を握って・・・

 そして数分後・・・、ひと時の静寂が風花の周りを包み込む・・・
 那節君・・・、大丈夫かな・・・・、この前も大丈夫だったから・・・、今回も・・・
 不安になりながも健吾の無事を楽観的に感じていた。さきほどのようにと・・・

 しかし思考する風花の思考を中断させる声が聞こえた。
黛さん、逃げろぉ!」
 遠くから健吾の叫び声が木霊する。
 ・・・・バララララ!! ・・・・バババババ!!
 そして・・・銃撃音が聞こえ始める。
「・・・那節君!!!」
 風花健吾の言ったことなどすでに忘れていた。そして交戦ポイント・・・、レーダーで二つの点が重なるところまですかさず走っていった・・・
 風花には見えていなかったが、その逆方向にも反応があったことを今の風花は気づくはずもなかった・・・

【残り・・・12名】
                           
                           


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