BATTLE
ROYALE
〜 死線の先の終末(DEAD END FINALE) 〜
47:最凶襲来、そして・・・
黛 風花(女子17番)をその場に残し、単身人がいるであろうポイントに向かう那節 健吾(男子11番)。その手にはVZ61スコーピオンがしっかり握られていた。
前の放送により生きているのは15人。そのうちで危険人物を考えていた。
まず、転校生3人は間違いなくやる気だ。うちのクラスでやばいのは陸奥 海(男子15番)と・・・鵜飼 守(男子3番)。
つまりやる気が確定気味の奴と当たるのは3分の1の確率だ。
それでも遠山 慶司(男子10番)や御手洗 武士(男子14番)に生きて会うためにはもう危険を避けてやっている場合ではなくなっていた。それほどプログラムも緊迫してきたのだ。
何より、自分の愛する人が探している人に早く会わせてやりたい・・・、そんな思いが健吾を焦らせていた。
そんなことを考えていると目の前に人影が見えた。健吾は呼びかけたい気持ちを抑えて一旦隠れて様子を見ることにした。
あれは・・・誰だ?
そんなことを思って見てみると・・・、この学校とは違う制服・・・、そして女性だということがわかった。
あれは・・・転校生の女!!
とっさに危険を感じて、静かにその場から立ち去ろうとした。だが、全感覚が覚醒している浪瀬 真央(女子20番)は逃げようとする健吾を第六感で感じ取り、目で捉えた。
美人の顔が笑顔に染まる。
「キャハハハハハ♪ みっけ!」
そしてさきほどの戦闘で奪ったUZIをこちらに向けた。風花の生存を本能から願う健吾はとっさに大声で叫んだ。
「黛さん、逃げろぉ!!!」
バラララララララララ!!!!
悲痛な叫びを遮るマシンガンの連射音。
天性の運動神経を誇る健吾はとっさに近くの木に隠れる。そして、反撃を誓った。
「慶司に会うまで黛さんは守るんだ・・・。そのためにこいつはここで・・・倒す!!」
そしてスコーピオンの引き金を引いた。
バババババババババ!!!!
絶え間ない銃撃が真央を狙う。
しかし、もうすでに2度もマシンガン相手に戦ってきた真央は、この銃との戦い方を吸収していた。健吾が発砲する直前に大樹の影に隠れていた。自分の木が削られていく感覚がしていく。
「う〜ん、3連続もマシンガン相手だなんてぇ〜、それはないんじゃないのかなぁ〜、キャハ♪」
言っていることとは裏腹に真央は確実に楽しんでいた。
いや、闘いを楽しんでいるのではない。これからもたらすであろう相手の死、自分の殺人という行為を楽しもうとしていたのである。目はすでに獲物を狩るハンターの輝きを宿していた。
「キャハハハハハ♪」
そう言って影から出た真央はUZIを撃ち始める。
バララララララ!!!!
自分に弾が当たることなどすでに恐れてはいなかった。真央は大の字に仁王立ちしてひたすら銃を撃ちまくる。その死を恐れぬ銃撃に健吾もとっさに身を隠す。
「クッ!」
どうやらさきほどの銃撃で腕を銃弾がかすったようだ。服が破れ、傷からは出血している。
傷の痛みに気を取られている健吾を尻目に、真央はUZIを撃ちながらグレネードランチャーを構えていた。
「キャハハハハハ♪ 花火ドッカーーーン!」
ボシュウ!!
軽い発射音とともに健吾のいる方向にグレネード弾が向かっていく!
ドカァァァァァァァン!!!!
「うわぁ!!」
幸いにも健吾のいる場所には着弾せず、健吾のいる場所とは少し距離があるところで爆発していた。
さすがに片手で撃ちながらでのグレネードの発射は真央にとっても反動があったようで、うまく照準が合わさっていなかったのである。
「う〜ん、さすがに無理かぁ、キャハハ♪」
そんなことをしているうちにUZIの弾が無くなる。
UZIの銃撃音が聞こえなくなるやいなや、健吾のスコーピオンが火を噴く。真央もグレネードランチャーをデイパックに入れ、横に逃げながら腰に納めてあったタイタンを抜き照準を合わせる。
「うおおおおおお!!」
「キャハハハハハ!!」
ババババババババ!!!! バーン! バーン! バーン!
無数の銃撃音と爆発音が響き渡る戦場に風花は近づこうとしていた。
「那節君・・・!」
風花はもう大切な人を失いたくなかった。
自分の親友たち・美津 亜希子(女子19番)たちが死んだと聞いた時、頭が真っ白になり、目の前が真っ暗になった。
そして亜希子たちと楽しく過ごした日々が思い出された。
いつも笑顔が素敵な玉野 笑美(女子10番)、元気いっぱいでグループのムードメーカーだった大塚 真澄(女子4番)、スポーツ万能でいつもその運動センスに憧れていた長川 千里(女子12番)、しっかりとした意見を言って強い意志をもっていた旭 千歳(女子1番)、寡黙だったけど時折見せる笑顔が素敵だった菊原 蘭(女子6番)、少しドジだけど惹きつけられる魅力を持っていた亜希子・・・
素晴らしい友達を一気に失ったことは風花にとってショックだった。そのショックを優しく受け止めてくれたのが健吾だった。その健吾に風花は今は亡き兄・謙信の面影を見出していた。
兄が大好きだった風花。
優しい謙信お兄ちゃん、なんでも相談に乗ってくれるお兄ちゃん、そして・・・私の大切で大事な存在・・・・それが謙信お兄ちゃん・・・
でも6年前のあの日・・・、謙信お兄ちゃんは物言わぬ姿で帰ってきた。
なぜ死んだのかは今も両親は話してくれない。何より風花自身も聞こうとはしなかったが。風花もそのことを振り返りたくなかったのも原因だった。しかし当時9歳だった風花は大切なモノを喪失するという悲しみを味わったのは確かである。
それから風花は何より傷つくこと、傷つけること、傷つけられることを人一倍嫌がった。何か失うことを恐れていたのかもしれない。
しかしプログラムはそんな幼いトラウマを再び思い出させた。
だからもう誰も失いたくなかった。そう、兄のような雰囲気を持つ健吾を・・・
「おにーちゃん、いってらっしゃ〜い♪」
幼い風花は兄が家を出る時、いつも手を振って見送っていた。そしてその兄はいつも拳を握って片手を振り上げるのである。そしてそのまま振り返らずに・・・
兄をみた最後の日もそうやって送り迎えしていた。
健吾がする仕草は兄に非常にそっくりだった。だからかもしれない、二度と会えない気がして、風花は何も考えず足が勝手に動いていた。
「那節君・・・、お兄ちゃん・・・、もう私を置いていかないで・・・!」
戦場にひと時の静寂が訪れる。
健吾は自分の傷の具合を確かめていた。
「ふぅ・・・、危なかったな」
その言葉通り、もう少し右だったら健吾の頭には弾丸が貫通していた。健吾の右頬には一筋の傷がはっきりと刻み込まれている。
「だが・・・、手ごたえはあったはず」
さきほどの攻撃で間違いなく真央の右肩にスコーピオンの弾が被弾した。おそらく致命傷にはならないだろうが、これで痛みで右腕は使えないはずだ。
この後、なんとか追い詰めれば・・・、そう思う健吾に聞きなれた言葉が響き渡る。
「う、動かないで!!」
この声は・・・黛さん!!
そう思い、声の方向を見てみるとモデルガンを構えている風花がいた。その先には真央がいる。
黛さん、なんで!!
内心は穏やかではなかったが、これで真央を追い詰める形になった。
これで武器が奪えれば・・・
そんなことを思っていたが、ふいに真央の顔が歪んだ。
笑っている・・・・だと!
イヤな予感がした健吾は自然と足が動いていた。
銃を向けられた真央は悠然と笑った。
「キャハハハハ♪ いい獲物み〜つけたぁ♪」
この人なんなの・・・? 銃を向けられて怖くないの?
当然の疑問だった。風花は得体の知れない真央に少し怯む。そしてその隙に真央はモデルガンの銃口から外れる。そして右腕のUZIの引き金に力を込めた。
「いっただきま〜す、キャハハ♪」
ああ・・・、私、今度こそ駄目!
風花は目を瞑った。
バラララララララ!!!!
UZIの軽い連射音が響き渡る・・・
そろそろ天国かな・・? でも痛くないよ・・・? それに私、誰かに抱きしめられている・・・?
明らかにおかしい現実に目を開けてみる風花。すると目の前には人影が一つ・・・
風花を抱きしめて優しい笑顔を見せるその人、まさしく健吾だった。
「な、那節君・・・!」
風花は嬉しかった。生きて会えたことを。
「ま、黛さん・・・、無事で本当に・・・・、ガハ!!」
何かを吐き出す健吾、風花は少し離れて見てみるとそれは・・・・血だった。
「キ、キャアアアアアアアアアア!!!」
おもわず叫び声をあげる風花。
「キャハ、まさか人を庇うなんてねぇ♪」
真央がそういうとその方向に振り返る健吾。そして風花は見た。蜂の巣のような健吾の背中を。
そう健吾はとっさに風花を庇ったのだ。サブマシンガンの貫通性の薄さと健吾の筋肉の強さが風花への貫通を防いでいた。しかし体内に弾丸を残す健吾の肉体的ダメージは致命的だった。
「く・・・、なんで・・・・右腕が・・・・」
健吾は不思議でならなかった。真央は負傷しているはずの右肩など気にしていない様子で右腕のUZIをこちらに向けている。
「ああ、これ? 真央ねぇ、痛みとか〜感じないんだよね♪ 無痛覚症ってやつぅ? それのおかげで欲望を感じない体になっちゃんだけどね〜、キャハハハ♪」
い、痛みを感じないだと・・・・なんて奴だ・・・・
「ば、バケモノめ・・・」
そう言って再び吐血をする健吾。
「那節君!」
それを見た風花はそばに駆け寄る。明らかに心配そうな顔をしている。
「ウフフフ、二人も一度に味わえるなんて〜、最高だわぁ♪ さっきは体を吹き飛ばしたから〜、今回は蜂の巣でいこぅっと。あぁ・・・・どんな快感が味わえるのかなぁ、キャハ♪」
もはや恍惚の表情を浮かべている真央。
健吾はなんとか風花だけでも助けたかった。
なんとか・・・隙がないのか・・・・!? 俺は・・・好きな人を守れず死ぬのかよ!
そして真央は二人の方向にUZIの銃口を合わせた。
「それでは、あらためて・・・・、いっただきま〜・・・・」
ドォォン!!!
遠くの方から銃音が聞こえた。そして大声でこう言っている。
「もう闘いはやめろぉ!!」
「こ・・・・この声・・・・」
「と、遠山君・・・?」
風花がとっさにつぶやいた。
慶司・・・・慶司なのか・・・・?
「なんなのよぉ、もう!」
真央は不機嫌そうにその方向を見つめている。
今だ! 今しかない!
健吾はかろうじて持っているスコーピオンの銃を持ち上げようとする。
だが力が入らない。
動け! 動けよ、俺の腕!! これが最後のチャンスなんだ!
健吾は自分の全身の力をかき集めるように念じた。
動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
「う、うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
そして健吾はスコーピオンの引き金をわずかに残っていた力で引き絞る。
バババババババ!!!!
うまくマシンガンを持ち上げることができなかったので真央には当たらず、真央の下の地面を弾いただけだったが真央はとっさに木の裏に隠れた。
「なぁに〜、まだ力が残っていたの〜!」
苛立つ真央の思考を再び銃声が遮る。
バァン!!!
さきほどの銃声とは違う音が聞こえてきた。
複数か、それとも複数銃器を所持しているか・・・
真央はさすがに複数相手は勘弁願いたかった。
「まぁいいかぁ〜♪ あのお兄さんはどうせ死ぬし〜。死に顔を想像するのも楽しいかな、キャハ♪」
そう言うと早急にその場を後にした。
な・・・なんとか・・・・守れた・・・のか?
真央が逃げていく姿を見て健吾はようやく安堵した。
「那節君、那節君!」
健吾の名前を必死に呼ぶ風花。五体満足な姿を見て健吾の力はすべて喪失した。
「ま・・・ゆずみさ・・・ん・・・よか・・・」
言葉を言い切る前に健吾は前のめりに倒れる。
「う、うそ・・・ なぶし・・くん・・・?」
背中からありえないほどの血があふれ出し、今にも命の灯火が消えそうな健吾を呆然と見つめる風花。再びトラウマが甦る。
「い、いやぁぁあぁあ! 那節君、那節君!! しっかりしてよぉ!!」
そしてそんな恐慌状態の風花の前に二人の人物が現れる。それは自分が会いたいと切望していた遠山 慶司と転校生の一人・本条 龍彦(男子20番)であった。
【残り・・・12名】