BATTLE ROYALE
死線の先の終末(DEAD END FINALE


5:転校生〜プログラム開始〜

 目の前に広がる惨劇・・・
 転がる頭、生気のない目、首から上をうしなった身体。
 悪い夢なら、すぐに覚めて欲しいところだったが、目の前の首と身体は間違いなく、この3年C組の元担任・糟谷のものである。
 そしてその生々しい首がこの悪夢が現実であることを物語っていた。
「ウワアアアアア!」
「キャアアアアアア!」

 目の前で人が死んだ・・・、死んだんだ! こんな悪夢があっていいのか!
 慶司は初めて見る死体への恐怖心よりも、このような理不尽な場にいるという怒りの感情の方が勝っていた。
 すさまじい目つきで、この行為の元凶の方へ目をやる。

 だが、元凶である現担任・は、まるでテレビのスイッチをいじったくらいの気持ちでいるのか、糟谷の首が吹き飛んだというのに、妙にご機嫌な状態だ。
 こいつは絶対に趣味が悪い奴だと思った。
「ハイ、ハイ! これでわかっただろ。諸君らがつけている首輪の威力が。みんなこれを教訓に、糟谷先生のようになりたくなかったら、ちゃんとルールに則ってプログラムに参加しような。そうそう、忘れるところだった。みんなに転校生の紹介をする。諸君、入りたまえ」
 はまるで糟谷の死体がないような雰囲気で、進行を進めているようだった。
 転校生だって? こんな状況でか。

 が教室外にいる『転校生』を呼んだ後、ほどなくして3人の男女が教室に入ってきた。
 この3人は非常に特徴のある、どこにでもいそうな中学生ではない外見をしていた。
 まず左の男はどうみても外人だ。身長は190センチを軽く超えており、金髪のロンゲ、さらに右目が青色だ。片目が黒だということはハーフか?
 真ん中の男は、短髪で体格がかなりしっかりしている。目つきもかなり鋭く、軍人というイメージがわくが、まだ幼さが残る容貌をしている。
 一番右の女は、美人系のショートヘアの女性だ。余裕にも笑みを浮かべている。

「え〜と、左から紹介していくぞ。男子19番になるデビット=清水君、男子20番の本条 龍彦君、女子20番の浪瀬 真央君だ。みんな、よろしくな〜」
 簡潔な説明で転校生の紹介をした
 この3人がこの時期になぜ、転校という手続きをとったのかは理解できなかった。だが只者ではないことだけは感じ取れた。
 どいつもこいつもやばそうな奴ばっかだな・・・と思った。
「それじゃ3人から新しいクラスメイトに一言、言ってもらおうかな」
 かなりふざけたことをがその口から吐き出す。
「では、デビット君から」

 に呼ばれて、外人風の男−デビットはゆっくりとした歩みで、糟谷の生首の前に立つ。そしてその長い足は、勢いよく糟谷の頭を踏みつけてこう言い放った。
「ミナサン、コンナ風ニナラナイヨウニ、正々堂々ト殺シアイマショウ!」
 デビットのその行為に、その場はシ〜ンっと静まり返った。デビットの、その死体をモノのように思う精神に寒気がしたからもしれない。
 くそ、ふざけやがって!

デビットはかなりやる気になってるな! では次、本条君
 デビットの行為にご機嫌になったは、短髪の男−本条に肩を当てた。
「・・・・・・別にない」
 こちらの転校生は、さきほどの金髪よりかは幾分機嫌が悪いのか、ぶっきら棒に答えた。

「そうか、まあいい。最後に浪瀬君。何かあるかい?」
 本条の冷たいあしらいにもあまり反応した様子を見せず、ショートヘアの美人系の女−浪瀬が問いかける。
「みなさん〜」
 すると浪瀬と呼ばれた女性は、その顔とはちょっとアンバランスな甘い声で言った。
「死ぬときはせ・い・ぜ・い、無様に泣いてくださいね〜、キャハ♪」
 ・・・・性格は最悪だな。顔は見かけによらないとはよく言ったものだ。全員が危険人物と感じた自己紹介だった。

「ハッハッハ、なかなか愉快な自己紹介だったな。では始める前にみんなに書いてもらうものがある。オイ、ペンと紙を配れ!」
 が合図すると、生徒全員に兵士からペンと紙が配られる。もちろん、さきほどの転校生にも手渡されている。
「よ〜し、全員持ったな。それでは次言う言葉を3回ずつ書けよ! 『私たちは殺し合いをします』 ・・・・・次に『やらなきゃやられる』だ!」

 に言われたことを素直に書きながら、俺は憤っていた。
 ふざけるなよ・・・・、俺はこんなクソゲームには乗らない。必ず脱出してやる! だがそのためには仲間を集めなきゃな・・・・
 そう思いながら、自分が信頼する健吾武士を見た。
 こいつらとあと数人と組めれば・・・・なんとかなる、そんな根拠のない確信が慶司の頭のなかでよぎっていた。

 全員の書いた紙を回収すると、は上機嫌で説明を続ける。
「よし、書いたな。それでは、質問はあるか? 答えれる範囲でなら受け付けるぞ」
 みんな、手を上げない状況だ。それはそうだ。これから死闘をするのだ。緊張が張り詰めて、の言うことにあまり耳を傾けていない者もいるのだ。
 だがそんな中、能登 刹那(女子13番)が手を上げた。
「おお、能登。なんだ?」
 能登さんは、まったく動じていない表情で質問をした。
「優勝すると、何か特別なことがあるのでしょうか?」

 その言葉をなんとも思わないような表情で言い放ったのである。
 そしてその言葉は、「能登はやる気だ」と思わせるのに十分だった。
能登ぉ、やる気になってるな! 先生も嬉しい限りだ。先生も言うのを忘れていたが、このプログラムを潜り抜けた優秀な者への特典だが、総統閣下のサイン色紙が渡される。これは非常に栄誉なことだぞ! それと副賞として、政府からの生涯の生活保障もされる。以上だ、わかったか〜」
 能登さんのやる気ある発言に、は上機嫌で説明した。能登はコクリ、と一回頷いた後、そのまま座ってしまった。
「それでは、他に質問はあるか〜? ないなら、さっそく出発してもらうぞ」

 するとは、なにやら兵士に合図を送った。すると兵士たちは、教室の外からなにやらたくさんあるバッグを持ってきた。
「このデイパックの中にさっき言った支給品が入っている。2分ごとにこれを持って、出発してもらう。あ、ちなみに順番は出席番号順に男女交互に出発してもらうからな〜。早い奴のほうが待ち伏せできて有利、という点もあり、公平ではないがな! まぁ、早いやつは得をするということだ、ハッハッハ!」
 さっきから、このオヤジは・・・笑い声が癪に障るんだよ!
 俺はに対する怒りをかみ殺しながらも、説明を聞いていた。

「ではさっそく出発してもらう! あ、そうそうこれも肝心なことだった。先生、最近物忘れが多いなぁ。この廃校があるエリアは最後の人が出発して20分後に禁止エリアになるからな。つまりプログラム開始から1時間後にはこのエリアは禁止エリアになるから気をつけろよ!」
 くそ、つまりは反抗防止ってとこかよ。しかし、出席番号順か。これならなんなく、健吾武士と合流できそうだぜ。
 少々の朗報に少し嬉しさがこみ上げてくる。俺は表情を引き締め、さっきの騒ぎでちょっと離れ気味になってしまった二人をチラリと見た。
「ではまず女子1番から行くぞ、旭 千歳!」
「ハ、ハイ!」
 女子からの出発なのか、旭さんから呼び始めた。

 こうして俺の人生の中で、史上最悪の殺人ゲームが幕を開けたのである。

【残り・・・40名】
                           


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