BATTLE ROYALE
〜 黒衣の太陽 〜


41

[桟橋 (石原絢子)]

「やっぱり、ここでやられたんか。酷い事しやがって・・・」結城真吾(男子22番)は桟橋でつぶやいた。
 真吾の目の前には3つの死体があった。それは夜中に「ハンター」によって爆殺された柴田誠(男子11番)、高橋聡一(男子12番)そして三浦信彦(男子19番)の3人であった。今朝6時にあった放送で、この3人の死は知っていた。そして永井達也(男子14番)が持っていた簡易レーダー『ソロモン』でこの場所にいくつかの死体があることも知っていた。真吾は桟橋でワイヤーを含めた道具を手に入れるついでにこの場所に来たのだった。
 3人の遺体はもう誰が誰なのか判らなかった。爆発により顔はぐちゃぐちゃになり、さらにそれを海鳥たちがついばんだため判別がつかなくなっていた。かろうじて体型で見分けがつく程度だ。
 そしてその遺体の周りにはどす黒いシミが広がっていた。3人の血であった。桟橋の横端いっぱいに広がったそれはコンクリートに染み込み、また日の光で乾いてどこか非現実的な色彩をかもし出していた。
「あいつの気持ちは分るけど、こんな事をして若松さんが喜ぶとでも思ってんのか?」
 真吾は、すでにこのゲームから退場したクラスメイトを見下ろしながら言った。首を吹き飛ばされた福田拓史(男子16番)のようにせめてシーツでもかけてやりたかったが、ここにはそんなものは無かったし、真吾には余り時間も無かった。
 3人に手をあわせ「スマンが、これぐらいしか俺には出来ない。勘弁しとけな」そう言って立ち上がった。真吾が立ち去ろうとしたとき、視界の端で光るものが目に付いた。ゆっくりと近づくと、それは三浦信彦(男子19番)に支給されていたスペズナズナイフであった。
 真吾はそれを手に取るともう一度遺体の方に手をあわせ
「お前らの誰かに支給されたんやな・・・。悪いけどもらっていくぞ。お前らにはもう使えへんし、罪滅ぼしのために若松さんに使ってもらうようにするな」そう言ってクナイの入っている皮の袋にいれた。
 海の方に目をやると黒い箱のようなものが浮いている。朝宮の言っていた哨戒艇だろう。恐らく首輪の信号をキャッチして真吾がここから逃げ出そうとした場合に備えているのだろう。
「ご苦労なこった…」そうつぶやくと真吾は桟橋で手に入れた品物をまとめ、漁業組合の事務所へ戻ろうとした。その時、銃声が4発立て続けにした。
 真吾はとっさに伏せていた。狙撃を警戒したのだ。だが、そんな事があるはずが無かった。支給されたバッグに入るサイズの狙撃ライフルは現在無いはずだし、万が一あったとしても4発も連射をしていては正確に当らないからだ。
 真吾は一気に陸に向かって走った。真吾の耳は銃声の方向を聞きつけていたのだ。
それは、若松早智子(女子22番)が身を隠している漁業組合の事務所のほうから聞こえてきたのであった。


【残り 27人】


   次のページ   前のページ   名簿一覧   表紙