しすの暗黒理力
〜 あとがきと解説 〜
第三部 中盤戦
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この話を書くに当って毒蛇に関して少し調べてみたのですが、私自身かなり間違った知識を信じていた事に驚きました。
雪菜が行った治療はごく一般的なものにしていますが、救急車が呼べる状態であれば迷わずそうしたほうが良いようです。
雪菜も冬哉も尻に火がついた状態にしてみました。果たして戦う事が出来るのでしょうか?
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鄭華瑛という少女の出自等は後の話で明らかになりますが、名前を見て解かるように在日(在東亜?)三世です。書いていくうちに結構男前な女性になってしまったのでこの路線で行きます。(笑)
そして彼女は北村雅雄と同じ様に誰かを探しています。いきなりこの二人を出会わせても良かったのですが、そうなると戦闘が必然的に起こると思い黒田亜季に緩衝材になってもらいました。再登場の亜季ですが、コテージから武器は持ち出せなかったのです。
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中盤戦の鍵を握る少女、若松早智子です。彼女はある事件がきっかけでタロット占いに目覚めます。
お話が進むにつれて彼女が中心になっていきます。今後の話の展開は彼女のカードだけが知っています。
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真吾のしんは神出鬼没のしんですね。何処にでも現れます。(笑)
早智子を気遣う優しさとデリンジャーの使い方を教える恐ろしさとのギャップを描きたかったのですが、ただの武器講座になってしまったような気がします。(汗)
恐ろしさといえば、真吾の施した弾丸加工です。よい子は絶対にマネをしないで下さい。
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原作の月岡のようにボスを信じていなかった堀ですが、体の割に肝は小さいという設定にしたので思い切って狂ってもらいました。もう少し使い勝手のよいキャラクターにしてもよかったのですが、物語の進行上惨めな役回りになっています。
彼よりも再登場した二人(特に国平)の方が物語を盛り上げてくれます。
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小野田進が歩んできた道程の説明ですがこうしてみると彼もかなりの修羅場をくぐってきています。
『運も実力のうち』なのですから、このまま行けば彼にも優勝の目があります。『運の尽き』が無ければです。
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当初、この話は無かったのです。オフの友人に私の作品を読んでもらった所「結城真吾がハンターだ!」と、しつこくメールを送ってくるので否定のためにこの場面を入れました。
ついでにスペズナズナイフも真吾の手に入るようにしました。刃物にやたらと縁のある真吾です。
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冒頭の言葉は気に入っているフレーズなのですが、最もふさわしくない使い方をしてみました。
デリンジャーは携帯型拳銃の代表のように言われていますが、並みの筋力では扱えません。早智子のような状態であれば、小野田に抱きつかれた時に銃口を押し付ければ確実に殺す事が出来ます。
銃の引鉄というのはいろんな意味で「重い」ものだという事を表したかったのです。
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一輝ほどの気性であれば、銃を向けられた時点で小野田を撲殺していたでしょう。
理恵子がいた事と早智子の名前が思い出せない事で命拾いをしています。
このエピソードも私の体験談で、半年以上一緒にいたクラスメイトの名前が出てこなかったことがあったのです。
この調子で行けば、同窓会にはすべての友人の名前を忘れている事でしょう。(笑)
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例え普段は優秀な生徒でも生命力が落ちると、運までもが逃げていきます。
知佳は言いたい事もはっきり言い、もちろん勉強もスポーツもこなすという大変理想的な生徒ですが、ダークヒロインの悪知恵の方が一枚上手でした。
スパスにスラッグ弾まで支給したのは間違いかもしれません。潤子に体力があれば原作の桐山以上の虐殺者になる事でしょう。
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ソロモンの最後の機能が登場です。これを出すのは躊躇われたのですが、逃げ回る方法を一つ残しておきたかったので採用しました。
一輝と俊介の合流ですが、真吾のおかげで疑心暗鬼を免れました。中学生の男の友情とはこんな感じでしょうか? 後半部は気に入っております。
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俊介とは対照的に自分がケガを引き受けている冬哉です。目的地まであとわずかという所なのに、またしてもトラブルに遭遇です。
この話を読まれたおそらく大半の方が「何故?」と思われた事でしょう。その答えは47話にあります。
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このお話も当初からのプロットにありました。
どちらを記憶喪失にするか迷っていたのですが、華瑛との出会いが伏線になっているので雅雄の方にしました。
記憶喪失について、こういうことが起こるのかどうか分からないので多分に作者の都合による設定となっております。(笑)
武術の心得のあるもの同士が戦うと力量の差が出るのでしょうが、手の内が分かっていると消耗戦は避けるでしょう。雅雄は記憶が無いので懸かっていってしまいました。雅雄の最期に関しましては、サブタイトルとも相まってこれ以上の演出は思いつきませんでした。もう少し出番が早ければ彼の活躍が観られたかもしれません。
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女性版小野田進とも言うべき西村観月の登場です。彼女の発言により遠藤章次と遠藤絹子がいとこという事が判明致します。
裏の設定ですが、章次と香織の仲を取り持ったのが絹子なのです。
緊迫した場面で飛び出した雪菜ですが、彼女の聞いた銃声は42話で小野田がドアを壊すために撃ったものです。
この音は41話で真吾、43話で一輝と理恵子、44話で知佳と潤子、45話で俊介と尚子がそれぞれの場所で聞いています。
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雪菜の優しさは彼女自身の甘さにも繋がります。それを利用する者が出てもおかしくはないでしょう。
雪菜はこれからも友人を信じられるのでしょうか?
絹子は雪菜と同じ様に友人を信じようとしましたが不運が重なりました。
皮肉な事に知力・体力・優しさ等人間的にトップクラスの絹子が、このプログラム中で初めての自殺者となりました。
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原作にもあった、プログラム担当官への上司からの電話です。
優勝者の予想は電話の途中ではなく事前に出しました。沼田は小遣いを本命に、陣はデータを元に対抗に大金を賭けています。
みさきは誰に賭けさせようか迷ったのですが、真吾達では物語の整合性が無くなるので敢えて早智子にしました。
女子の生き残りの中では彼女のオッズは高そうですね。
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実験的に一つのシーンを三人の視点で書いてみました。
内容は52話への序章といった感じです。
表現というものは難しいという事を改めて思い知りました。(笑)
「三人の女」というタイトルの歌を見つけた時にはぴったりすぎて笑ってしまいました。
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華瑛と美鶴の関係がこの回で明らかになります。と、いっても伏線は張っていたのであまり驚かれなかったかもしれませんね。華瑛は幼少の頃祖父に育てられたため、興奮するとたどたどしい男言葉になってしまうのです。
この回を書きながら美鶴の言っている事もあながち間違ってはいないのではないかと思ってしまいました。
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真吾と華瑛の邂逅です。少しのボタンの架け違いが年が経つごとに大きな違いへとなってしまいました。人種差別の件も掘り下げて書きたかったのですが、表現力の無い私にはこれが限界でした。
拉致される前に俊介の頭をよぎった真吾の秘密も明らかにされます。皆さんはこのような状況になったときに、どのように行動をされますか?
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中盤戦後半の鍵を握る早智子と冬哉&雪菜コンビの邂逅です。
早智子のタロット占い、冬哉のマジックネタが再び登場いたします。
なぜ、冬哉と雪菜が遠藤章次に追われているのか。ちょっとした謎を残し、次の話へと続きます。
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早智子の悲しい過去が明らかになりました。
38話で結城真吾、42話で小野田進、45話で伊達俊介と藤田一輝がこの件を知っているという描写を入れています。
堀がダムに侵入してくるまでの恐怖と、過去の出来事のフラッシュバック。早智子でなくても耐えがたいものだと思います。
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今まで1度しか名前の上がらなかった『ハンター』梶原幸太の出番です。
名前が挙がっていない割には、大活躍をしており今のところ殺害数ナンバー1のタイトルホルダーなのです。
さすがに安田順を見つけることは出来なかったようですが・・・。
彼の歪んだ想い(復讐心)は皆さんの心にどのように届いたでしょうか?
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前話に続いて幸太のお話です。
早智子の事件についての後日檀も冬哉の口から明らかになります。一輝の好感度がまたアップですね。(笑)
二人の最期、特に早智子については迷ったのですが、あのような結末を選択いたしました。
「どうして幸太は・・・」と思う方もいらっしゃるでしょうが、溺れるというのはとても苦しいのです。(経験者)
幸太は逆に自分の愛する人を手にかけた贖罪として、最期は自ら苦しむ事を選んだというようにいたしました。
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遠藤章次の歪んでしまった気持ちは、先の梶原幸太とはまた違ったものです。
自分の愛する人のためとはいえ、手段と目的が逆転してしまいます。
反対に、自分の親友が愛している人を守るために冬哉は戦います。
冬哉がみせた消失マジックの種明かしは次のお話で。
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前話で冬哉が見せたマジックの解説です。
いくらマジシャンとはいえ、鉛の弾には魔法も通用しません。
先の戦いで唯一の誤算が、最後に章次が銃を乱射した事でした。
あれさえなければ、冬哉はこの後も活躍をしてくれたことでしょう。
そしてついに雪菜と真吾が出会います。
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冬哉の最期です。
個人的に好きなキャラクターだったのですが、思い入れが強い分、中途半端な描写しか出来なくて歯がゆく思っております。
いつか彼の活躍する外伝的なものを書きたいものです。
彼の死は、他の生き残っているクラスメイトに少なからず影響を与えます。