BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第2話
「う…うう…」
近くを通る電車のガード下。そこで十人もの男が倒れ、呻いていた。
「ったく、10対6でも勝てねえのかよ…それでもお前ら高校生かよ」
三木元太(男子18番)は乱れたブレザーの襟を直しながら、呟いていた。
「全くだな、俺らは素手でやってるんだぞ?」
派手な金髪に左耳に付けている三つのピアスがトレードマークの城戸比呂斗(男子6番)がそう言いながら倒れている高校生の一人を足蹴にしている。
「それにナイフなんか使いやがって…馬鹿じゃねえの?」
仲間の一人、津脇邦幸(男子13番)が相手の一人が持っていたらしいバタフライナイフを近くの用水路に蹴り落としながら呟いた。
「コンタの言う通りだな」
口元の血を拭いながら、今や特徴である後ろで紐で括った金髪が派手に乱れた姫野勇樹(男子15番)が言った(ちなみに「コンタ」は邦幸のあだ名だ。キツネみたいな細目なのでそう呼ばれている)。
「ふう…」
その横では、立川大成(男子12番)がしゃがみ込んで、息をついている。
そこで突然平田義教(男子16番)が叫んだ。
「みんなやばいよ! 学校遅刻しちゃうよ!」
「げえっ!」
思わず六人は一斉に走り出した。そして其処には十人の男たちがほったらかしにされていた。
六人は自分たちの学校、上祭中学校へと走っていた。
―みんな、強いよな…。
元太は、走りながら思っていた。
元太を含むこの六人は、上祭中学校のある地域周辺では名の知れ渡った不良グループだった。
特に六人は、地元では、あまり行動せず、都会に出ては、そこの不良グループを潰していた。
それもこれも、彼らがたまたま県庁のある岡山市まではるばる遊びに出かけたときから始まる。
彼らが其処で見たものは、弱い者を虐げているちょっと悪ぶっている奴ら(俗にチーマーと言われる集団だったが、元太たちには分からなかった)だった。
元太たちにとっては、それは始めて見る光景だったと共に、許せないものだった。
―強くも無いのに弱いものをいたぶって強くなった気でいる。そういう奴らは潰す!
そして六人はそんな奴らをその場でボコボコにぶちのめした。それ以来、元太たちはそういう現場を見るとついついぶちのめしてしまうようになっていた。そしてそれから、そんな奴らに恨まれ、よく喧嘩を売られるようになった。
今回も学校に旅行の打ち合わせに行く途中、わざわざここまで来た(よくやるよ、と元太は思った)岡山市の不良たちに喧嘩を売られたのだ。
―ホントは別に行かなくても良いんだけどな、やっぱアニキの言うことだからな…。
もともと元太は(他の五人はどうか知らないが)、旅行の打ち合わせになど出ようとは思っていなかった。
しかし、担任の横川将晴の言うことだからと、行くことにしたのだ。
横川は、クラスの何人かからは「アニキ」と呼ばれるほどで、先生には到底思えないほどの兄貴肌で、関西弁が特徴的な、生徒からも信頼されている先生だ。
―遅れたらアニキ、何て言うかな…。
遅刻ギリギリの8時28分。六人は学校の校門をくぐり、下駄箱へ向かった。
「おい」
突然元太たちは背後から話しかけられた。
「え?」
振り返ると、腕組みをした横川将晴が立っていた。
「お前ら、遅刻はすんなってあれほど言ったやろーが!」
「す、すいません! ちょっと喧嘩を売られまして…」
比呂斗が言うと、横川は突然ニカッと笑うと、言った。
「あー、まーた絡まれたんか? ええええ、アホウ相手やったら思う存分ぶちのめしゃええ!」
―やっぱり。アニキならそう言うと思った。
元太は思った。
そして六人は横川と一緒に教室に入った。
<残り42人>