BATTLE ROYALE
最後の聖戦


第22話

―俺は、親父が大嫌いだ。
―親父は俺に余計な事ばかりしてきた。
―知りたくも無い知識ばかりを詰め込まれ、学校にも最低限しか通わせてもらえず、友達も出来なかった。
―挙句の果てには「お前に俺の跡を継いでほしい」だ!? ふざけんな。
―俺は普通に生きていたかったんだ。特にこれといった事が無くても、ささやかな幸せが欲しかったんだ。
―それを親父や、周りの大人はぶち壊しやがった。
―そして、五年前のあの日。
―親父は死んだ。それも、メチャクチャ身勝手な死に方で。
―俺を「あの現場」に連れて行きやがった。おかげで俺は隠れて生きていく羽目になった。
―親父よぉ。俺はお前の死体がお前の仲間に密かに引き取られて来た時、俺は本気でキレてたんだぜ?
―だから俺は、お前の死体を包丁で切り刻んでやったんだ。俺の味わった苦しみは、お前に返してやろうと思ったからさ。
―でも、こんなんじゃ晴れないんだ。俺の怒りは。
―こうなったら、俺はどんな手を使ってでも「普通の幸せ」を手に入れるからな。

 B−1の廃墟のホール。そこで
宇崎義彦(男子2番)狩野貴仁(男子5番)和歌山啓一(男子21番)、そして城戸比呂斗(男子6番)津脇邦幸(男子13番)菊池麻琴(女子5番)は、脱出のための話し合いをもっていた。
 まず、比呂斗が言った。
「なぁ宇崎。お前は脱出が出来るはずだ、と言っていたよな? どうやるんだ?」
「そうだ、それを教えてくれ」
 邦幸も合わせて言った。
「…まず、農協に向かい、肥料を持ってくるんだ」
「肥料?」
 貴仁が言った。
「ああ。硝酸アンモニウムという代物だ。これとガソリンで、爆弾が出来るはずなんだ」
「でも…それをどうやって爆発させるの? それに、あの本部はもう禁止エリアになってるはずでしょ? 一体どうやって?」
 麻琴が訊く。
「起爆の方法はある。これだ」
 そう言って、義彦は小さな金属の棒状のものを取り出した。
「こ、これは…?」
「起爆装置だ。これを爆弾に取り付ける」
「なるほど…。ところで、さ…その作戦は、他の生徒も脱出できるのか?」
 啓一が尋ねてきた。
「…作戦が成功したときに生きている奴はな。少なくとも、全員は難しいだろう」
「…そうか」
 啓一はそれっきり、黙ってしまった。おそらく、まだここに来ていない
国吉賢太(男子7番)白鳥浩介(男子9番)のことを心配しているのだろう。
 そしてしばらくして、再び啓一が話し始めた。
「なあ…義彦…賢太と浩介は…一緒に脱出させてくれるよな?」
 義彦は、自分が今思っていることを、言った。
「それは別に構わない。ただ…浩介はともかく、賢太はこの作戦に乗らないかもしれない」
「な、なんでそんなこと言うんだよ? 助かるんだったら賢太も乗るって!」
「そうだよ、義彦!」
 貴仁も同調して言った。
「…いいか、二人とも。お前は賢太の心を知らないから、そんなことが言えるんだ。さっきは言わなかったが、俺は確信していることがあるんだ」
「な、何だよ、それ…」
「賢太は、まず間違いなくゲームに乗っている」
「な、何だって!? …なんで賢太がゲームに乗るんだよ! そんなことある訳…」
 貴仁の言葉を遮って、義彦は言った。
「これ以上は話せない。ただこれだけは言っておく。賢太は間違いなくゲームに乗っている。そして、俺はそれを止めるつもりなんか毛頭ない」
「な…ふざけんな! 何なんだよそれ! 何で止める気が無いんだよ!」
 啓一が怒鳴った。義彦はそれに対して言い返した。
「いいか! 今のお前らには賢太の心は理解できない! 俺は理解できる、だからこそ止めないんだ! 分かったな! …一回目の放送の後、農協に向かうから、それまで休んどけよ」
 義彦は、ホールを飛び出した。久しぶりに、日の光に当たった気がした。
 義彦はしゃがみこんだ。そして、呟いた。
「賢太…お前はやっぱり、ゲームに乗ったんだよな…? お前、生きてやることあるもんな…。復讐しなきゃいけないんだもんな…?」

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