BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
中盤戦
Now33students and2persons remaining.
第24話
―午後5時45分…。
江田恵子(女子3番)は、左腕につけた腕時計で時間を確認していた。
横では仲間となった谷川つかさ(女子10番)、このゲームに巻き込まれる前から一緒にいた、保坂小雪(女子16番)、三谷春子(女子17番)が富森杏樹(女子12番)に色々話しかけていた。
日はもう完全に沈み、辺りは真っ暗になり、D−7の森の中まで移動したのは失敗だったかもしれない、と恵子は感じていた。
―死ぬのは嫌だ。
恵子は抱きかかえていた支給武器の猟銃(説明書に書かれていなかったので、名称は分からなかった)をよりいっそう強く抱きかかえた。
こうしても助かるわけではないことは分かっていたが、不安だったのだ。そして、何か抱きかかえると、落ち着くのだ。
恵子は他の四人のほうを見やった。
どうやら、相変わらず杏樹の記憶は戻らないらしい。
―何よ。それじゃ意味ないじゃない。
恵子は愚痴っていた。
恵子は、別に杏樹を助けたいなんて思ったりはしなかった。現に、川を流れる杏樹をつかさが見つけたときも、情報を仕入れたいと思っただけだ。
だが、こうして記憶が無いのでは、意味が無い。
―いっそ殺してしまおうか。谷川や富森や、小雪や春子も一緒に。
恵子はそう思って猟銃を見つめた。
もともと、恵子が小雪や春子と合流したのは、武器をかき集めてから殺してやろう、と思っていたからだ。
そう、恵子もまた、この殺し合いに乗っていたのだ。
だが、同じく仲間の山原加奈子(女子20番)は仲間にしないことにした。
小雪と春子には、「このあとやる気の人が出てきたらマズイじゃない」と言っていたが、本音は、加奈子がいると計画が台無しになるかもしれないからだった。
―あいつがいたら、とことんあいつに依存してる小雪や、父親が加奈子の父親の部下だっていう春子が加奈子に味方しちゃうかもしれないし…。
そう考えて恵子は、加奈子は仲間にしないことに決めたのだった(その加奈子は、板橋浩美(女子2番)の手にかかって死んだが、当然恵子は知らなかった)。
しかし、計画は上手くはいっていなかった。
まず、小雪と春子の武器が全く役に立たない代物だったこと。
さらに特に親しくも無いつかさが仲間になったこと。
「信用できない」と恵子は何とか追い払おうとしたが、結局小雪と春子が仲間にしてしまった。
おまけに川上から流れてきた杏樹をつかさが助けてしまった。
特に親しくも無い二人がいては、何かしただけで信用されなくなり、計画が台無しになってしまうかもしれない。
―ああ、何とかならないかなぁ…。
「そろそろ、放送だね…」
春子が呟いた。
「時々銃声がしてたみたいだけど…やっぱり誰か死んだのかな…?」
つかさもそう呟く。
「加奈子ちゃん…大丈夫かなぁ…会えるといいな…加奈子ちゃんがいなきゃ…怖いよ…」
小雪がボソボソと言っている。
―ああ。やっぱり小雪はいつも通りだ。
恵子は少し苛立った。
小雪の山原加奈子への依存ぶりは凄いものだった。何かあればすぐ加奈子に相談する。物事を自分で考えることもせず、すぐに加奈子に頼る。
まあ尤も、加奈子にも困難に対する対応能力が無さ過ぎたから、大概恵子や春子が何とかしてきたのだけれど。
そしてそうやって加奈子の無能ぶりが分かっていても、小雪は加奈子を頼り続けて、今に至っている。
―要するに、自主性が無くて、依存心が強いのよね。
恵子はいつも、小雪を呆れた目で見ていた。そして、見ているとイライラした。
だが、春子とは仲が良かったので、このグループを離れる気にはならなかったのだ。
「あの…山原さんって、どんな人なんですか?」
記憶を失くしているせいで加奈子のことを知らない杏樹が小雪に尋ねた。
「えっ、加奈子ちゃんはね、頼りがいがあって、凄い人なのよ?」
小雪は、まるで自慢するかのように答えた。
―何言ってんの!? あの女のどこが頼りがいがあるって言うの? あんな無能の、威張るしか出来ない女の? 何処が凄いのか百字以上で説明してみなさいよ! ああ! もうイライラして何が言いたいんだか分かんなくなってくる!
恵子はますます苛立ちを募らせていった。
だが、表情には出さないように努めた。
―…気分を変えよう…。
恵子は気分を変えるために左腕の腕時計をチラリと見た。
―午後5時58分。そろそろ放送ね…。
「ねぇ、そろそろ放送なんじゃない? 準備した方がいいと思うよ?」
恵子は苛立ちをひたすら隠しながら、四人に向かって言った。
「あっ、そうか…」
そして春子が地図を取り出した(五人で行動するんだから、ということで、放送で得た情報を書き留めるのは春子の役目になっていた)。
それからしばらくして…。
「はい、皆さんこんばんは! 担任の尾賀野飽人です!」
聞くだけでますますイライラしそうな、尾賀野の声がした。
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