BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第25話
江田恵子(女子3番)たちが放送を聞こうとしていた頃、B−1の廃墟でも、宇崎義彦(男子2番)たちのグループが放送を聞こうとしていた。
「午後6時になりました! もう真っ暗だから気をつけるんだぞ? じゃあ、まずはこれまでに死んだクラスメイトの皆を教えます」
「皆…殺しあったりしてないよな…?」
狩野貴仁(男子5番)が不安そうに呟いた。
貴仁はもともとそんなに気が強くない。不安になるのは当然だろう。
義彦はそう思いながら、放送の続きを聞くことにした。
「死んだ順番に発表します。まず、男子3番、太田裕一君。男子19番、焼津洋次君。女子1番、天野洋子さん。男子4番、小川英道君。女子19番、元野一美さん。女子14番、貫井百合絵さん。女子20番、山原加奈子さん。男子16番、平田義教君。以上八名。出発前に死んだ三木元太君も合わせて九名です。いいペースですよ、先生嬉しいです」
―…ふう…、賢太も浩介も、無事のようだ…。
義彦は、友人の国吉賢太(男子7番)、白鳥浩介(男子9番)の名前が呼ばれなかったことに、少しだけほっとした。
―しかし、安心は出来ない。浩介は分からないが、賢太は間違いなくやる気だ。そして今呼ばれた中の誰かを殺しているかもしれない…。
「義教が…死んだ…」
「嘘だろ…」
横では、城戸比呂斗(男子6番)と津脇邦幸(男子13番)が呆然としていた。
仕方が無い。放送でたった今、仲間の平田義教(男子16番)の名前が呼ばれたのだから。
さらに、比呂斗の幼馴染の菊池麻琴(女子5番)も、親友の一人、元野一美(女子19番)の名前が呼ばれたためか、いつもクールにすましている彼女らしくなく、目に涙を浮かべていた。
―人の命が、また奪われていく…。
義彦は、そう思うだけで頭が痛くなった。
―こうなったら、何としてでも、脱出してやる。俺の求めるものを手に入れてやる。
まだ、尾賀野の放送は続いていた。
「じゃあ、次に禁止エリアの発表をします。皆地図を出して、チェックするんだぞ。禁止エリアに引っ掛かって死んだりしないようにな」
そうだ、これは重要だ。
義彦は思った。
これを確認しておかなければ、今回の目的地である農協まで辿り着くことが出来なくなる恐れもある。
―クラスメイトが死んだのは確かに辛いが…今はこれに集中しよう。
義彦はすぐに地図と、付属してあった赤ペンを用意した。
「禁止エリアの発表は、私、副担任の彬合晴知が行います」
声が、彬合のものに変わった。
「まずは、7時から、J−4」
これは港のあるエリアだ。おそらく尾賀野たちは、船での脱出などを絶対にさせまいとしているのだろう。
「次に、9時から、B−10」
これは会場の東端(まあ島じゃないので東端はいくらでもあるが)の、本部の隣のエリアだ。
「最後に、11時から、I−9」
これはかなり会場の端の海岸沿いのエリアだ。
「以上です。それではまた、次の放送で」
放送はそこで終了した。
―よし。
義彦は自分のデイパックをまとめ始めた、全員に告げた。
「今から農協に向かう。早く準備をしてくれ」
「えっ、もう行くのか!?」
和歌山啓一(男子21番)は義彦に尋ねた。
「本当なら放送前に出ても良かったが、出てから何かのトラブルに巻き込まれたりしたら、放送が聞けない。だから今から行くんだ」
「まだ心が落ち着かねぇのに行けるかよ」
「そうだ、義教が死んだんだぞ!?」
比呂斗がそう呟いた。
「…お前ら、三木に死ぬなって言われたんじゃなかったか?」
義彦は、あえて出発前に死んだ三木元太(男子18番)の名前を出した。
「なら、全員今からでも生き残れるように全力を尽くすのが道理じゃないか? 仲間が死んでグダグダ未練たらしくするぐらいなら脱出を考えるのはやめるべきだ」
「何だと!?」
比呂斗が義彦に掴みかかった。
「じゃあ、お前は仲間が死ぬのを気に病まないって言うのかよ! ふざけるな、この冷血人間が!」
「いいか、ここでいつまでもグズグズしているとだな、脱出なんか夢のまた夢になっちまうんだよ! 少なくとも、俺は今のお前らより苦しんだことがあるんだ!」
「…!」
すると、比呂斗は黙り込んでしまった。
それを見ていた邦幸も俯いていた。
「それじゃあ、行こう」
義彦がそう言って外に出ようとすると、他のメンバーも、そして比呂斗と邦幸も、ついてきた。
「農協のあるG−6まで、早く行かなければ…」
義彦はそう、呟いた。
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