BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第33話
「はい、男子10番瀬古雅史君死亡っと…」
生徒たちの出発地点となったB−9にある廃校に設置されたモニタールーム。
そこで尾賀野飽人(岡山県大佐町立上祭中学校3年プログラム担当教官)は、ソファーに座ってたった今死んだ瀬古雅史(男子10番)の番号を表す表示がモニターから消えたのを見て呟いた。
「瀬古を倒したのは横井翔のようです」
モニター係の一人だった兵士、亜幌が言った。
「なるほどー、彼も結構頑張ってるようだなぁ、彬合」
「ああ、これで二人。牧原玲の次、そして板橋浩美と同数だ」
横に座っていた彬合晴知(同プログラム担当教官補佐)が答えた。
「うーん、これでこのゲームに乗ったのは、牧原だろ、横井だろ…、板橋、吉田、国吉…ってところか」
尾賀野は牧原玲(女子特別参加者)と横井翔(男子特別参加者)、板橋浩美(女子2番)の他に、吉田晋平(男子20番)、国吉賢太(男子7番)の名前を挙げた。
「いや、まだ「教祖様」とやらの一団がいるだろ。板橋浩美もその一人らしい一団が」
「あっ、そういやあそうだな」
そう、他にもゲームに乗っている人間もいる。
このクラスにいる「教祖様」と呼ばれている生徒が仕切っているらしい一団。
首輪に着けてある盗聴器からの会話記録のおかげで、メンバーが誰なのかは既に分かっている。
―しかし、こういう行動に出るとは思ってなかったなぁ…。
尾賀野たちは、この上祭中学校がプログラム対象クラスに選ばれてからというもの、上祭中学校3年について、色々と調査をしてきた。そのうち、このグループが秘密裏に存在していることが明らかになってきた。
だが、彼らがどういう行動に出るかは分からなかったし、だいいちその時点ではメンバーも誰なのか、仕切っているのが誰なのかも分かってはいなかった。
そして今、彼らが何らかの「目標」のために「教祖様」とやらを優勝させようとしている。
―「目標」ってのは一体…。
尾賀野は立ち上がって、机の上に置かれた生徒の資料の中から、「教祖様」と呼ばれている生徒の資料を取り出して、調べてみた。
やがて、尾賀野はふふっと笑った。
―なるほど、そういうことか。だから優勝を…。
そして尾賀野は再びソファーに座りなおした。それと同時に、彬合が話しかけてきた。
「そう言えば、お前は誰に賭けたんだ?」
「ああ、トトカルチョか…」
このプログラムは、表向きは中学生を対象にした戦闘実験、ということになっている。だがそれは所詮まやかしだ(大体、将来ある中学生を殺し合わせることに意味があるはずがない)。
結局は、尾賀野たちや、政府官僚によるトトカルチョを行うための、ただのゲームなのだ。
確かに人の命に金を賭けるのは良くないことかもしれない。だが、それが良いこと悪いことかどうか決めるのは所詮トップの人間だ。文句はトップに言えばいい。
尾賀野は、そんな風に考えていた。
「俺はやっぱり、牧原玲だな、と思って賭けたんだが…」
「あっ、やっぱり特別参加者ですか? 俺は横井翔に賭けましたよー!」
亜幌が彬合の言葉に反応して答えた。
「俺はひょっとしたらひょっとするかもって感じで、女子9番の世良涼香にしましたね。さっきの感じからして、場合によっては優勝もあるんじゃないですか?」
亜幌の隣に座っていた兵士、朱葉町が言った。
「で、結局尾賀野は誰に賭けたんだ?」
彬合がまた訊いてきた。
「ああ、俺は…」
そこまで言ったところで、尾賀野のポケットから、音楽が鳴った。
「おっと…はい、こちら尾賀野ですが…あっ、何だ、比良玉じゃないか」
尾賀野に電話をかけてきたのは、この間まで一緒に趣味のバンドの仲間だった比良玉(ひらたま)からだった。
「どう、今どんな感じ? おぉ、お前も頑張ってるんだな! …え? 今の状況? 三木元太に賭けたから教えてくれ? …あー、三木はな、歯向かったからスタート前に死んじゃってるんだわ。悪いな…あっ、じゃあもういい? それじゃあな」
そう言って、尾賀野は電話を切った。
「それで? お前は結局、誰に?」
彬合がさらに続けて訊いてきた。
「ああ、そうだったな…俺はあいつだ、「教祖様」だよ」
尾賀野は、そう言った。
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