BATTLE ROYALE
最後の聖戦


第34話

「…あと、どんくらいだ? 宇崎」
 
城戸比呂斗(男子6番)は、前を歩く宇崎義彦(男子2番)に、訊いた。
「さっき地図を見た感じだと、ここはF−3あたりのようだからな…もうすぐ着くだろう」
 先ほどから、比呂斗は義彦について、G−6にある農協に向かって、細い山道を歩いていた。
 道が細いので、義彦の提案もあって、山道を進む際にある程度の全員のポジションを決めていた。
 リーダー格で、武器になる金属バットを持っている義彦が先頭。その後ろにまともな武器を持たない比呂斗、
狩野貴仁(男子5番)和歌山啓一(男子21番)菊池麻琴(女子5番)
 そして殿を義彦と同じく、武器になりうるブラックジャックを持った
津脇邦幸(男子13番)が歩く。
「…城戸、津脇」
 いきなり義彦が前を向いたまま、話しかけてきた。
「あ? 何だよ」
「いきなり何だ?」
「いや…さっきは悪かったな」
―ああ、あの時のことか。
 そう、B−1を出発する前に、仲間の
平田義教(男子16番)が死んだことで落ち込んでいた比呂斗と邦幸に向かって怒った出来事。
 そのことを言っているのだろう、と比呂斗は察した。
「いや…別にいいよ。俺たちだって、悪かったんだし…」
 比呂斗は答えた。
「そうだよ、ここで脱出して、生き残らなきゃ、元太に合わせる顔がないもんな!」
 邦幸も、後ろの方から言った。
「ああ、そうだな」
 そこで話は終わり、また沈黙が流れた。そう思ったとき、貴仁が言った。
「なあ、皆さぁ、脱出できたらそれからどうする?」
 比呂斗は、はっとした。
―そうなんだ。問題はそれなんだよな。脱出できても、結局は政府に追われる身になって、身の安全は保障されない…。宇崎はその時のことも考えているんだろうか?
 啓一が、答えた。
「俺はあれだな…何処か、他の国に行くね。この国に追われることがなさそうな国に。でも…この国を潰してやりたいって…ちょっとずつ思うようになってきたんだ。いつも近くにいたクラスメイトが殺しあう…そんなのを見てると、始めてこの国に怒りを感じるようになったから」
「へへ、俺も同じ。俺も…こんな国潰してやりたいなって、思うようになってきた。今まで反政府組織とかのニュースを聞いても、そんなの関係ないって、思ってたけど」
 貴仁が歯をむき出しにして、言った。
「私は…考えてなかったな…でも出来れば、この国を倒してやりたい、って思う」
 麻琴が言った。
「俺もそれ賛成! こんないかれてアホな奴ばっかりの国、俺たちで潰してやるんだ!」
 邦幸が少し大きな声で言った。
「城戸はどう思う?」
 啓一が尋ねてきた。
「うーん…、俺も、この国を倒したいな。元太を殺した奴らだし、こんな下らない戦闘実験とやらがある国だからな」
「それじゃあ、義彦は?」
 今度は貴仁が、義彦に訊いてきた。
「俺は、この国を倒そうなんて、思わない」
「え?」
「俺はこの国が敵として見ている国―米帝に行きたい。そこで、何らそういうものに関わらないように生きていたい」
「な、何でだよ?」
 義彦の言っていることが理解できなかったのか、啓一が訊いた。
「俺は反政府組織だとか、そういうのは嫌なんだ。関わりたくもない」
「それは…俺たちの考え方を否定するってことか!?」
 邦幸が、少し刺々しい口調で、言った。
「いや、そういう意味じゃないんだ。言い方が悪かった。とにかく俺は、自分はそういうものに関わるのが嫌なんだ。何でと訊かれても、反政府組織だとか、そういうのが俺はあまり好きじゃないからとしか言えないし、それ以上言う気にもならない」
「…分かったよ」
 そしてまた、気まずい沈黙が流れた時、麻琴が言った。
「ねえ、そろそろ放送の時間じゃない?」
 そう言われて、比呂斗は腕時計を見た。
 午後11時56分を、指していた。

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