BATTLE ROYALE
最後の聖戦


第39話

「よし、着いたぞ」
 
宇崎義彦(男子2番)の声に、津脇邦幸(男子13番)は疲れ果てた顔を反応させた(それは狩野貴仁(男子5番)和歌山啓一(男子21番)も同じだった)。
―遂に辿り着いたのか!
 そう、彼らは辿り着いたのだ。目指していたG−6、農協に。
 あとは、爆弾の材料になる硝酸アンモニウムとやらとガソリンを手に入れ、もと来た道を戻るだけだ。
「よし、じゃあ、手分けして探すぞ。俺と啓一、貴仁は硝酸アンモニウムを探すから、城戸、津脇、菊池はガソリンを探してきてくれ」
 義彦が言うと、邦幸は答えた。
「オッケー、任せろ!」
 そして、彼らは二手に分かれた。

 
城戸比呂斗(男子6番)、邦幸、菊池麻琴(女子5番)は、農協の車がたくさん停まっている車庫までやって来た。
「このドラム缶から取れば良いんじゃない?」
 麻琴がガソリンと書かれたドラム缶を指差して、言った。
「でもどうやって取るってんんだよ?」
 比呂斗が答えると、すぐに麻琴は、近くにたまたま転がっていたポリタンクを指差した。
「あれに、ホースを使って入れれば良いじゃない!」
「確かにそうだな。よし、ホースを探すぞ」
 そして、比呂斗と邦幸で、ホースを探し始めた。ホースはすぐに見つかった。農具を売っているらしい倉庫の中に置いてあったのだ。
「よし、これを使って…」
 比呂斗はホースの片方をドラム缶の中に入れ、もう片方を思いっきり吸ってからポリタンクの中に入れ始めた。ガソリンは勢いよく、ホースを伝わって出てくる。
「よしよし、いいぞ…」
 やがて、ポリタンクは満タンになった。
「これでいいな。よし、それじゃあ、宇崎たちと合流だ」
 そう言ってポリタンクを持った比呂斗が歩き始めたとき、近くで、大きな銃声らしき音が響き、三人は慌てて身をドラム缶の裏に隠した。
「なっ、何だ? 今の音!?」
 邦幸は、何が起きたのかさっぱり掴めなかった。
「近かったな…、じゃあ、宇崎たちが!?」
 比呂斗が言った。
―そんな…宇崎…大丈夫だよな…。
 すると、音がした方から、義彦たちが何か袋を抱えて走ってくるのが、邦幸には確認できた。
「あっ、宇崎、狩野、和歌山!」
 邦幸は言った。
「すぐに戻るぞ! 硝酸アンモニウムは調達したから、今すぐに!」
 義彦が息を切らしながら言った。
「え、何で!?」
「特別参加者だ、あの、髪の長い女! あいつが、俺たちに向かって撃ってきたんだ!」
 啓一が、叫ぶかのように言った。
 そして、義彦たちが走ってきた方向から、その髪の長い女、
牧原玲(女子特別参加者)が現れ、手に持った何か、猟銃のようなものをこちらに向けて撃ってきた。
「に、逃げるぞぉーっ!」
 義彦の一声に、硝酸アンモニウムの袋を抱えた啓一が素早く反応し、駆け出した。
 さらに貴仁、比呂斗、麻琴が続く。邦幸もすぐに駆け出そうとした。
 だがその瞬間、玲が両手で抱えた猟銃を撃った。
 放たれた弾丸は、邦幸の右足を撃ち抜き、散弾が腰などにも散った。
「ぐああっ!」
 邦幸は前のめりに倒れこんだ。
「コ、コンタぁっ!」
「津脇!」
「津脇君!」
 それに気付いた比呂斗と貴仁、それに麻琴が、が立ち止まって叫ぶ。
 しかし、玲は二人にも銃口を向けた。
「やめろ! あいつらに手を出すな!」
 邦幸は玲に飛び掛り、猟銃の銃口をずらさせた。その瞬間弾丸が放たれ、弾は見当違いの方向に飛んでいく。
「比呂斗、狩野! 立ち止まってんじゃねぇ! 走れ! 早く行けぇっ!」
「…!」
 そして、比呂斗は踵を返して、駆け出していった。貴仁、麻琴も続いていった。

 邦幸は、まだ玲の猟銃から、手を離していなかった。玲が邦幸を引き剥がそうと必死になっている。
―離してたまるか! ゼッテー離さねぇ!
 だが、玲の力はとてつもなく、やがて邦幸は強引に引き剥がされ、地面に叩きつけられた。
 玲が邦幸に銃口を向ける。邦幸は、思った。
―ああ。俺もう死んじまうのか。ダセェな…。
―元太…義教…。俺も、すぐに…行くからな…。
 そして猟銃から放たれた弾丸が、邦幸の頭部を見事に破壊した。
 玲は、義彦たちが逃げた方向を見て、追うのを諦め、何処かへと歩き出した。

 義彦は、D−5辺りまでやってきて、一旦立ち止まった。もちろん、他の仲間が追いついてくるのを待つためだ。
 やがて、啓一が袋を抱えて、息を切らしながらやってきた。
「よ、義彦…」
「おい、貴仁と、城戸と、菊池と、津脇は?」
「わ、分からない…。俺、必死だったから…」
「何だと…?」
 義彦は、呟いた。

 男子13番 津脇邦幸 ゲーム退場

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