BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第40話
城戸比呂斗(男子6番)は、茂みから顔を出し、傍らにいる菊池麻琴(女子5番)に声をかけた。
「ほら、行くぞ」
それに応じて麻琴が立ち上がり、二人は歩き始めた。もちろん、目指すは最初に宇崎義彦(男子2番)たちと合流した、B−1にある廃ビルだ。
二人は、津脇邦幸(男子13番)が「早く行け」と言ったのを聞いて、すぐに走り出していた。
だが…比呂斗には、弱点があった。
それは、方向音痴だということ。結局比呂斗はそのために迷ってしまい、麻琴も慌てていたために比呂斗と同じように迷ってしまったのだ(その後、どうにかここがE−6だと知ることが出来た)。
「それにしても…見事にバラバラになったわね…」
「ああ…」
―おそらく、同時に逃げ出した宇崎と和歌山啓一(男子21番)は一緒にいるだろう。この二人は、そんなに心配する必要もなさそうだ。
「けど問題は…狩野なんだよな」
「ああ…狩野君か…」
そう、狩野貴仁(男子5番)も、比呂斗や麻琴と一緒に逃げ出した。なのにここにはいない。
「俺たちと同じで、狩野も迷ったのか?」
「かもね」
「廃ビル行く前に、狩野を探しておくか?」
「…そのほうがいいんじゃない?」
そして二人は、目標を廃ビルに向かうこと、そして狩野貴仁を探すことの二つにした。
―とにかく、廃ビルに狩野も向かってるはずだ。廃ビルに行く方向を探せば見つかるかもしれない…。
そう考えて二人が動き始めたとき、近くの茂みががさっと動いた。
「誰だ!?」
比呂斗は叫んだ。やる気の奴ならば、逃げるか、戦うかしかない。
―もっとも、俺の蛍光灯と、麻琴のソフトボールじゃ、何も出来やしないけどな。
すると、その相手が言った。
「その声…比呂斗か?」
「え?」
「俺だよ、姫野勇樹だよ」
そう言って茂みから出てきたのは、比呂斗の仲間の一人、姫野勇樹(男子15番)だった(後ろには谷川つかさ(女子10番)もいるのが見えた)。
「勇樹! 元気だったかおい!」
「まあ…な」
そこで比呂斗は、あることに気が付いた。いないのだ。勇樹の恋人でもある富森杏樹(女子12番)が。
「なあ、勇樹…富森は、どうしたんだ?」
すると、勇樹は少し沈痛な表情になって、言った。
「まだ会ってない」
「会ってない? 何だよそれ!」
そこで比呂斗と麻琴に、勇樹は今まで何があったかを話し始めた。吉田晋平(男子20番)に襲われている谷川つかさを見つけ、助けたこと。 つかさに、杏樹が記憶を失っていると聞かされたこと。国吉賢太(男子7番)に、杏樹は殺すなと頼んだこと。
「記憶喪失って…マジかよおい!」
「杏樹が?」
「ああ…」
「俺たちも、富森には会ってないしな…」
「そうね、ずっと宇崎君たちといたからね」
すると、今まで黙っていたつかさが反応した。
「何処にいたんですか!?」
麻琴が今度は、今まで自分と比呂斗がどうしていたかを話し始めた。
たまたま比呂斗と一緒に、廃ビルに入り、そこでグループを作って、脱出のための作戦を立てていたこと。
爆弾の材料を取りに来た時、牧原玲(女子特別参加者)に襲われて、邦幸だけがそこに残ったこと。
そして、義彦、啓一、貴仁とは逸れてしまったこと。
「そうか…邦幸が…」
勇樹は、仲間でもある邦幸がそこに残ったと知り、死んでしまったかもしれないと思ったのか、ぼそっと呟いた。
「なあ、狩野を見なかったか?」
試しに、比呂斗は狩野貴仁の名前を出してみた。
「いや…見てないな」
「私も見てないわ」
勇樹とつかさは、そう答えた。
「そうか…」
比呂斗がそう呟いてすぐ、勇樹が言った。
「比呂斗、俺たちそろそろ…行くな?」
どうやら勇樹たちは、富森杏樹を探し続けるらしい。
「分かった。気をつけてな」
「ああ」
そう言って、勇樹は踵を返して歩き始め、つかさもそれにくっついていった。
「…麻琴。俺たちも行こうぜ」
比呂斗も、麻琴にそう言って、勇樹たちとは逆の方向へと、歩き始めた。
<残り26+2人>