BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第47話
「やっぱり、邦幸は…」
城戸比呂斗(男子6番)は、脱出した後のことを宇崎義彦(男子2番)たちと話したF−3の川べりまで戻ってきて、放送を聞いていた。
だが、もうあの時一緒にいた、そしていつも一緒だった仲間、津脇邦幸(男子13番)はもういない。
三木元太(男子18番)、平田義教(男子16番)に続いて仲間を失ったことに、比呂斗はショックを隠すことが出来なかった。
「比呂斗…もう、悔やんでも仕方が無いよ。だから、早く狩野君を見つけて、B−1に戻ろう?」
「ああ…」
傍らの菊池麻琴(女子5番)の言葉を訊くと、比呂斗は横に置いたポリタンクを見た。
―そうだ、早く狩野を見つけないと。そして三人で、B−1へ戻るんだ!
「よし、行こう」
そう言って比呂斗が、立ち上がった瞬間、麻琴が言った。
「ね、ねえ、あれ!」
「何だ?」
比呂斗は麻琴が指差した方向を見た。そこには、自分たちが探していた、宇崎義彦の親友、狩野貴仁(男子5番)が立っていたのだ。
「狩野! 無事だったか!」
貴仁は比呂斗の声を聞いて気付いたのか、比呂斗の方へとやって来た。
「城戸君…俺を探していたの?」
「当たり前だ。お前は俺たちの仲間だからな。それに、お前が戻ってこなかったら、宇崎が心配するだろう?」
「あ…ありがとう」
「別にいいよ」
貴仁は、誰にも会うことは無かったようだ。これで仲間の立川大成(男子12番)あたりの情報でも手に入れてくれていたなら…と比呂斗は思った(それはもちろん、仲間の世良涼香(女子9番)、富森杏樹(女子12番)が生きている麻琴も同じだろうが)。
「それじゃあ…戻るか。狩野」
「あ、ああ」
「早く戻らないと、宇崎君が心配してるかもしれないしね」
「いや、宇崎は意外と、平然としてたりしてな。そんな奴っぽいから」
「アハハハハ…」
貴仁と麻琴がそう笑った直後、銃声が辺りに轟き、同時に比呂斗は腹部に強烈な痛みを感じて倒れこんだ。
腹部からは、血液が溢れ出していた。
「ぐう…っ」
「ひ、比呂斗!」
麻琴が慌てて比呂斗に駆け寄ったが、再び轟いた銃声と共に、麻琴も吹っ飛んだ。麻琴の腹部が、鮮血で赤く染まっていて、苦しそうに息をしていた。
―な、何だ、一体!
比呂斗は、銃声の響いた方向を見て、そして気付いた。
恐らく邦幸を殺したであろう女、牧原玲(女子特別参加者)が細い煙が銃口から立ち昇っている猟銃を手に、立っていることに。
「お、お前…」
そこで、さらに比呂斗は気付いたことがあった。貴仁が、まだ無傷だということにだ。貴仁は、突然のことに、震えていた。
「か、狩野!」
「え?」
「お前、そのポリタンク持って走れ! 早く! お前は宇崎のところへ帰れ!」
「で、でも…」
「早くしろ!」
比呂斗が怒鳴ると、貴仁はようやく、ポリタンクを右手で引っ掴み、駆け出していった。
「作戦を…失敗させるわけにはいかないからなぁ…」
「へぇ…比呂斗にしては、いい判断だったんじゃない?」
「うるせぇ。とにかく、狩野を殺させるわけにはいかねぇ」
「そうだよね…」
その時、玲の猟銃が三度火を噴き、放たれた銃弾が麻琴の左胸を貫き、麻琴の身体が崩れ落ちた。
「ま、麻琴!」
比呂斗は麻琴に駆け寄った。麻琴は辛うじて、まだ息をしていた。
「ひ、比呂斗…ゴメンね…? 私、何も出来なかったよ…」
「おい、麻琴! 死ぬな! 死ぬんじゃない!」
「アンタは…大事な…幼馴染だからさ…出来れば、生きて欲しいんだ…生きて…お願い…だから…」
麻琴はそれっきり、何も言おうとはしなかった。死んでいるのは、明らかだった。
「ちくしょう…ちくしょおぉぉぉー!」
―何故俺たちは、死ななきゃならない?
―何でこうも簡単に、人が死ぬんだ?
比呂斗の目に、玲が自分に猟銃の銃口を向けるのが見えた。
―ああ、俺も死ぬのか…。麻琴。俺、生きれそうに無ぇや。悪い。
―元太、義教、邦幸。俺もそっちに行くからな。
―勇樹。早いとこ、富森を見つけてやれよ。谷川。勇樹をよろしく頼むぞ。
―大成。何処にいるのか知らねぇけど…頑張って生きろよ?
―狩野。和歌山。それに宇崎…頼んだぞ。
再び銃声が響き、銃弾が比呂斗の思考回路を破壊し、比呂斗の思考はそこで途切れた。
玲はその場に倒れた二つの死体をじっと見据えると、踵を返して歩き始めた。
男子6番 城戸比呂斗
女子5番 菊池麻琴 ゲーム退場
<残り21+2人>