BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第49話
「風が強くなってきたよ。寒そう…」
中元理沙(女子13番)は、窓の外を見ながら、呟いた。
「あっ、じゃあ私、外の由美に食事持っていくから、何か寒さしのげるもの持っていこうか?」
傍らの島野明子(女子8番)が、そう言って立ち上がった。
そしてキッチンにいた越谷美里(女子6番)が作ったインスタントスープを明子に渡すと、明子は中に置いてあったコートと一緒に、外で見張りをしている坂之下由美(女子7番)に持っていった。
それを見て、理沙は思った。
―ここは随分、平和ね…。ここだけが、平和なのかな…?
理沙はプログラムの対象クラスになったと知ったとき、絶望した。
必死で気丈に振舞おうとしても、なかなか辛かった。
そんな時、理沙は仲間たちと一緒に、何処かに隠れることを思いつき、近くにいた美里、由美、明子に、外で待っていてほしいと言った。
そして自分が出発し、廃校の玄関から出たとき、ちゃんと三人が待っていてくれたことを、とても嬉しく思った。
三人は自分を信用してくれているのだと思うと、涙が出てきた。
それから四人で、何処に隠れるかを話し合った結果、C−5に建っている洋館に行こう、という結論になった。洋館についてからは、リビングに拠点を置いた。
そして見張りを立てることにしたのだが、それぞれの武器は、理沙が鎌、美里が固形燃料、由美がウノ、明子が鉄製のフリスビーと、かなり貧弱だった(もっとも、美里の固形燃料は洋館に残った食料から食事を作るのには便利だったが)。
そこで仕方なく、一番まともな武器の鎌を見張りに持たせることにした。
食事は料理が大好きな美里が作ってくれていたし、放送で他のクラスメイトが死んだことが分かり、皆が沈んだ雰囲気になっても、いつも明るい明子が、皆を励ましてくれた。
―このメンバーなら、まだまだやっていけるはず。
理沙は、そう信じていた。
「理沙、はい。朝ご飯」
その声に振り返ると、美里がインスタントスープを両手で持って、立っていた。
「あ、ありがとう、美里」
「どういたしまして。あったまるから」
美里がそう言って、やっと理沙は気が付いた。この洋館の中は室内とはいえ、冬だけに寒かったことに。
そこに、外に出ていた明子が戻ってきた。
「どうだった、由美の様子」
理沙は明子に尋ねた。
「うーん、ちょっと気が滅入ってるみたいね。まあ、仕方ないけどさ」
「そう…」
理沙にとって一番の心配。それは由美のことなのだ。
由美は以前から大人しく、自己主張をしないタイプなのだが、この中で一番気が滅入ってしまっているらしい。
まあ、見張りに出るたびに銃声を聞いたそうだし、仕方の無いことだろうと、理沙は思っていた。
「まあ、頑張ろうよ。はい、明子もどう?」
そう言って美里がインスタントスープを差し出した。
「うん、もらう」
明子がインスタントスープを受け取った。
「ねぇ…、そろそろ見張り交代の時間だけど…」
由美が、片手にインスタントスープの皿を持ち、そう言いながら入ってきた。
「あっ、もうそんな時間?」
次は理沙の番だ。理沙は由美からコートと鎌を受け取ると、洋館の外に出て行った。
外は、当然だが室内よりも冷え込んでいる。特に早朝だけに。理沙は、すぐにコートを着込み、ドアの横に座り込んだ。
―いつまで、こんな時間が続くんだろうか…。私たちも、いずれ死んでしまうのだろうか?
―嫌だ、死にたくは無い。でも、人殺しはしたくない。そんなことは絶対出来ない。
―でも、死にたくは無い―!
「帰りたいな…お父さん…お母さん…」
寒さとは関係なく、身体がガタガタと震えてくる。
理沙も、大分気が滅入っていたのだ。
だが、理沙は気付いていなかった。この洋館の中に、一人の「裏切り者」がいることに―。
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