BATTLE ROYALE
最後の聖戦


第5話

「う、うーん…ど、こだ…ここ…」
 
三木元太(男子18番)は、ゆっくりと身を起こした。
―おかしいな…俺ら、旅行の打ち合わせしてたんだよな…、何で寝ちまったんだ?
 元太は周りを見回してみた。そこは教室のように見えた。
 自分が座っていた椅子と机に引っ付いて、六つの机と椅子があり(他の5つの班の分もあったが、元太は気にしていなかった)、その机のそれぞれに、旅行で同じ班になった親友の
城戸比呂斗(男子6番)立川大成(男子12番)津脇邦幸(男子13番)姫野勇樹(男子15番)平田義教(男子16番)
 さらに七人の班を組むために入ってもらった
焼津洋次(男子19番)がそれぞれ机に突っ伏していた。
 そう、それは打ち合わせをしていたときの上祭中3年教室とほとんど同じだった。
「お、おい…」
 元太は自分と違い、なかなか目覚めない他の六人に近寄った。
―ひょっとして―、
 しかし、それは杞憂だった。六人はただ、眠っているだけだった。
―? 何なんだ一体…。
 その時、隣の班の席で眠っていた、
白鳥浩介(男子9番)が、目を覚ました。
「んー…何これ…、三木ぃ…これ何なの…?」
 浩介は短く刈り上げた頭をぽりぽり掻きながら、そんな間の抜けたことを聞いてくる。
―ああ、確か白鳥はこういう奴だった。状況のおかしさに気付けこのタコ!
「バカ、俺に聞くな」
「あ」
 元太の言葉をまるで聞いていないかのように、また浩介が間の抜けた声を出し、元太を指差した。
「だから何…」
 そこで元太は気付いた、浩介の首に、何か銀色の、首輪のようなものが付いていることに。
「なあ、三木…それ何?」
 浩介に言われて、元太は自分の首を触った。色は分からないが、確かに浩介の首に付いている首輪のようなものが、自分の首にも付いていることに気が付いた。
 そのうち、他の生徒も起き始めた。
「こ、ここ何処よ…ねえ、何処よここーっ! お父様ー!」
 
山原加奈子(女子20番)の声と共に、何かを叩く音がした。
 おそらく加奈子が取り乱して窓を叩いているのだろうと元太は思い、加奈子の声がするほうを振り返ったが、そこで元太は信じられないものを見た。
 加奈子が叩いているのは窓ではなく、窓に貼り付けられた鉄板だったのだ。
―何だ何だ!? 一体どうなってるんだここは!
 元太はそこで、左腕にはめた夜光塗料もついた腕時計(第三国から手に入れた米帝製の安物だった)を見てみた。
 PM0:48と、腕時計のデジタルの文字盤は映し出していた。
 打ち合わせが始まったのが9時10分。となれば、それから三時間半は経っていることになる。
 そしてついに全員が起きたようだった。
 ほとんどの生徒が加奈子ほどでなくとも、多少混乱しているのが元太には分かった。
 そんな中で、
宇崎義彦(男子2番)国吉賢太(男子7番)吉田晋平(男子20番)向井遥(女子18番)などは、落ち着いていた。
 そんな時、元太は見た。義彦が、同じ班でいつも一緒の賢太、浩介、
狩野貴仁(男子5番)和歌山啓一(男子21番)と話しているのを。
―宇崎はもう、これが何なのか分かったのか?
 そんな時、「もう、何なのよー!」という大きな叫び声がした。
 加奈子が前と後ろにあるドアのうち、前のドアに向かって、逃げるためだろうか? 駆け出していた。
 取り巻きの
江田恵子(女子3番)保坂小雪(女子16番)が止めようと動いた。
 その時だった。
 前のドアが開き、武装した兵士のような奴らが、多数入ってきて、加奈子を突き飛ばした。加奈子は尻餅をつき、恵子や小雪に押さえられた。
「はい、二人とも、ありがとう」
 そんな声がしたかと思うと、兵士たちの後ろから、二人の男が入ってきた。
 一人は黒い髪をセットしており、もう一人は茶髪。そして二人とも…、何処にでもいそうな雰囲気の男だった。
 そして二人は電気を点けると、前にある教卓の所まで(そこで元太は、ここは「教室のよう」ではなく、本当に「教室」なのだと分かった)やってきた。
 そして黒い髪が、唐突に言い放った。
「はい、皆良く眠れたかなー?」
 皆、何も言えなかった。

                           <残り42人>


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