BATTLE ROYALE
最後の聖戦


第51話

―やっと、見張りが終わる時間だ…。
 
中元理沙(女子13番)は、腕時計で時間を確認すると、洋館の中に入ることにした。
―まあ、この洋館の中にいれば、しばらくは大丈夫なんだし…安心ね。
 理沙は、ひたすらそう思うことで、平静を保とうとしていた。それもこれも、自分がリーダーなのだという自覚からきたものだった。
「あっ、見張り終わったの?」
 
島野明子(女子8番)が声をかけてきた。隣には坂之下由美(女子7番)もいる。
 明子もどうやら、何とか明るい声を出そうと努力したようだが、その表情からは疲労の色が感じ取られる。精神的にも、肉体的にもかなり疲れ果てているようだ。
 おそらくは
越谷美里(女子6番)も、由美も。
「次の見張り番は…美里だよね?」
「あっ、そうだね、美里…」
 理沙の言葉に、明子が美里を呼ぼうとした時、明子が何かに気付いたような表情をした。
「あっ! 美里がいない!」
「えっ?」
「何で美里が…?」
 確かにそうだ。この場にいるのは理沙、由美、明子だけで、越谷美里がいないのだ。
―でも何で?
 理沙には、その理由が全く分からなかった。
―まさか逃げ出した? でもそんなはずは無い! 私たちは信頼しあっているはずなんだから!
「寝てるのかな…?」
 そう呟いたのは、由美だった。
「寝てる?」
「美里も疲れてたみたいだったし…何処かで寝てるんじゃない?」
「寝てる? 皆リビングで寝ることにしてるのに? 何でそうなるの?」
 明子が反論した。
「だって…他に思いつかないじゃない…」
 由美が、力ない声でそう言った。
―美里…何処に行ったのかな…?
「まあ…探したほうがいいんじゃないかな?」
「そう…だね」
 こうして、理沙の一言で(鶴の一声、というやつだ)、三人は美里を探すこととなった。
「由美は二階を探して。明子は一階の東側の部屋を。私は西側の部屋を探すから」
 そう言って、美里の捜索は始まった。
 理沙は、西側に並ぶ、全ての部屋を探した。だが、なかなか美里は見つからない。
「美里ー? 何処にいるの? いたら返事してー!」
 そして理沙は、最後に一番奥の部屋を探すことにし、ドアを開けて中に入った。
 どうやら寝室だったらしく、なかなか高級そうなベッドと、クローゼットがあった。
―ここにもいないのかな…? やっぱり、外に行っちゃったのかな…?」
 そう思いながらも、やはりきちんと探さなければと思った理沙は、クローゼットを開けることにした。
 そしてゆっくりと、クローゼットの観音開きの扉を開けた…と同時に、何かが理沙に向かって倒れてきた。
「きゃっ! …何?」
 理沙は、その倒れてきたものに近づき、そしてあることに気付き、悲鳴を上げた。
「きゃぁぁぁぁぁ」
 それは、ものではなく、れっきとした人だった。それも、さっきから理沙たちが探していた越谷美里の。
 越谷美里は間違いなく、死んでいた。仰向けに倒れてきた美里は、額に小さな穴を開けているのだ。そんな状態で生きていられる人間がいるとは、到底思えなかった。
「あ…ああ…美里…」
 そこに、由美と明子が駆けつけた。
「な、何、理沙…きゃぁぁぁ」
「み、美里!」
 二人も揃って、悲鳴を上げた。
 その時、理沙は思った。
―ここには私たちしかいない…なら美里は誰に殺されたの? まさか…まさかこの二人のどちらかに殺された?
―嫌! 私は死にたくなんか無い! 嫌! 嫌…。
「絶対に嫌ぁー! 死にたくなんか無い!」
 理沙は二人を押しのけて駆け出した。リビングに置きっぱなしの自分の武器、鎌を持って洋館を飛び出した。
「ちょっ、ちょっと待ってよ、理沙!」
「何処行くの、理沙!」
 明子と由美も、慌てて理沙を追って洋館を飛び出した。

―まさか、恐怖に耐えかねて逃げ出すなんて…予想以上にショックだったのかしら?
 美里を殺した犯人は、そう思っていた。
―まあ、理沙を追うしか無いわね。理沙が誰かに私たちといたことを話されたりしたら、私が疑われちゃうしね。

 女子6番 越谷美里 ゲーム退場

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