BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第52話
C−7辺りになる、森林の中。
周囲に気を配りながら、姫野勇樹(男子15番)は先へと進んでいく。
そんな勇樹の後ろを、谷川つかさ(女子10番)は歩いていた。
「谷川、足元に木の根が這ってるから、気をつけろ」
勇樹が相変わらずのぶっきらぼうな声で、つかさに言ってきたので、慌ててつかさは足元に這っていた木の根を飛び越えた。
―富森さん…何処に行っちゃったんだろう…。
未だ記憶を失ったままのはずの富森杏樹(女子12番)。一体彼女は何処で何をしているのだろうか?
無事でいてくれればいいのだが…。
もう二時間も前の放送で、城戸比呂斗(男子6番)たちが言っていた津脇邦幸(男子13番)を含む六人が死んだことが発表され、残りはもう二十三人(横井翔(男子特別参加者)と牧原玲(女子特別参加者)も入れると二十五人だが)と、もう半分近くまで上祭中三年の人数は減ってしまった。
先ほどから、勇樹も邦幸が死んだことが確かなことと分かってからというもの、顔には出ていないが落ち込んでいるようだった。
―姫野君…大丈夫かな…?
その時、勇樹が突然立ち止まり、急なことに対応できなかったつかさは、勇樹の大きな背中にぶつかって転んだ。
「な、何? どうしたの?」
「…今、何か変な音がした。パシュっていう音が…。北のほうだ。ひょっとしたら杏樹が襲われてるかもしれない、行こう」
勇樹はそう言って、駆け出した。
「あっ、ま、待って! 姫野君!」
つかさもすぐに立ち上がって、後を追った。
―彼女の作戦は、上手くいっただろうか…?
「教祖様」は、右手に持ったレーダーの液晶画面を見つめながら、自分の信徒である彼女のことを考えていた。
「教祖様」は世良涼香(女子9番)から逃げ切った後、A−10にある展望台までやってきていた。
展望台は見晴らしが良くて周りの観察がしやすく、「教祖様」にとって最適の場所だった。
さらに「教祖様」は、途中でC−10に立ち寄った(途中で自分が殺した太田裕一(男子3番)の死体と再会したが、既に「呉道教」流の方法で供養したので気にはしなかった)とき、地図通りにそこに建っていた「ある建物」にあった「ボーナスアイテム」とやらを見つけた。
どうやら、同じものを支給された者もいるようだが、そんなことはどうでもよかった。
そこでふと顔を上げると、白いものが降っているのが目に付いた。
「おぉ…雪か…」
プログラム会場には、雪が降り始めていたのだ。
「冬だからな…ん?」
そこで「教祖様」は、あることに気が付いた。レーダーに、かなり遠いがちらっと反応が映ったのだ。
その出席番号を見て、「教祖様」は気が付いた。
―これは…そうか、逃げられたのか。
するとそこにちょうど、彼女からの連絡が入ってきた。
「教祖様! 理沙を見失ってしまいました! もう一人を今追っていますが、追いつけません!」
「…慌ててはいけない。私が今近くにいる。援護に向かおう」
「し、しかし教祖様の安全は…」
「大丈夫だ、問題ない! 今から行く」
そして「教祖様」は、荷物をまとめ、すぐに展望台を飛び出した。
ようやく勇樹とつかさは、銃声が聞こえた辺り、A−7まで辿り着いた。
「一体誰が…戦ってるんだ?」
そこに、二人の女子生徒が現われた。一人は時々後ろを振り返りながら走り、もう一人が、拳銃を持ってその女子生徒を追いかけていて、時々その拳銃から銃弾が放たれているようだ。
だが、どうやらどちらも杏樹ではないようだ(まあ、杏樹が人を殺そうとしているなど、勇樹は思いたくも無かったが)。
「どっちも杏樹じゃないな…」
「でも、ここまで来たからには、止めないと…」
「確かに、そうだな!」
そして二人は、その二人の女子生徒に向かって、駆け出していった。
<残り20+2人>