BATTLE ROYALE
最後の聖戦


終盤戦
Now16students and2persons remaining.

第60話

 廃校に設置された、モニタールーム。
 その中で、ソファーに腰掛けた尾賀野飽人(岡山県大佐町立上祭中学校3年プログラム担当教官)は、モニターに記された生徒の首輪の反応を眺めていた。
「へぇ…彼、正体を自分からばらしちゃったよ…」
 それを訊いて、彬合晴知(同プログラム担当教官補佐)は仮眠中のもう一つのソファーから、身を起こした。
「何のことだ?」
 尾賀野が彬合の方を振り返り、言った。
「彼だよ。教祖様こと、白鳥浩介」
 そこで彬合はやっと、
白鳥浩介(男子9番)を思い出した。
「ああ、彼が正体を明かしたというのか…」
「その通り。俺は彼に期待しているんだ。優勝してくれることを…な」
「…しかし」
 彬合は、訊きたいことが一つ、あった。それは、白鳥浩介が国家反逆の意志を持っているだろう、ということ。
 教祖としての経歴から考えて、優勝して一般社会に戻ったら、必ずこの大東亜共和国に牙を剥くはずだと、彬合は思っていた。
「彬合の言いたいことは分かる。でも俺は…それでもいいような気がするんだ」
「え?」
 彬合には、尾賀野の言葉の意味はよく分からなかった。
 尾賀野は、しばし黙っていたがやがてにかっと笑って言った。
「バーカ、冗談だって。トトカルチョだよ、トトカルチョ。俺は彼に賭けてるんだ。優勝してくれなきゃ、掛金の10万円をすっちまうだろ?」
「そうか、そうだよな…」
 彬合はそう言って笑った。しかし、尾賀野のあの言葉は、本心のような気がした。
―結構長い付き合いだからな…あいつのことは大体分かる…。
―どうしたんだ? あいつは…?
 そう思いながら、彬合はふと、一枚の資料が目に入った。
「これは…」
 そう呟いて、彬合がその資料を手に取ると、尾賀野が近づいてきた。
「ああ、それはさっき亜幌にコンピューターにかけて作ってもらった、今生存している生徒のトトカルチョの順位表と、その評価だよ」
 彬合は、そう言われて目を通してみた。
宇崎義彦(男子2番)、トトカルチョ5位。身体能力、頭の回転は良く、やる気になれば期待できる』
狩野貴仁(男子5番)、トトカルチョ32位。身体能力は並の上、お人好しな点があるようなので人気薄』
国吉賢太(男子7番)、トトカルチョ27位。ゲームに乗る可能性は高い。しかし身体能力はそれほどない』
『白鳥浩介、トトカルチョ6位。体力面では目立たないが、その経歴から、頭は切れると思われる』
曽野亮(男子11番)、トトカルチョ10位。野球部で鍛えた身体能力はかなりの物。しかし性格が良すぎてやる気になる可能性は低い』
立川大成(男子12番)、トトカルチョ7位。空手をやっているとのこと。身体能力も高く、期待大』
姫野勇樹(男子15番)、トトカルチョ15位。実力は立川と遜色なし。しかし恋人の存在は大きい?』
吉田晋平(男子20番)、トトカルチョ33位。白鳥のために戦うと思われるが、白鳥優勝が目的なので期待できない』
和歌山啓一(男子21番)、トトカルチョ23位。知力はある。しかし仲間思いな面が足を引っ張る可能性あり』
横井翔(男子特別参加者)、トトカルチョ2位。牧原の対抗馬。なかなか堅い』
と、男子の欄には書かれていた。
一方、女子の欄には…。
河原真澄(女子4番)、トトカルチョ44位。これといった特性なし。身体能力も並以下で度胸にも欠けるためか、賭けた者なし』
世良涼香(女子9番)、トトカルチョ3位。身体能力は普通だが、頭が切れ、一般生徒の中では優勝候補』
谷川つかさ(女子10番)、トトカルチョ38位。全体的に平凡だが、場合によっては番狂わせもありえる』
富森杏樹(女子12番)、トトカルチョ40位。身体能力、知力、精神力ともに他より低い。優勝の可能性は低いだろう』
中元理沙(女子13番)、トトカルチョ8位。身体能力はなかなかのもの。人望もあるので、仲間を集めて一掃も可能。やる気になるかどうかがカギ』
畑槙乃(女子15番)、トトカルチョ26位。動きは俊敏だがそれ以外は目立たず。番狂わせに期待』
向井遥(女子18番)、トトカルチョ30位。クラスでも目立たない存在。身体能力は高いとは言えないが、知力はある』
牧原玲(女子特別参加者)、トトカルチョ1位。大本命。普通ならば優勝間違いなし』
と、書かれていた。
「なかなか…意外な生き残りの面子だな…」
「ああ…女子4番の河原なんか、賭けた奴ゼロだぞ? こんなのがここまで生き残るなんて、予想できるはずが無い」
「まあ…な」
 そうやっていた時だった。
「尾賀野教官!」
 モニターに向かっていた兵士の一人が、声を上げた。
「どうした、宇頭(うず)」
 尾賀野と彬合は、声を上げた兵士、宇頭に近づいて、言った。
「男子5番の首輪の反応が消えました」
「何」
「はい、先ほどまでC−3にいたのですが…恐らく、女子9番にやられた傷が悪化して失血死したかと…」
「そうか」
 尾賀野が頷いた。
 さらにそこに、朱葉町がやってきて、言った。
「尾賀野教官、彬合補佐。そろそろ放送の時間です」
 そして朱葉町は、尾賀野に死者のリストを、彬合に禁止エリアのリストを渡した。
「分かった」
「準備してくる」
 そう言って、二人はマイクに向かった。

 男子5番 狩野貴仁 ゲーム退場?

                           <残り15?+2人>


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