BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第7話
元太は、暴力を好まない少年だった。
しかし、それでも城戸比呂斗(男子6番)たちのグループに1年のときには入っていた。
元太は、小学校のとき、友達がいなかった。孤独だった。
両親も五歳のときに死んだ。祖父母に引き取られて大佐町に来たが、祖父母は厳格な性格で、元太はなかなか馴染めなかった。
学校でもいじめられた。暗いからと、陰口をたたかれ、根も葉もない噂を流されたりした。教師も口だけで何もしてくれなかった。
そして祖父母も「気にするな」としか言わなかった。そして我慢し、耐えることを祖父母に強制された。
元太にとって小学校生活が苦痛でしかなかった。しかしそれも上祭中学校に入学してから変わった。
まず、横川将晴に出会った。彼は「アニキ」と呼ばれるほど面倒見がよく、入学してすぐに元太の様子に気が付き、相談に乗ってくれた。
そして横川は元太にこう言った。
「ほーか、友達がおらんか。なら、ええ奴らがおるで? 頭は悪いし、喧嘩っ早いけどな、性根はええ奴らや」
そう言って横川は、ちょうど他のクラスの奴らとの喧嘩で相手をボコボコにのして、呼び出しを食らっていた比呂斗と会わせた(その時、喧嘩は比呂斗だけでやっており、他の仲間はいなかった)。
「城戸。三木の事は知っとるよな? こいつは友達がほしいそうや。お前、ちょっとこいつと付き合ってみてくれや」
「…いいっすけど」
「ええか? 三木」
横川の問いに、元太はこくっと頷いた。
そして比呂斗は、元太をまずは仲間の立川大成(男子12番)、津脇邦幸(男子13番)、姫野勇樹(男子15番)、平田義教(男子16番)に会わせた。
「皆。三木が俺たちの仲間になりたいんだと」
「…そうか。仲間になりたい奴は拒まねー」大成が言った。
「よっしゃ、早速新たな仲間が出来たことだしゲーセン行こうぜ!」邦幸が細い目を更に細めて笑顔を作ると、言った。
「でもあそこは遠いし、荒れた奴ばっかだぞ? まずは慣らしたほうがいいんじゃねえ?」勇樹が言う。
「じゃあ、近くの山は?」義教が呟く。
「山? それだ!」
結局比呂斗が山と決め、六人で山に向かった。
六人で、叢の上で寝転がった。
「へへ…喧嘩に疲れたらまずはここだなあ」
「比呂斗、ジジイみたいだぞ」
「言うなよ大成!」
比呂斗が怒鳴ると、義教が言った。
「まあまあ…三木君が怯えるから…」
「あっ、悪い…。けど、三木…どうだ? 我慢すんのも、よくねえし、俺らと一緒に楽しく生きてみねーか? …まあ、俺らのやってることがいいことってわけじゃねーけど、我慢して生きていくよりいいんじゃねーか?」
「うん…そうだね…」
その日から元太は、我慢をやめた。
まず、相変わらず小学校のときから自分をからかったり、いじめていた奴らと喧嘩になった。
―こいつらになんか、負けない!
気が付くと、そいつらが元太の気迫に押され、引き下がっていた。
そしてそれを見ていた横川に、「よーやったなあ」と言われた。
それからの元太は、口調も、雰囲気も変わった。
楽しく毎日を生きよう、そう考えて比呂斗たちとやってきた。祖父母には見放されたが、別に良かった。
―俺には、アニキや、比呂斗、大成、コンタ、勇樹、義教がいる!
そして3年になると、元太は他の仲間の相談も受けるようになった。
勇樹にも、「好きな奴が出来た」と言われ、元太は他の仲間と一緒に、その相手の富森杏樹(女子12番)と付き合えるよう応援し、見事二人は付き合い始めたのだった。
元太にとって仲間たち、そしてその仲間を作るきっかけをくれた横川将晴は、他の誰よりも大切な人だった。
その横川が、死体となっている。
―こいつらは、アニキを―、殺した! こんなに簡単に! あっさりと!
「てめえらああああ! ぶっ殺してやる!」
元太は吼えた。そして目の前の尾賀野と彬合に向かっていった。
その元太に対して、亜幌と呼ばれた兵士が銃を構えた。
しかし、尾賀野は言った。「彬合。三木君を捕まえてくれ」
「分かった」彬合はそう言うと、元太を捕まえた。
「てめえ! 離せ! ぶっ殺してやる!」
そんな元太に、尾賀野はリモコンのようなものを向けた。
「やれやれ…使いたくなかったんだけどな…」
そう呟いて、尾賀野はスイッチを押した。
ピッ…ピッ…ピッ…。
何やら電子音のようなものが元太の耳に届いた。それは元太が先ほど確認した首輪のようなものから発せられていた。
同時に彬合が元太から離れた。
―なっ!? 何だ? この音は…。
「あー、説明前に使うの嫌だったんだけどなー…、三木君、これね、爆弾のスイッチを入れるリモコンなんだあ」
「そ…それがなんだよ」
「三木君、そして他の皆の首にも付いているこの首輪は、爆弾が入っていて、こうやって電波を送ると…爆発するんだよ」
―何!?
「だから皆離れたほうがいいかもね」
尾賀野がそう言うと、皆狂ったように元太の周辺から離れだした。いや、全員ではなかった。
仲間たちだ。比呂斗たちは元太の近くに、残っていた。
「元太! 元太!」
比呂斗が叫んでいた。
元太は、死ぬ覚悟がもう、できていた。そして比呂斗に、言った。
「比呂斗…大成…コンタ…勇樹…義教…死ぬなよ」
「元太!」
義教が叫んでいる。泣いているようだ。
「義教…泣くなよ…そんなんだから俺より弱くなっちまうんだよ…」
ピッピッピッピッ…
電子音の間隔が短くなっている。
「勇樹…、富森を、守ってやれよ。お前が…好きになった奴なんだからな…」
「ああ、誓う、誓う!」
ピピピピピ…
そろそろ、終わりだな、と元太は何となく分かった。
「皆…生きろ、俺よりもっと…楽しく…生き続けるんだぞ…」
元太は、目を閉じた。
ピ―――――――
―ありがとうな…皆…。
元太は、首元が熱くなるのを感じた。
ボンッ
爆発音と同時に、元太の頭部が吹き飛び、床に転がった。そして首を失った元太の身体は、ゆっくりと前に傾き…崩れ落ちた。
教室に悲鳴が上がった。しかし比呂斗たちは、何も言えずにいた。
男子18番 三木元太 ゲーム退場
<残り41人>