BATTLE ROYALE
最後の聖戦


第73話

「はい、皆さん、こんばんは! 担任の尾賀野です!」
 
富森杏樹(女子12番)は、尾賀野の声に反応して、地図を用意した。
「まず、これまでに死んだクラスメイトの名前を発表します。まず、男子11番、曽野亮君。女子10番、谷川つかささん」
「谷川…さんが…?」
 杏樹は、
谷川つかさ(女子10番)が死んだということが信じられなかった。以前、自分を助けてくれ、自分のことを心配してくれていたつかさの表情が思い出された。
―谷川さんが…。
 だが、放送はまだ続いていた。
「女子13番、中元理沙さん。女子15番、畑槙乃さん。女子4番、河原真澄さん。以上五名。もう特別参加者を抜いたら十人にまで減りました。あと一息、頑張って下さい」
 杏樹は、尾賀野の放送を聞きながら思っていた。
 その通りなのだ。もう、残るクラスメイト(尤も、記憶を失った杏樹は、ほとんどの生徒を知らないのだが)は特別参加者だという
横井翔(男子特別参加者)牧原玲(女子特別参加者)を除くと十人しかいないのだ。
 そしてその中には、自分を
中元理沙(女子13番)から助けてくれた国吉賢太(男子7番)、そして杏樹を探しているという写真の少年、姫野勇樹(男子15番)もいるのだ。
 杏樹は今、勇樹に会いたかった。勇樹に会えば、自分は記憶を取り戻せるような気がしてならなかった。
 放送は、まだ続いていた。
「それじゃ、次は禁止エリアの発表を、彬合先生にしてもらいます」
 そして声が、彬合のそれに変わった。
「それでは、禁止エリアの発表です。まず、1時から、E−5。3時から、G−7。5時から、I−4。以上です。それではまた、次の放送で」
 放送は、終了した。
 すぐに杏樹は、荷物をまとめることにした。
 自分がいる場所は、E−5。あと1時間ほどで禁止エリアになってしまう。だからこそ、すぐに移動しなければならなかった。
 そして杏樹は、南へと歩くことにした。そして歩き出し、E−5からF−5に出た辺りだった。
 杏樹は何かを感じ、近くの茂みに飛び込んだ。すると直後、杏樹がさっきまで立っていた場所が、銃声と共に抉れた。
―誰かが私を…狙ってる!?
 杏樹はそう察して、銃声がした方をそっと見た。そこには、以前
江田恵子(女子3番)が持っていた猟銃を構えた、牧原玲がいた。
 どうやら、玲はまだ、杏樹を探しているらしい。完全に、杏樹の方が不利だった。
 ただでさえまともな武器も持っていないのに、支給武器のアルコールランプは、中元理沙に追われたときに使ってしまっていて、丸腰だった。
―どうしよう…!
 杏樹はそこで思考を止めざるをえなかった。玲が、杏樹のいる周辺の茂みに向かって、猟銃の散弾を撃ち込み、その散弾の一部が、杏樹の左肩を貫いた。
「痛っ…」
 杏樹が発した、僅かな声に玲は気付き、杏樹が隠れているところに照準を合わせた。
―ああ…私…死んじゃうのかな…?
 杏樹がそう思った次の瞬間、連続した銃声と共に、玲の身体が揺れた。どうやら何者かが、玲の背中を撃ったらしい。
 そして玲は、その連続した銃声のした方向に向かって、銃口を構えた。
 その瞬間、杏樹は駆け出した。
―ありがとう…誰だか知らないけど…! 私は死にたくない…私を知っている、姫野君に会って、記憶を取り戻すまで…!

 その頃、杏樹を救った連続した銃声の持ち主―そう、杏樹が探している姫野勇樹は、牧原玲の気を引くだけ引いて、その場から逃げ出していた。
―あの特別参加者…あそこまで冷酷に人を…!
「杏樹…絶対に探し出してみせるぞ」
 しかし杏樹も、勇樹も、お互い姿こそ見せなかったが、近くにいたことには気付いていなかった。

                           <残り10+2人>


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