BATTLE
ROYALE
〜 最後の聖戦 〜
第75話
―もう、残りは10人…いや、特別参加者も入れたら12人か…。あと少しだ…。
吉田晋平(男子20番)は、残った生徒のことを頭に浮かべていた。
―しかし…教祖様は一体、どうしてしまったと言うんだ? 向井も謀反を起こしてしまったし…。
晋平は、昼間に出会った教祖様―白鳥浩介(男子9番)の態度が気になっていた。
最初は確か、晋平と板橋浩美(女子2番)、坂之下由美(女子7番)、そして謀反を起こしたらしい(先ほど浩介から連絡が入っている)向井遥(女子18番)がクラスメイトを殺して回り(その中でも晋平と浩美が特に積極的に動くことになっていた)、教祖こと白鳥浩介を優勝させる。
これが最初のプランだった。
だが浩介は、浩美を殺した後、何故か自分から動き始め、国吉賢太(男子7番)と銃撃戦までしていたのだ。
そのとき、浩介が言ったことがあった。
―私は自分でも動くべきだと思ったのだ。
―一体何故そんなことを教祖様が仰られたのか、俺にはちっとも分からない…。
―ひょっとして教祖様は、我々をもはや必要としなくなったのだろうか!? いや、だがまだクラスメイトは残っている。ならば我々はまだ動く必要があるのではないのか?
晋平は考えれば考えるほど、深みにはまっていくような気がしてならなかった。
―どうすればいいんだ、これから…。
少し前に立川大成(男子12番)を襲って、殺せはしなかったが、勝ちを収めた。しかしそれでも、晋平は浩介の真意が汲み取れず、気にし続けていた。
だが今、やっと悟った気がした。
―そうだ。教祖様が俺を必要としなくなったとしても、俺は教祖様に殉じるのみ!
そう考えて晋平は、なおも戦うという決意を固めた。
そして晋平は、移動を始めた。現在いる場所はエリアで言うとB−2。すぐ隣のB−1にはホテルだったらしい廃墟が見える。
そこで晋平は見たのだ。そのB−1にある廃墟の入り口辺りに一人の男子生徒、眼鏡をかけている男子生徒の姿を。
現在生き残っている生徒の中で眼鏡をかけた男子生徒は和歌山啓一(男子21番)しかいない。そして外にいるのを見ると、中にまだ誰かがいるはずだ。つまり啓一は見張りに出ているのだろうと、晋平は思った。
中にいるのはおそらく、宇崎義彦(男子2番)あたりだろう(国吉賢太(男子7番)は浩介と銃撃戦をしていたから除く必要があった)。
晋平は、必死で啓一たちの装備を推理した。
―普通なら見張りは一番強力な武器を持つはずだが、和歌山は…金属バットだな、あれは―それしか持ってないようだから、あれよりまともな武器は無いと見ていい。こっちはサバイバルナイフと槍。この槍のリーチからして、あの金属バットの間合いに入ることなく倒すことも可能だろうな。
―よし。
晋平は、そう思って行動を開始しようとした…その時、何者かの気配を感じ、振り返った。
そこには、いつもどおりの表情の、国吉賢太がいた。
「国吉…」
「義彦たちのところへ行く気みたいだね? なら…容赦しないよ」
賢太はそう言うと同時に、晋平に拳銃、ガレーシーの銃口を向けた。だが晋平は、そのほんの僅かな間に、賢太の懐に突っ込んで、サバイバルナイフで賢太の腹部を突き刺した。
「生憎だけど、俺はここで負けるつもりは無いんだ。容赦なくやるのはこっちも同じ。銃を持ってないからって甘く見るなよ?」
賢太は腹部を押さえ、俯いていたが、すぐにガレーシーの銃口を持ち上げた。だが、その動きは緩慢だった。
「遅い!」
晋平はすぐに槍を突き出した…その瞬間、右腕が激しく痛んだ。
よく見ると、右腕から、銀色の矢が生えている。
「なっ、何?」
前を見ると、さっきまで俯いていた賢太が左手に、世良涼香(女子9番)のものだったクロスボウを持って、それを晋平に向けていた。
―そんな―まさか―!
晋平は気がついた。賢太の緩慢な動きは、フェイクだった。晋平の一瞬の油断を突いて、クロスボウの矢を晋平に撃ち込んだのだ。
もはや、晋平の方が完全に不利だった。
「俺は…俺は負けない!」
それでも晋平は、なおも戦うことを選んだ。全ては、教祖である浩介のためだった。
だが、賢太が躊躇無く放った一発の銃弾が、晋平の胸部を撃ち抜き、晋平は仰向けに崩れ落ちた。
―俺は…負けるのか…?
―なら、一つだけ祈らせてくれ…。
―教祖様の、優勝と…この、国、の、好転、を…。
晋平の意識は、そこで途絶えた。
賢太は晋平の持っていたサバイバルナイフと槍には目もくれずに、歩き出した。目指すは、義彦のいるであろう、B−1であった。
男子20番 吉田晋平 ゲーム退場
<残り8+2人>