BATTLE ROYALE
誓いの空


第13話

 鈴木政仁(男子5番)大谷俊希(2番)に殺されてから、もう一時間も経った頃、C−2のエリアにある農家に、鶴見勇一郎(6番)能代直樹(7番)東野博俊(8番)はやってきた。
 農家の門には、「貞川」という表札があった。
「…貞川さんの家か」
 直樹は表札を見てぼそっと呟いた。
「貞川さんを知ってるのか?」
「ああ、ここの親父さんにはいろいろ世話になったんだ。でも、自分のことは何も話してくれなくってな…。あんまり人付き合いする人じゃなかったんだが…」
「…そうか、まあとにかく、入ろう」
 勇一郎がそう言った時、博俊が言った。
「ねえ、見張りは必要なんじゃない?」
「そうだな…俺が行こう」直樹は言った。
「良いのか?」
 勇一郎が尋ねてくる。直樹は笑って言った。
「勇一郎は足が悪いんだ、誰か危険な奴が来たとき、大変だろ」
「…ああ、分かった」
 勇一郎は言った。博俊も頷いた。
「じゃあ、中入っててくれ。俺が外にいるから」
 そして直樹を残した二人は、農家の中に入っていった。

「…ずいぶん、殺風景な家だな」
 勇一郎は、貞川家の台所で一人呟いた。確かに、この家には必要最低限のもの以外は何も置かれていないようで、何一つ調度品のようなものはなかったし、インテリアに拘っているようでもなかった。
 さらに不可解なのは、家族で住んでいたことを示す痕跡が何一つ見つからないのだ。
 確か島民に聞いた話では、貞川家は主人の永次(えいじ)とその妻、娘の三人家族だったはずだ。だが、確かに台所のテーブルには椅子が三つあるが、殆ど使われた痕跡がない。しかも彼は農業をしていると島の役場に届けていたらしいが、彼が農作業をしているところを誰も見ていないという。
 不可解だった。一体、貞川永次は全てを偽ってまで、ここで何をしていたのだろうか?
―貞川の親父さん…何をしていたんだ? ここで、一人で暮らして、一体何を?
 勇一郎は考え込み始めた。その時、隣の部屋を探索していた博俊がやってきた。
「勇一郎、変なものを見つけたんだ、来てくれ」
「何だ?」
 博俊が探索していたのは貞川永次の書斎だった。その中にあった永次の机の上に、妙な紙切れが載っていた。
「これだよ、勇一郎」
「…何かの図面だな、これは…」
 その図面の中には、こう記してあった。

『インパール5号』

「…インパール5号? 何だそれ?」
「さあ?」
 とにかく、その図面が気になった勇一郎はじっくりとその図面を眺めた。そして、その図面に描かれた輪っか状の物体を見て、思った。
―何処かで見たような気がするな、これ…。
 そしてふと、博俊の首を見た。その首には相変わらず、銀色に光る首輪が嵌められている。
「―!」
 そして遂に勇一郎は図面の意味に気付いた。
「どうした、勇一郎?」
「…貞川の親父さん、何でこんなもん持ってたんだよ、おい…」
「え?」
 不思議がる博俊に、勇一郎は全てを教えることにした。
「いいか、落ち着いて聞けよ? これは、今俺たちが嵌められてるこの首輪の図面なんだ」
「ええっ!?」
「落ち着け!とにかく、これをよく調べればこの首輪を外して脱出することができるかもしれない」
「ほ、本当に?」
「ああ。ただ、俺は機械には詳しくない。雑学なら自信はあるんだけどな…。博俊、お前はどうだ? あと能代は?」
 博俊は少し黙った後、申し訳無さそうに言った。
「駄目だ、僕も能代も機械はあまり…」
「…そうか。そうなると…そうだ、ノリを探せばいいんだ」
「えっ? ミヤさんを? 何で?」
「ノリは機械にかなり詳しかった。ひょっとしたらこの図面を見て、首輪の解除方法が分かるかもしれない。他に可能性のある奴はいないし、ノリに賭けるしか無さそうだ」
「なるほど…ミヤさんか…」
 
宮崎紀久(11番)―学年トップの成績を誇り(それどころか県内随一の成績だが)、機械には滅法強いことで有名だった。事実、家の電化製品もその気になれば軽い故障程度なら直せるという。
 その紀久なら、首輪の解除も可能かもしれない―いや、彼にやってもらうしかない、ということだ。
「ようし、なら今から能代を呼んで、ミヤさんを探しに行こうよ」
「そうだな、よし、行くか」
 そう言って勇一郎が書斎を出ようとし、それに博俊も続こうとした、まさにその時。
 書斎の窓に、人影が映りこんだ。
 それに気付き、勇一郎は、振り返った。

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