BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
第19話
「もう…五人も死んだのか…」
佐野雄一(4番)は一人、呟いた。そこは、学校がよく見える山の中―エリアで言えばD−5辺りだった。
探している石城竜弘(1番)を見つけるのは、容易ではなかった。どうやっても、見つけられなかった(少し前に、このエリアの近くを竜弘が通りかかったのだが、まだ雄一はここまで来ていなかったので探知機に引っ掛からなかった)。
右手に持った日本刀を見つめる。
―このままいったら、俺もこれを使わざるを得なくなるのだろうか…。
ふとそんな思いが頭を過ぎる。
だが、そんなことだけはしたくない。しかし、このゲームは今のところ順調に進んでしまっている。目の前で死んだ鈴木政仁(5番)だけでなく、鶴見勇一郎(6番)などといった頼りになりそうなクラスメイトも既にこの世の者ではない。
しかも、さっきも銃声が響いた。それが果たして政仁を殺した大谷俊希(2番)のものだったかどうかは分からない。
他にもこのゲームに乗った者がいるかもしれない。でも他の全員が乗ろうと、雄一だけは絶対にそんな真似はしないと誓っていた。
そして、竜弘以外にも会いたい人物が…いた。
彼女と初めて話したのは、去年のことだった。
その時はまだ雄一と竜弘のサッカー部にも部員がちゃんといて、ちゃんと試合にも出られた。
ある真夏の暑い日に、殿場中サッカー部は本土のチームと練習試合を殿場島でやることになった。
試合は前半に雄一のアシストを受けた先輩のエースストライカーがミドルシュートを決めて先制したが、その後コーナーキックから頭で合わせられて同点にされた。
そのまま試合は続き、延長戦となった。
その時、雄一たちはコーナーキックを手に入れた。そして蹴るのは…雄一だった。
緊張した。何も耳に入らないくらいに。竜弘が反対側のゴールから何か叫んでいるようだったが、それすらも聞こえてこない。
―駄目だ…コーナーキックを上手く打てる自信がない…!
その時だった。
「佐野君…落ち着いて。肩の力を抜いて」
そう声をかけてくれたのは、その日、試合を見に来ていた竜弘の幼馴染―横溝朋美(15番)だった。
「横溝…?」
「大丈夫だよ…佐野君が上手いのは私も知ってる。テニスコートから、サッカー部の練習が見えてたから…だから、大丈夫だよ、安心して」
そう言われた途端、何か安心できた。上手く打てそうな気がした。
そして…コーナーキックを…打った。
放たれた球は鮮やかな軌道を描き、ゴールネットに突き刺さった。練習でもここまで鮮やかに、しかもゴールしてしまったのは初めてだった。
―横溝の…おかげだ…。
それからというものの、雄一は朋美のことを意識するようになった。それが朋美への好意だということにはすぐに気が付いた。
しかし雄一は気付いた。いつも朋美は竜弘のことを見ているということに(竜弘はそういうのに疎く、全く気付いていなかった)。だがそれでも良かったのだ。自分は朋美を見ているだけ。それでも良かった。竜弘は雄一にとって大事な友人だった。その竜弘なら別に良いとまで思っていた。
だがこの状況で雄一は、無性に朋美のことが心配になってきた。竜弘のことも心配ではあったが…。
―横溝を…守ってやりたい。そして…振られても良いから、ただ…「好きだ」と伝えるだけ。ただ…それだけでいいんだ。それで満足だ。
―そうだ…竜弘だけじゃない…横溝も探そう。横溝は今、どうしているんだろうか? 危険な目に遭っていないだろうか? それとも既に誰かに…。
―いや、そんなことあるはずがない! 横溝は生きている。そうだ…横溝を探すんだ! 絶対に。
雄一は完全に決意を固めた。
―横溝…竜弘…絶対に探し出してやる!
そう誓って雄一は駆け出した。
朋美が既に、殺人者としてその手を血に染めていることも知らずに。
<残り10人>