BATTLE
ROYALE
〜 誓いの空 〜
第2話
―…一体、何なんだ? 急に、眠くなったけど…。
石城竜弘(1番)は、その意識を覚醒させた。
竜弘のいたところは、いつもと全く変わらない3年1組の教室だった。だが、その中は暗闇に覆われている。窓は何かで覆われているようで(それが鉄板だと、竜弘はすぐに気付いた)、何も見えない。周りにもクラスメイトたちがいるように見えたが、それもはっきりとは見えない。
―一体何なんだ? そうだ、腕時計…!
竜弘はすぐに、自らの腕時計の文字盤を見た。暗闇の中、蛍光塗料の使われた文字盤は、午後11時を示していた。
「何だと!?」
竜弘は椅子をがたんと鳴らして立ち上がった。竜弘の声と椅子の音で、何人かが眼を覚ましたようだったが、竜弘はそんなことは気にしていなかった。
―午後11時? さっきまで朝の8時くらいだったはずじゃないのか? じゃあ俺は、12時間以上も寝ていたって言うのか?
「何だよ、人がせっかく寝てるってのに…うるさいな…」
そんな声が背後から聞こえ、竜弘は振り返った。そして竜弘は驚愕した。暗闇に慣れた竜弘の眼が捉えた人物、それはここにいるはずのないクラスメイト、いつものように寝坊していたはずの鈴木政仁(5番)だったのだから。
「マッシー、何でお前がここにいるんだよ!?」
「え…竜弘? 何でお前がいるんだ?」
政仁も竜弘と殆ど同じ疑問を口にした。
「お前寝坊してたんじゃないのか?」
「いや、確かに俺は家で寝てたんだ…なのに何でここに…って、俺制服まで着てるぞ? 一体どうなってんだ?」
竜弘は教室中を見渡した。やがて、他の生徒たちも完全に眼を覚ましたようだった。
「おう、竜弘…なあ、俺たち一体どうしたっていうんだ?」
佐野雄一(4番)が竜弘に向かって尋ねた。
「いや、俺も分からないんだ…」
竜弘が、雄一にそう返答すると、雄一は真剣に考え込み始めた。
「ここはどう見たって1組だし…あれ? 竜弘、お前、首に何つけてんだ?」
雄一のその言葉に反応して、竜弘は自分の首を触ってみた。その首には冷たく、堅い金属的な感触があった。
そして同時に、竜弘は雄一と政仁の首にも何か、銀色のものがついているのが見えた。
「雄一、マッシー…お前らの首、何かついてるぞ?」
「えっ?」
二人は揃ってそう言うとその首に触れ、その感触に気がついたのか、困惑した表情を浮かべた。
竜弘は、二人の首についたそれをもう一度よく見てみた。そして気付いた。首に巻かれているのは、銀色に光る首輪だった。その銀色は、光源の無いこの教室内では非常に目立っていた。
「嫌な予感がするな…」
近くで竜弘たちのやり取りを見ていた宮崎紀久(11番)が呟いた。
「何だよ、嫌な予感ってのは」
竜弘は紀久に尋ねた。どうやら紀久は、現在の状況が何であるかに気付き始めたらしい。
「ひょっとして、俺たちは…」
紀久がそう言いかけた時だった。
突然、ドアが開いた。そして同時に部屋に電気が点き、軍服らしきものを着た年配の男と、同じく軍服にヘルメットを被り、その手に何かを持った者たちが入ってきたのだ。
何が何だか分からない竜弘たちを尻目に、教卓にやってきた年配の男は、不思議そうに男たちを見ている生徒たちに向かって、言った。
「まあまあ、皆落ち着けぇ。早く座れ。つまり…」
「先生、着席です」
横にいた男がガラガラした声で言った。
「そう、着席ね、着席」
そう言われて、状況を把握できないままに、竜弘たちは自分の座席に座った。
「えー、皆さん、よく眠れたかぁ?? シャキッと頼むよ、シャキッと」
竜弘はあたりを見回した。
この状況を生徒の中で把握できている者はどうやら、紀久ぐらいなのだと分かった。
<残り17人>